13本目
本日から遠出をするとあって、いつもよりも慌ただしい朝を迎えていた。
「アガトー!俺の荷物も収納しておいてくれ。それからちゃんと食糧はしまったか」
早朝だというのに父からの指示がウザイ。
普段の俺の朝はたくさんの美人メイドを侍らせて、ティーカップ片手に紅茶の香りを楽しみつつ、優雅に過ごすのが日課なのに・・・えっ?そもそもお前の家にメイドなんていないだろって?
ちょっと、何言ってるのかわからない。
妄想も準備も終わり、父を連れて教会へ天使達を回収しに向かう。
その途中、申し訳なさそうに父が話しかけてきた。
「そう言えば、転職させてやれなくて悪いな」
どうやら教会を見て、俺が転職したがっていた事を思い出したみたいだ。
「別に良いよ」
父親の気持ちを組んで健気に気にしないでと言わんばかりに返事する俺。なんて優しい息子なんだ。
「アガトが15歳になる頃にはなんとかしてやるからそれまでは我慢してくれないか」
なんかやたらと真剣に思い詰めているようなのでそろそろネタバラしでもしようかな。
「その事なんだけど、もう転職しまくってるから別に気にしなくて良いよ」
「・・・ん?」
足を止めて俺が言ったことでも反芻しているのだろう。動きが止まり、そして困惑と共に父の時間が動き出す。
「すまん。どういうことなんだ?」
こういうのは説明するよりも実際にやって見せた方が早いので天使達の回収は後にして父を教会の裏側に連れて行く。
俺は無断で転職出来る方法があるといい、教会の壁に張り付く。
「まず、出来る限り壁にくっつく」
そんな俺を見てコイツ、朝食に変な物でも食べたのかと考えていそうな父に真似するようにいう。
「こ、こうか?」
「そうそう。んで転職したいって願う」
「・・・・っ!!」
どうやら俺以外でもバグ技は問題なく使えるようだ。
驚きの表情を見せた父はすぐに嫌らしい笑みを浮かべると「くっくっく」と笑い出した。
やべぇ、朝食に変な物でも食べたんじゃなかろうか。
「アガト、父さんは今、上級職の【弓聖】になったぞ」
つまり、中級職業をカンストさせていて条件を満たしていたということか。
「それにしてもこんな方法を知っていて今まで黙っていたなんてお主も悪よのう」
これは転職出来て、妙なテンションになっちゃったパターンだな。
「そう言うお主も通常ならお布施として金貨50枚は掛かるというのにしれっと転職するあたり、なかなかの悪よのう。ヒッヒッヒ」
「ふははは!」
父の茶番に付き合っていると変な笑い声を聞き付けた神父様が姿を現す。
「ゴホンッ!」
まるでしかりつけるような咳払いをした神父が不審な目で俺達を見ている。
「神聖なる教会の裏側でいったい何を騒いでいるのですか?」
一瞬、バレたかと思いヒヤッとしたがどうやら話の内容までは聞かれていなかったようで安心する。
「神父さん、こ、これはですね。うちの息子に狩りで役に立つようにと隠れ方を教えていたんですよ」
「他でやりなさい!」
父の言い訳は一蹴されたので教会内に安置されている天使達を回収して、早々に出掛けることにした。




