11本目
少しゴブリンの集落での話とその後の話をしようか。
集落に辿り着いた俺達は生き残りのゴブリンがいないか見回り、捕らわれていた女性達を発見した。しかし、残念ながら生存している女性はいなかった。
女性達が受けた仕打ちを考えれば、その方が良かったのかどうか俺には判断がつかない。
そして、そんな女性達を野晒しにしておく訳にもいかないので『無限収納』に納めて村への帰還を果たした。
村に帰ってからも大変だった。
無事に帰ってきた俺達に喜び抱き付く母さん。事情を知らず、アホな顔をしている弟。
亡くなった女性達の家族を捜す為、父は休む暇もなく近隣の村へと出かけて行き、現在は教会に遺体が安置されている。
そして、一部の村人達にしかゴブリンの事は伝えられず、今日もこの村は平穏だ。
俺は1日休みを取り、父の言い付け通り、弟の弓の練習を見ていたが下手過ぎたので的を外すたびに罰として髪を抜いていたら泣き出してしまった。
弟の面倒を見るのも楽じゃないぜ。
後は例の違法な方法による転職で新しい職業につくと2日目には森に出掛けていた。
ちなみに新しく就いた職業は『斥候見習い』だ。
そんな訳で俺は今、森に来ている。
今の森はなんだか落ち着いているように感じる。まあ、あれだけゴブリン達を射殺すれば、森が静かになるのは当たり前か。
そんなことを考えながら解体したゴブリンの廃棄場所を探していると1匹の森狼を見つけた。
仕留める為に弓を構えて狙いを定める。しかし、違和感に気付き、弓を下ろして観察する。
森に棲むモンスターや動物のことは父から教わっておりだいたいのことは知っている。
通常、森狼は群れで行動し、狩りを行う。なのに俺の視界にいる森狼は1匹のみ。しかも、痩せ細ってガリガリだ。
おそらく、群れに馴染めない1匹狼という奴なのかリーダー争いに敗れて群れからつまみ弾かれた個体なのではないだろうか。
違和感の正体に気付いた俺は仕留めるのをやめて今にも倒れそうな森狼に廃棄するゴブリンの肉を目の前に放り投げる。
憔悴していたのであろう森狼は突然の肉に驚き、俺に気付くと睨みつけてくる。
「ウゥ~」と歯茎を見せて低い鳴き声でなおも俺を威嚇してくるのでその場を離れた。こうすれば、警戒心を解いて肉に口をつけるだろう。
俺からの施しを受けて生きるか、拒んで勝手に死ぬかは森狼の自由だ。後の事は俺の知ったことではないな。
ゴブリンの骨を歩きながらバラまき、ゴブリンの皮も一緒に捨てて森の中を巡った。
森の中に散らばる骨と皮の謎。俺が名探偵だったら間違いなく事件だと思ってこの謎に挑んだろうな。たぶん・・・気分が乗れば・・・きっと・・・。
廃棄の為に長い時間、森の中を歩いたが流石にゴブリン大量虐殺の後だけあって、全くゴブリンに遭遇しない。
そんな非戦闘的な1日はあっという間に過ぎていった。
◇◇
次の日もゴブリンの残骸を廃棄する為、森に来ている。
森に入り、少し歩くと索敵に反応があったので獲物かと思い近付いてみると昨日見掛けた森狼が大木の根元で丸まっていた。
俺に気付くとまだ痩せた躯を起こして威嚇してくる。
今にも倒れそうな姿は相変わらずでそんな状態で威嚇されても怖くないのでまたゴブリンの肉を目の前に放り投げてやる。今日は昨日よりも多めにしておく。邪魔な肉はさっさと片付けるに限る。
威嚇する森狼を後に今日も廃棄物の処理に精を出す。
この日は森も落ち着いてきたのかちらほらと獲物の姿が確認できた。モンスターにいたっては少数ではあるが懲りもせずにゴブリンが湧いていたので目についた奴は全部片付けておいた。




