10本目
ゴブリンの殲滅を終えた俺はひたすらに死体を回収していた。
そもそもの始まりは父の発言にある。
殲滅も終わり、後はゴブリン達の集落を漁ってから帰るだけだと思っていたのに「こんなにも死体が多いとゾンビ化するな・・・」なんて言うもんだから仕方なく、俺が回収しているという訳だ。
これが昨日、仕留めた20匹くらいならばゾンビになる前に森に棲むモンスターや肉食動物が食べてくれるらしいのだが、流石にこの数になると食べきれずにこんにちはゾンビらしい。
当初はこの数のゴブリンがゾンビになれば、また経験値が稼げるなんて考えがよぎったがゾンビを倒すのは難儀なので大人しく諦めた。
「父さん、ゾンビ化を防ぐにはどうすれば良いの?」
「そうだな。ゾンビ化しても這い出てこれないくらい地中深くに埋めるのがまず1つ」
「それは却下だな」
500近い死体を埋める深い穴ってどんなんだよ。
「2つ目は死体を火葬して灰にする」
「それ採用!」
それならば、火魔法のレベルが上げられる。
「お前はバカか?そんなをことすれば、この数だぞ。森林火災になりかねない。そしたら森で生計を立てているうちは生活出来なくなるぞ」
「・・・」
その時は父に出稼ぎに行ってもらおう。
「3つ目はゾンビ化しても動き出せないように死体を解体する。まあ、村の人にも手伝ってもらったとしてこれが現実的だな」
「・・・死体損壊とかなんかサイコパスみたいでやだ」
こんなやりとりがあったのだがでは何故に回収なのかと言うと便利なバグ技を思い出したからだ。
それにしても俺がバグ技を思い出さなければ、とんでもない無駄な労働を強いやれるところだった。危ない危ない。
「それにしてもアガトのアイテムボックスはとんでもない容量だな・・・」
「天才だからね」
死体回収から約1時間、父の問いかけにすら真面目に返すのが面倒になった頃、やっと終わりが見えてきた。
「それにしてもどうやって処理するつもりだ?」
ここでバグ技を使うと言ったところで理解してもらえないだろうし、適当にはぐらかしておくか。
「これからほぼ毎日、少しずつ死体を捨てに来て森に処理してもらうよ」
「そうか、悪いな・・・」
話しているうちに回収がようやく終わり、次は集落へと向かう。
父を先頭に歩きながら俺はずっと気になっていたステータスを確認する。
名前:アガト
属性:《無》
職業:上村人『Lv:30/30』
SP:30
STR:80
VIT:80
INT:80
MND:80
DEX:80
AGI:80
LUK:80
《スキル》
1.『弓術Lv:6/10』
2.『索敵Lv:4/10』
3.『隠密Lv:4/10』
4.『解体Lv:3/10』
5.『体術Lv:3/10』
6.『回復Lv:3/10』
7.『無魔法Lv:5/10』
8.『集中Lv:4/10』
9.『健康体Lv:5/10』
10.『無限収納』
『上村人』がカンストしている。後はスキルレベルもそこそこ上がっているな。
確認も終え、集落までまだ少しあるので今のうちにバグ技を使っておこう。スキル設定画面に切り替えてスキルの位置をいじる。
《スキル》
1.『回復Lv:3/10』
2.―
3.『無魔法Lv:5/10』
4.『解体Lv:3/10』
5.―
6.―
7.―
8.―
9.―
10.『無限収納』
このバグ技を使うにあたり必要なことはまず1番上に回復スキルをセットし、3番目には無魔法、4番目に解体、10番目に無限収納をセットする。すると無限収納に入っているモンスターが勝手に解体されるというものだ。
上手く成功したのか無限収納の中身を確認する。
・ゴブリンの皮×523
・ゴブリンの肉×524
・ゴブリンの骨×524
・ゴブリンジェネラルの皮×1
どうやらこのバグ技も上手くいったようだ。
それにしても524匹もいたのかと思いながらスキルを元に戻していく。ちなみにこのバグ技でも解体スキルのレベルは上がり、3から6に上がっていた。
「アガト、もうそろそろ集落に着くぞ」
曖昧な返事をしてステータスを閉じると父の後についていくのであった。




