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壊国の魔術師  作者: 未唯 啓
プロローグ
1/8

旅の始まり

 どこの世界でも争いは必ず起きて数多の命が奪われていく。

 そこに魔法が介入しようが化学兵器が介入しようがそう言った優れた物は必ず後に莫大な命を奪い大きな傷跡を残していく。

 例え誰かが争いを止めようと、そんなものは時代の流れに紙屑のように流される。


 ただ、それは()()()な力を個人が持っていないからである。


 正しいと言うのは多くが是とした時成立するのだろう。ならば多くの人、そう皆が是とさせる事が出来れば方法がどうであろうと個人はそれを反映させる事が出来る。

 もし、絶対的な力を個人が持って居たならば止めるべき争いを止める事が出来たのかもしれない。

 そして、それは個人が普通では有り得ない力。

 それこそ〝魔術〟などと言った物が現実にあったのならば……


 世の争いは絶えない――――



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 お金です。お金が無いです。嘘でも冗談でもなくお金が無いのです。

 あと少しで無一文になるぐらい……

 あぁ……お金が欲しい、切実に。

 このままでは飢え死にしてしまう!

 まずは宿屋と思ってたけど、これは早急にお金を手に入れなければ……

 そう思い服に付いている袋から小さな地図を取り出す。

 そこにはこの星で最も大きいとされる大陸、ドラグ大陸とその中の国家群が描かれている。


「て、違う違う。これじゃない。大陸図じゃなくて街の地図地図……」


 私は常にこの世界の大半の地図を持っている。

 そのお陰かこの世界で地図を使えば分からない所はない。

 ただ、そのぶん地図を探すのが大変だ。


「部類分けはしてるんだがなぁ……ドラグレシア大陸西側ライデン王国の王都より少し西側、西側……」


 こうやって改めて地図で探すと思ったよりも時間が掛かる。今私がいるライデン王国の地図はすぐ見つかるのにこの街の地図だけ探すとなるとこれだ。


「ああ、やっと見つけた。領地ゼルンの街の地図であってるな。えーと、ギルドは……ここか。」


 意外と遠い……

 出来れば宿屋に行く途中に有ればよかったんだけど、まぁ仕方ないね。


 しばらく、歩いていると道を歩く人達が一般の平民から商人や武装した人達に変わり始めた。ギルドは元々は何処かの国の大商人が効率を良くするために作りだしたもので殆どの人達はここで森の薬草やら小動物やらで小銭稼ぎに利用している。

 また、それを本職にする物好きも存在する。

 だけど、やはりギルドに一番多くやって来るのは商人や冒険者だね。


 冒険者と言うのはギルドを作った大商人がそう呼んでいたからそう呼ばれてるけど、やってる事は狩人とか護衛兵とかと同じで違う所は商人との結び付きが強いぐらいの違いしかない。

 ただ、この仕事に憧れる人はとても多い。

 過去に冒険者で一国の英雄にまで登り詰めた人がいたからだ。

 正直に言うと何が良いのかさっぱり分からないけど。


 そんなこと言いながらも一応私、冒険者なんですけどね?

 いや、違うんですよ?

 お金を稼ぐという点で見れば最高なんですよ?

 私みたいな無一文間近の貧乏人には!

 私は力にだけは自信があるのです。


 そんなどうでもいい事を考えながら進んでいると黒い屋根をした焦げ茶の建物が見えてくる。

 そこには商人や冒険者の姿が溢れかえっている。


「あそこがギルドか……」


 私が見たことあるギルドのそれより大きいかな。

 金の匂いがプンプンするぜ。

 たくさんのお金が私を呼んでいる!


 ギルドの中に入ると受付のカウンターと上に続く階段が目に入った。

 受付の横にはは待合場所のような所があって子供達の騒ぎ声や冒険者達の話し声がよく聞こえてくる。

 何とも平和な光景に自然と口元が緩む。


「よし、待っていろよ私の財産!」



 受付の近くに行くと一般用と冒険者用で分けられていた。

 勿論私は冒険者なので冒険者用に並びます。

 当たり前でしょう?

 こんな子供の姿してるけどしっかりと一応大人なんだから。

 大人なんですよ、大人……


「おい、ガキはそっちじゃねぇあっちだ」

「私はガキではない」


 冒険者用の列で二三十才程のオジさんに邪魔だと言われる私。

 しかも、ガキ扱いですよ。マジで何を言ってるんでしょう?

 驚き過ぎて、つい昔の口調で尊大に返してしまった。


「ハッ、どう見てもガキじゃぇか。さっさとどっか行っちまえ」

「だからガキではない。その証拠に冒険者として登録した証明書もある。」


 そう言って私は服の中に隠してある冒険者である事を証明する時によく使われる冒険者カードを取り出しオジさんに見せる。


「なっ!」


 それを見て唖然とするオジさん。

 どうだ見たか!私は冒険者なんだ!と得意げになる私。

 と、そこでオジさんは更にカードを凝視して、苦々しげに呟く。


「……やっぱガキじゃねぇか」

「……っ!私はガキではないっ!」


 冒険者カードには冒険者である事以外に年齢も記入される。

 勿論、私の冒険者カードも例外ではない。

 ああっ!もっと年齢を高く偽っていれば!

 私は子供でないのです!

 本当ですよ、本当ですからね?


「と、とにかく私は冒険者であることに違いはない筈だ。もういいだろ」

「まぁ、いいぜ」


 取り敢えず問題は無いようなので順番が来ていた受付急ぐ。

 というか早くここから離れたい。周りの注目が集まってとてもではないがガキだとは思われたとは考えたくはない。



 受付に着くと優しそうな受付のお姉さんに子供を見るような優しい笑顔で出迎えられました。

 何故でしょう?無性に悔しくなってきました。


「こちらは冒険者専用受付となっております。問題はございませんか?」

「ない。買い取りを頼む。」

「かしこまりました、ではカードをお見せ下さい」


 このお姉さん、絶対さっきの光景みてました。

 でないとこんなに優しげな表情で子供相手に冒険者と言われて信じる筈がない。

 とても悔しいです。

 今も変わらず優しげに微笑んだ(子供を見守るような)笑顔を私に向けています。


「カードの確認が終わりました。お名前を確認させて頂きます。レナ様で間違いないでしょうか?」


 三度(みたび)繰り返します。

 悔しいです。


「ああ、間違いない」




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