過去への帰還
「おい、痛えっつーの、離せ!
聞いてんのか!!おい!」
岡島泰介は、引きずられていた。
わけのわからん"自殺審判官"とやらが目の前に現れてから軽く1時間経つ、
あの後気がついたのだが俺はなぜか寝巻きのまんま。
今はだしで歩いているが砂利道でも痛みを感じない。
「いや、死んでるのと同義のあなたが痛みなんか感じるわけないでしょw」
相変わらず腹立つな、なんだよその「w」は。
人を小馬鹿にする技術は天下一品の"ベタ髪黒スーツ野郎野口"に引きずられながら、俺が向かった先。
ー・・・ここは
「あなたの居場所ですよ。何をキョトンとしてるんですか。」
"岡島家墓地"
目にして改めて、薄れていた自分の死への認識を深くする。
時差を持って襲ってくる、死への後悔、罪悪感。
俺は、あの日死んだんだ。それも自らの手でその生に終止符を打ったのだ。
「なーんか辛気くさい顔してますね。死ぬってのはそういうこと。その一瞬の感情の高ぶりで命を絶つバカヤロウ達がたくさんいるんだよ。ま、そのために僕ら自殺審判官がいるんだけどね。あ、ちなみに他人事じゃないからしっかり受け止めてね岡島クン。」
ー・・・言われなくても、そんなことはわかっている。
「・・・っせーな。で、俺を俺の墓に連れてきて何をすりゃいいわ…!?」
後頭部から地面に叩きつけられ、地面に頭を擦り付けられる。
「ってぇーーな!!!何すんだテメェ!」
「死に敬意を表さない者は罰するのが私の仕事でもあるのでね。まずここは貴様の墓ってだけじゃねぇんだよ。お前を作り、育てた先祖達が眠る場所だ。
お前みたいなとんでもねぇ勘違いクソバカ野郎が同じ土地に眠るなんてよ、
寝心地悪りぃに決まってんだろ。
ちゃんと頭下げてお願いしやがれ。」
「るせぇな、んなもんこっちだってお断りだぜ!
なんで俺が頭下げてまでこの墓で寝なきゃ行けねぇんだよ!
その辺でかまわねぇよ!」
忘れもしねぇ。絶対に。
・・・ーあんたを産んで後悔しなかったことはないわ。うんざりよ。
毎日のように浴びたあの台詞を吐いたやつと、同じ墓で寝るために頭を下げろって?
ふざけんなよ。
「第一にな、俺は産まれたことを否定されてんだよ!!テメェみたいに何にもしらねぇ部外者がいちいち口挟んでんじゃねぇよ!」
忘れねぇぞ。
俺は絶対、忘れねぇからな。