氷の中の野ウサギ姫①
空気がくすんだ色合いをおびてきた。
「一雨きそうですね、また雨が追いかけてくる」と秘書が言う。
太った秘書は、たっぷりと脂肪がついた腹が付いた腹を揺らして言った。
まだ若いはずだが、顎の下にも就いた脂肪で老けて見える。
まだ20代でボデイガードにもなると言ったのに大丈夫なのだろうか?
「うん」おざなりな返事をしながら
車の後部席で思った。
(忌々しい)
それに今日は、あの夢をまた見た。
白っぽい木、それは葉が一枚もなく人間の手の骨を思わせるように折れ曲がっている。
そこに何かが結び付けられている。
靴だ
たくさんの靴スニーカーから、高級な革靴まで様々な靴が下がっている。
「なんでこんなに靴があるんだ?」夢の中で自分は言う
顔のわからない誰かが言う
「それは、もう必要ないからに決まってるだろう」
このところしょっちゅう見る夢だ
意味は分からない、わからないのに自分は飛び起きる。
そしてものすごく不安になるのだ。
雨雲が水をぶちまけたのはその時で、ぽつぽつと振っったのではない。
いきなり轟音を上げてたたきつけるような水が落ちてきた。