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ゲームハイスクール ~遊びの牢獄~  作者: 愛守
Chapter1‐3 人狼
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オープニング第二戦

 ナハトのおどしに対し、マオは不敵な笑みを返した。

 両者の間に火花が飛び散る。

 と、その時。


「それでは次のゲームに移らせていただきます」


 GMの言葉により、ナハトたちのケンカ勃発はまぬがれた。


「続いてのゲームは人狼です。ルールをご存知ない方はメールをご確認ください」


 全体の約6割の人数が携帯を操作し出す。その内の半数以上は経験者だったが、それでも興味からメールを開いたのだった。


『このゲームでは、プレイヤーはまず人狼側と村人側へ分かれます。

 人狼側は村人の人数が同数以下になった時点で、村人側は人狼を全て処刑した時点でそれぞれ勝利となります。

 その際、自分はゲームに生き残っていなくとも、チームが条件を満たせば勝利となります。

 ゲームは話し合いと多数決による処刑を行う昼のターン、人狼と役職が行動する夜のターンを交互に行うことにより進めていきます。

 各役職については添付ファイルをご覧ください』


 アイネがファイルを開くと、携帯には画像と共に各役職の詳細が表示された。


『――人狼。

 他の人狼が誰なのか通知されます。また、夜のターンに人狼のみによる話し合いと、誰か1人を選んで脱落させる襲撃を行うことができます。

――占い師。

 村人側の役職です。夜のターンに誰か1人を選び、そのプレイヤーが人狼か人狼でないかを知ることができます。

――霊媒師。

 村人側の役職です。脱落したプレイヤーが人狼か人狼でないかを、夜のターン中に確認することができます。

――騎士。

 村人側の役職です。夜のターン中、人狼の襲撃から自分以外の誰か1人を守る護衛という行動が可能です。

――狂人。

 人狼側の役職です。村人として人数にカウントされますが、勝利条件のみが人狼と同じです』


 一通り見終えたアイネは、もう一度上から順に確認してゆく。

 だが、それでもいくつかの疑問点が残り、頭を抱えている。


「……どうした?」


 そばにいたナハトがその様子に気づき、穏やかな口調で声をかける。


「私、人狼って初めてでよくわからないんです」

「そうか。なら例を示そう。このゲームはまず最初に自分の役職がランダムに決まる。例えば俺が人狼で、お前は役職のない一般の村人だったとする」


 ナハトは人狼の画像を携帯に映し出し、アイネへと見せた。


「だが、その正体はお前にはわからない。実際のゲームでは画像を見せることも、こうして自分の正体を意味もなく明かすことはないからだ」

「では、どうすれば……?」

「そのために話し合いを行う。それぞれの発言内容から推測することとなるだろう。もし仮に、占い師を名乗る人物が2人現れたとしたら……」

「どちらか片方は絶対にうそを吐いている……ということですか?」

「その通り。そうやって自分の正体を隠すなり明かすなりして、情報を整理しながら敵陣営を倒せば勝ちだ」

「なるほど」


 アイネは朧気おぼろげながらもゲーム全体の動きを理解し、うなづいた。


「他に、初心者が理解しにくいのは役職か。人狼や占い師、それから霊媒師に騎士。これらは問題なさそうだが、狂人は少々ややこしく感じるかもしれない」

「そうですね。村人なのに人狼の役職って、一体どういうことですか?」

「一番簡単に説明すると、この文章の通りになる。つまり、勝利条件のみが人狼の村人ということだ」

「そこがちょっとわかりにくいんですよねえ……」


 アイネは首をかしげ、ルールを見つめながら小さいうなり声を上げた。


「これも例を出しながら説明しよう。まずは占い師によって占われた場合だが、本物の村人であれば人狼ではないと判定される。が、狂人の場合でも同様の判定となってしまう」

「敵陣営だとわからないんですね。霊媒師の場合もですか?」

「その通り。勝利条件である人数差のカウントでも、村人として扱われる。つまり、本当の村人が2人、狂人が1人、人狼が2人ならゲームはまだ終わらない。合計で村人陣営が3人いるからだ」

「でも、勝利条件は人狼と一緒なんですよね? 人狼と村人が同数となった時に人狼陣営として勝利するのに、カウントは村人陣営として扱うなんて……やっぱりややこしいです」

「そう。だから勝利条件だけが人狼だと考えれば一番わかりやすいんだ。複雑なように見えて、実は他は村人と一緒だから」


 そう言われて、アイネは改めて狂人に関してのルールを見つめる。


「……本当だ」


 小さくそう呟いたアイネを見て、ナハトも柔らかな笑みを浮かべた。

 それに気づいたアイネは不思議そうにナハトを見つめ返す。


「……どうした?」

「い、いえ。お時間を取らせてしまって、ご迷惑でしたかと……」

「何だ、そんなことか。全然気にしなくていい。こうしてゲームの面白さを伝えるのもゲーマーの務めだからな」


 アイネは今までのナハトの態度との差に驚き、そして興味を抱いた。

 一見すると冷酷そうな振る舞いをしてはいるが、それは単に不器用なだけではないかと。

 そう思った瞬間、アイネは満面の笑みを浮かべた。


「ありがとうございます、ナハトさん。せっかく教えていただいたのですから、勝てるようにがんばります!」

「ああ。同じ陣営になれるかどうかはわからないけどな……」

「あ……! すみません。もしそうなってしまったら、ナハトさんとしては複雑な気持ちですよね……」


 アイネはうつむいた。

 役職がランダムで振り分けられる人狼というゲームでは、必ずしも同じチームに属することができるとは限らない。

 仮にアイネとナハトが敵対した場合、ナハトはみすみす敵に塩を送ったことになる。

 だが……。


「俺は飽くまでルールを教えたまでだ。そこから先の戦略だとか、そういったことは自分で考えてもらう。まあ、人狼というゲームの性質上、プレイヤー全体に向かって戦略を伝えることになるだろうから心配はない」


 ナハトはさほど気にしていなかった。

 だが、それと同時に先程の温かな表情もかすみのように消え去ってしまっていた……。

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