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ゲームハイスクール ~遊びの牢獄~  作者: 愛守
Chapter1‐2 おにごっこ
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疑惑の誘い

 人混みをき分け、ナハトは目的の人物の前へと辿り着いた。


「話がある」


 ぶっきらぼうに切り出すナハト。


「……あ!」


 アイネはすぐに気づき、声を上げた。

 先程までは不安一色に染まっていたその表情に、少しだけ安堵が戻る。


「あなたは、ゲームショップにいらしてた……確か、ナハトさん」

「ああ。やはり、人違いじゃなかったか」

「それで、話って何ですか?」

「単刀直入に言おう。俺と手を組まないか」

「私とですか!?」


 アイネは目を見開いた。


「嫌か?」

「い、いえ……。でも、なぜ私と? 他にもっといい人がいるんじゃないですか?」

「同じ志しを持った者でないとダメだ。おそらく、ここにいる大半の人間が現状に満足している。奴らにとって俺は目のかたきでしかない」

「……そういえば、さっき」


 ナハトがGMに向かって宣戦布告したことを、アイネは思い出した。


「あれって本気なんですか?」

「ああ。あいつが間違っているということを突きつけてやる。お前も帰りたいんだろう?」

「はい。今日の誕生会には間に合わないでしょうけれど……」

「間に合うさ」

「……え!?」

「言ってただろう? この世界は現実世界と空間的にも時間的にも遮断されていると。だったら、元の世界に戻る時は、1秒たりとも経過していないはずだ」

「本当ですか!?」


 アイネは今にも飛びかからんばかりの食いつきを見せる。


「まあ、推測に過ぎないけどな」

「それでも、可能性としてはあるんですね……」


 ようやくアイネの表情に明るさが戻った。


「さて、それじゃあもう一人も誘いに行くか」

「もう一人……?」

「いただろう? 結婚式を台無しにされた女が」


 ハッとしたアイネの表情を見るや否や、ナハトはその女性のもとへ向かった。

 そして、先程と同様に誘う。


「ありがとう! 一人で心細かったの。あ! 私、カノン。よろしくね」

「俺はナハト。こっちがアイネ」

「よろしくお願いします」


 3人が自己紹介を済ませたそこへ……。


「あの……よければ僕たちも仲間へ入れてくれませんか? 何だか他の人たちと同じグループになりたくなくて……」


 眼鏡の男が消え入りそうな声で相談を持ちかけた。

 隣には茶髪の青年がいる。


「ほう? 何でだ?」

「ええと……」


 人見知りなため口ごもる眼鏡の男。

 その様子を見かねて茶髪の青年が代わりに口を開いた。


「みんな満足してるみたいで、話が合いそうにないからさ。俺は友達と遊ぶのが好きだから、本当ならこんな場所いたくない。このゲームだって、試しにやってみて面白かったらみんなでやろうと思ってたんだ。なのに……」


 そう述べる茶髪の青年は暗い表情を浮かべている。

 2人の後ろにいた男子中学生、ロン毛、ハーフで体格のいいスポーツマンの3人も強く頷いた。


「そうか。目的が同じなら歓迎する」

「本当か!? ありがとう!」


 5人が一斉に笑顔を見せる。


「俺、ミズカミ! よろしく!」

「僕はメヌエです。よろしくお願いします」


 茶髪の青年と眼鏡の男がそれぞれ名乗った。


「俺のことはサダメと呼んでくれ。ゲームで使っている名だ」

「ジム……」

「俺はウィリアム。よろしくな!」


 中学生、ロン毛、ハーフのスポーツマンも順番に名乗り終える。


「さて、11人必要だからこれで残り3人か……」

「それなら俺たちも混ぜてくれよ!」


 その声にナハトが振り向くと、そこにいたのは……ルール説明時に歓喜の雄叫びを上げていたあの男子高校生だった。


「俺はマオ。で、こいつらがフーガとワイゼンだ」

「よろしくぅ!」


 背後にいたピアスの男とドクロのTシャツを着た男が同時に野蛮な調子で挨拶する。


「なあ、いいだろ? 俺たち他に行くあてがなくてさあ……」

「……お前らはこの世界にいたい派の連中だろ? 何でわざわざこっちにきた」

「勘違いしないでくれよ。俺は確かにこのゲームには満足だ。けどよ、向こうに残したままの仲間も連れてきてえんだ。それに、何でもやっていいこの世界で暴れるより、やっぱ悪いとわかっててやる方がイケてるだろう?」


 マオの態度にグループメンバーたちは引いていた。


「あの……ナハトさん。やめておきましょう?」

「何だよ姉ちゃんひでぇなあ。俺らも協力したいって言ってるのによお!」

「そうだそうだ!」


 強引に入ろうとする3人にアイネが困っていると……。


「いいだろう。お前らも入れてやるよ」

「っ!?」


 ナハトが驚愕の言葉を放ち、グループメンバーは耳を疑った。


「おお! やったぜ!」


 マオたちがハイタッチを交わす中、アイネはナハトに耳打ちする。


「いいんですか? 他の皆さんも不安がってますよ?」

「まあ、俺もあいつらを信用したわけじゃない」

「ならどうして!?」

「いずれにせよ、同志を募るのはこれが限度だ。だったら、少しでも泳がせやすいこいつらを引き入れといてやる」

「……わかりました」


 アイネはに落ちないながらも、それ以上は追及できなかった。


「さて、ゲームが始まる前に言っておくことがある」


 ナハトのその言葉にメンバーが注目する。


「このゲーム、おにから逃げたり隠れたりするものだと考えている奴が多いだろう。けど、実は違う」


 ナハトはそこで一呼吸置き、メンバーは次の言葉を待った。


「このゲームで俺たちがすべきことは……」


 ナハトはさらに言葉をめる。

 メヌエやウィリアムの唾を飲み込む音が聞こえた。


「おにを追うことだ」

「はあ!?」

「ええ!?」

「じょ、冗談ですよね!?」


 メンバーは何かの間違いだと思い、信じようとしない。

 だが……。


「いいや、俺は真面目に言っている。このゲームで勝つためにはおにを追うのが一番合理的だ」


 メンバー全員が絶句した。

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