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ゲームハイスクール ~遊びの牢獄~  作者: 愛守
Chapter1‐4 ウィズダム&ブレイブ Part1
16/17

ゲームのコツ

「はうぅ……。頭がパンクしそうです」


 アイネはテーブルへと突っ伏した。


「覚えること、たくさんあるんですね」

「そうだな……。他のゲームと比較しても、自由度が高い分だけ基本とされる戦術も多い」

「少し不安になってきました。私でもちゃんとついていけるでしょうか……?」


 暗い表情で俯くアイネ。

 それに対しナハトはカリキュラムを右手に呼び出し、テーブルへと置いた。


「他のゲームから遊んでみるのもいいかもな。ウィズダム&ブレイブはカードゲームとアクションRPGを複合したものだから。それぞれのジャンルの別なゲームをプレイしてみて、コツや考え方を身に着けてからというのもいいだろう。幸い、この世界ではいつでも好きなタイミングで参戦可能だからな」

「そうですね……。具体的には、それぞれどういう心構えで向かえばよいのでしょう?」

「カードゲームは、デッキのバランスとコンセプトが鍵だな。コストが低いカードも入れないと、いくら強力な切り札を持っていても何もできずに負けてしまう。それと、どういう戦略にするのかをあらかじめ決めておく必要がある。他のジャンルと違って、バトルがスタートしてからでは行動が限られてしまうからな」

「戦略……?」


 アイネは首をかしげる。


「例えば、序盤から攻め続けてスピード勝負を目指す『速攻』と呼ばれるスタイル。『アグロ』ともいう。他に、相手を妨害することを主目的とした『コントロール』や、柔軟に戦う『ミッドレンジ』などがある。コンセプトを決めておけば、一つ一つの長所が噛み合いやすい」

「え、ええと……」


 一度に話されて慌てるアイネを見て、ナハトは右手にメモ帳を呼び出した。


「ほら、使え。自動で音声を入力してくみたいだから、焦る必要はない」

「す、すみません……」

「他のカードゲームではほぼ必須の考え方だ。バトル開始時にシャッフルするため、毎回望んだカードを引けるわけではないからな。前もって動きを決めておかないと、勝利への筋道が立てにくい。ウィズダム&ブレイブでは、バトル開始時のシャッフルがなく好きなカードを使用できるが、それでもある程度は戦略をしぼった方が指針を持てて戦いやすいだろう」

「なるほど……。それがカードゲームの基本ですか」


 もう一度メモ帳を見返し、内容を深く理解しようとするアイネ。


「そして、アクションRPGはリアルな戦術が要求される。常に相手やモンスターが固定されている通常のカードゲームとは違い、敵は自由に動き回る。狙いを外せば当たらないし、どこかに逃げられ見失うこともあるだろう。さっきのバトル中も言ったが、味方の配置や攻撃のタイミングが重要だ。スキルや装備の組み合わせも意識するといい」


 ウィズダム&ブレイブに登場する武器には、それぞれ特殊効果が存在する。

 つちを装備すれば攻撃の属性は『粉砕』に変わり、建物や壁などを破壊することが可能となる。鎧を装備した敵アバターや、ガードが高いモンスターへも有力だ。

 連続攻撃を得意とするダンサーなら、重量の軽い扇を使用するのが相性のいい組み合わせの一つ。スキルを使用しながら攻撃できるため、クラスと武器の長所を上手く引き出すことができる。

 他にも様々な効果が存在し、使い方はプレイヤー次第。


「それらを合わせたのが、このウィズダム&ブレイブなんですね。他のゲームも遊んでみながら、少しずつマスターしようと思います」

「そうだな。自分のペースでやるといい。何かわからないことがあったらいつでも聞いてくれて構わない」

「ありがとうございます」

「それじゃあ、俺は最初の授業に向かうとするよ。授業と言うと語弊があるかもしれないけどな」

「はい。がんばってください!」

「ああ。お前もがんばれよ」


 ナハトは携帯機器を操作し、教室へとワープした。

 着いた先は、自習室と同じ光景。

 だが、一つだけ違うのは、大勢のプレイヤーが同時にそこへ現れたという点。


「待ち時間も遅刻もない、という点だけは素晴らしいな」


 ナハトは苦笑混じりに拍手した。

 その直後……。


「おめいただきありがとうございます」


 感情の読み取れない声が響いた。

 GMからのアナウンスだ。


「皆様、こちらはウィズダム&ブレイブ上級の教室です。お間違えないでしょうか?初級コースは別となりますので、お気をつけください」


 発言後、数秒の沈黙が流れた。

 その場を去る者や挙手する者は誰もいない。


「それでは、改めてこのコースの説明を軽くご紹介いたします。初級コースは2単位、中級コースは4単位なのに対し、この上級コースでは6単位を取得することができます。これは、初級と中級コースの分を含みますので、重複した分はカウントされません。また、どのコースも全15回行い、最終日の試験結果と合わせて評価いたします」

「カリキュラムに書いてあるだろう、そんなこと」


 ナハトは右手にそれを呼び出し、バサバサと振った。


「念のため、です。プレイヤー――ナハト様。それと、試験内容をこの場で初めてお伝えさせていただきます。このウィズダム&ブレイブに限らず、上級コースは全て私たち運営側との対戦です」


 その瞬間、ナハトの目の色が変わった。


「お前らをこの手で叩きのめすことができるんだな? いいだろう。せいぜい覚悟しておけ」

「楽しみにお待ちしております。さあ、それでは第一回を始めましょう。現実世界のプレイヤーともネットが繋がっておりますので、好きな相手とバトルしてください」


 宣言と同時にプレイヤーたちは一斉にゲームを開始した。

 どれだけ待ちきれなかったことか。

 大人気のゲームを、今までとは違った舞台で、新たなノルマを課せられてプレイする。

 ゲーマーは常にえている。

 それをうるおすに足るゲーム大祭が、大勢の中から頂点を目指すサバイバルとして……たった今、戦いの火蓋ひぶたは切って落とされた。

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