表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゲームハイスクール ~遊びの牢獄~  作者: 愛守
Chapter1‐4 ウィズダム&ブレイブ Part1
14/17

練習戦

 無限に広がる空間に、いくつものテーブルとパソコンが用意されている。

 窓の外を見渡すアイネ。

 一見すると何の変哲もない風景だが、それらはただの映像。当然だ、この自習室とは空間も時間もへだたれているのだから。

 対してナハトはそんなことには目もくれず、無造作にパソコンを起動した。


「さっさと始めるぞ」

「す、すみません」


 そばへと駆け寄るアイネ。登録を済ませゲームを開始する。

 そして、しばらくが経過した。

 アイネはストーリーモードをある程度まで進め終わり、順調に準備が進んでゆく。


「これで一通りは大丈夫か」

「はい。ナハトさんのおかげです。デッキや装備の操作方法もわかりましたし、どう選べばいいのかも勉強になりました」

「そうか……。なら、ちょっと戦ってみるか」

「ええ!? ナハトさんとですか?」

「嫌か?」

「いえ……。でも、いきなり上級者と戦うのは……」


 不安気に俯くアイネ。

 一方のナハトは、いつもの冷たい態度とは違い穏やかな表情を浮かべている。


「心配ない。フォーマットレベル5で戦うし、カードも現段階でお前が持っていないものは使わない。条件は同じだ」

「でも、ナハトさんはゲームが上手ですから、私なんかが戦っても……」


 とうとうナハトは溜息を吐いた。


「わかったわかった。手加減するから、それでいいだろう」

「ええ!?」


 アイネは驚きのあまり反射的に声を上げた。

 怪訝けげんな表情を返すナハト。


「……何かおかしかったか?」

「い、いえ……。ナハトさんってストイックなイメージがありましたから、手加減なんて絶対しないと思ってました」

「……まあ、今までに一度もしたことないな」

「すみません。ナハトさんのポリシーを無理やりに……」

「俺が勝手に決めたことだ。気にするな」


 ナハトは携帯機器へと視線を下ろし、IDを表示してテーブルへと置いた。

 フレンド登録が完了し、対戦ルームへと移動完了。


 野球場の数倍はあるフィールド。

 カードによる設置や変更が行われてないまっさらな平地。

 両者の距離は10メートル。


 ゲームは既に始まっている。


「主導権をお前にやろう。かかって来い」


 ナハトは剣を構えるのみで、自ら動くのを放棄すると宣言した。

 手を渡されたアイネ。だが、どういった戦術で臨むのか大変難しい。


 このウィズダム&ブレイブというゲームは自由度が非常に高い。

 言い換えれば、選択肢が多すぎて初心者は気後れしてしまう。

 距離を取るのか、縮めるのか。

 カードを使用するか、必要なコストを温存するか。

 攻めか、守りか。

 それら二択に加え、どのタイミングで動くのか。

 どの方角へ向かい、どこへ味方を配置するのか。


 ……そうした多岐に渡る戦略の中から、臨機応変に選ばなければならない。


「それでは参ります!」


 アイネはまずミニアルミラージを三体召喚し、ナハトへと一斉に突進させた。

 対するナハトは剣を振り払い、衝撃波を放つ。一体にクリティカルヒットし、撃破。

 さらに、瞬時に使用したシールドにより残りの攻撃も防ぐ。1秒毎にマジックを10消費するその防御魔法は、ナハトのクラス『ソルジャー』の場合レベル5で半秒しか発動できない。

 しかし、その一瞬だけ生成した光の盾は、ミニアルミラージたちの攻撃を見事にしのいだ。

 その隙を逃さず、弾き飛ばされた二体へと斬撃を浴びせる。


 一連のアイネの攻めは、わずか5秒で完封された。

 デッキ30枚の内3枚を消費してしまったアイネ。デッキを全て使い切るまで、それらのカードは再使用することができない。

 ナハトもマジックとスタミナを消費したとはいえ、それはすぐに回復してしまう。どちらも1秒毎に1ずつチャージされるため、すぐさま元通りだ。


「モンスターに戦わせているだけじゃダメだ。お前のクラスも俺と同じソルジャー、接近戦に特化している。近づくのが間に合わないにしろ、遠距離攻撃スキルを撃つべきだ」

「は、はい!」


 アイネはワイルドウルフを召喚し、突撃させる。

 そして、今度はアドバイスをもとに自らも剣を振るう。

 放たれた衝撃波は炎となりナハトへと襲いかかる。レベル5ソルジャースキルの炎熱波だ。


 だが、またしてもナハトは的確に応じる。

 アバターの動きをオートモードに任せ、ナハト自らは水難のカードを操作した。

 それによりワイルドウルフは剣でさばきつつ、炎熱波は溢れる大量の水で打ち消す。

 カードはウィズダムと呼ばれる神の知恵という設定であり、アバターの動きとは完全に独立している。そのために可能となる動きだ。


「そんなんじゃ俺の動きを封じることはできない。もっと本気で来い!」


 慣れないゲーム。

 厳しいアドバイス。

 それでもアイネはまっすぐにナハトへと剣を向け続けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ