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ゲームハイスクール ~遊びの牢獄~  作者: 愛守
Chapter1‐3 人狼
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ダブルフェイク

 未だ状況を理解できていないワイゼン。マオに至っては何事かが起きたことにすらまだ気づいていない。

 その様子があまりにもおかしく、笑いを噛み殺すナハト。


「お前……一体何をした? マオが吊られたのに人狼の勝利だと?」


 その問いかけに、ただただナハトは頭を抱えて苦笑を漏らした。

 マオもようやく異変に気づく。


「おい、何言ってるんだよワイゼン……? 人狼のお前が勝ちだろう?」

「俺は人狼じゃねえ。なのに……何で?」

「まだわからないのか? お前らは二人とも負けたんだよ。人狼の俺を吊ることができなかったからなあ……」

「なっ……!?」


 何かを言おうにも、かすれて声にならないマオたち。

 ただ口をパクパクとさせている二人に対し、ナハトは溜息を吐いた。


「人狼が役職を騙ることの何がおかしい?」

「で、でも……一旦占い師を名乗っておきながら……」

「人狼が同じ陣営の役職を騙るなんて……」

「だからお前たちは浅はかなんだよ。戦況に応じて役職を騙り直すのは当たり前だ。それに、人狼と狂人では立場が違う。俺を吊ろうとしなかったお前らならわかるだろう?」

「パワープレイに誘導したのも、人狼としての弁明をさせたのも、全部自分の隠れみのだったのか……!」


 マオは悔しそうにナハトを睨んだ。

 と、そこへ脱落者たちが戻ってくる。


「上手くやられちゃいましたね……。前回はおかげで勝てましたけど、やはり敵になると手強てごわいです」

「完敗だ。あんたの勝ちを認めよう」


 メヌエとミズカミはナハトへと歩み寄り、握手を交わした。

 狂人だったジムは遠くから見つめているだけだが、少しだけ笑顔を浮かべている。

 そして、同じく人狼だったアイネはナハトへと駆け寄った。


「ありがとうございます、ナハトさん! 私、どうすればいいかわからなくて困ってました……」

「まあ、それでいい。上手く村人に溶け込めていたからな」


 マオたちはその様子を睨み、他のプレイヤーたちはただ俯いている。

 と、その時……。


「人狼ゲーム、お疲れ様でした。勝者の皆様はおめでとうございます! 敗者の方も気を落とさずに次がんばりましょう。この後は会食となっておりますので、ごゆっくりどうぞ」


 アナウンスと同時にプレイヤーたちは空間移転していた。

 着いた先はカフェテリア。広々としており、テラス席もたくさん用意してある。


「カフェテリアや教室も満員になることはあり得ません。空間は複数存在しておりますし、拡張はいつでも可能です」


 GMの案内と共に、カフェテリア内の空間がさらに広がった。

 他のプレイヤーが目を輝かす中、ナハトは呆れて溜息を吐く。


「ああ、わかったわかった。食欲が失せるからそれくらいにしとけ」

「失礼しました。それでは存分にお楽しみください」


 途切れるアナウンス。

 戸惑うプレイヤーたちを置き去りにし、ナハトは一番近い席へと座った。


「何でも出るんだろう? なら試しに……」


 直後、ナハトの目の前にはズラリとごちそうが並んだ。

 それを見たプレイヤーたちは一斉にテーブルへと駆け込む。


「おい、本当に何でも食べていいのか!?」

「マジかよ!? 高級和牛は!? フレンチは!? 寿司は!?」

「負けた腹いせだ! やけ食いしてやる覚悟しろ!」


 半狂乱。

 もう収拾などつきようがない。

 だが、そんな中まだ沈んだままの人物が一人。心の傷を負わされたカノンだ。


「あの……大丈夫?」


 優しく話しかけるアイネ。

 だが、その言葉の途中でカノンは走り去ってしまう。

 慌てて追いかけるアイネ。

 しかし……。


「来ないでよ!」


 廊下に響く声。

 涙がそのほおを伝う。


「あなたは勝ててよかったわね! どうせ私のことなんて心の中で笑ってるんでしょう!?」

「そんな……」

「いいえ、わかるわ! あのナハトって男だってそう! 自分を裏切った報いを受けた私を、いい気味だと思ってるんだわ!」

「やめてください!」


 叫び返すアイネ。

 驚いて静まるカノン。


「私のことは、どう思ってくれても構いません。ですが、ナハトさんは私たちのために戦ってくれてるんですよ? せっかく全員で勝とうとしたナハトさんを困らせたのは誰ですか? ナハトさんはどんな思いだったか考えてみましたか!?」

「うるさい!」


 再び叫び返すカノン。


「私が悪いんでしょう……? もういいわよ!」

「待って!」


 引き留めようとするも、カノンはどこかへと消えてしまった。

 仕方なくその場を後にし、カフェテリアへと戻るアイネ。

 どうすることもできなかった己の無力さに絶望し、ナハトのそばへと向かった。


「……どうした? 食べないのか?」


 暗い顔で俯くアイネへと声をかけるナハト。


「ナハトさん。私には何もできませんでした。ナハトさんのことを誰も何もわかっていないのが、とても悲しいんです、私。それで、カノンさんにもそれを伝えたかっただけなのに、つい強く言い過ぎてしまって……」

「俺のことをわかっていない、か……。それはお前も同じだろう?」

「え……?」

「お前とも今日会ったばかりだし、どう思われようと俺は気にしない」

「そんな……! そんなの、周り全員が敵になってしまいます!」

「上等だ。かかって来いよ」

「……嫌です。悲しすぎます! 私、あきらめませんから!」

「……好きにしろ」


 ナハトはそっぽを向いて溜息を吐いた。

 次回からはいよいよウィズダム&ブレイブ編です。

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