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ゲームハイスクール ~遊びの牢獄~  作者: 愛守
Chapter1‐3 人狼
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パワープレイ

 メヌエに続き、ジムまでも霊媒師として名乗り出た。

 これにより、占い師を合わせてカミングアウトは四人。


「チャンスです! 僕やナハトさんを含めて全員吊れば、人狼サイドを二人も巻き込めます!」


 メヌエが主張しているのはローラーという戦術。特定の役職を複数人が名乗った際、その全員を吊るというものだ。

 今回の場合は、占い師と霊媒師のダブルローラー。二人の役職を失ってしまうが、確実に二人の敵陣営を巻き込める。

 だが……。


「俺は反対だなあ」


 ナハトは即座にそれを否定した。


「な、何故ですか!?」


 驚きのあまり言葉がつっかえるメヌエ。

 無理もない。四人もカミングアウトした場合、ローラーが定石化されているのだから。


「人狼を一人に追い詰めれば、勝利は目前なんですよ!?」

「その後、どうする?」

「え……」


 ナハトの問いに、メヌエは固まった。


「四人をローラーするということは、騎士の護衛が失敗した場合八人が脱落するということだ。その時点で残っているのは三人。つまり、最終局面だ」

「で、でも……誰が人狼かわからない初期状態からすれば、自分を除いて二択にまで絞り込めますよね?」

「俺はそれで満足しない。対抗の偽占い師はおそらく狂人だろうから、誰が人狼かわかっていない。つまり、矛盾する可能性もあるわけだ」

「随分と自信があるようだな」


 間髪入れずにミズカミが挑発に応じる。


「けれど、あんたがどれ程優れたプレイヤーでも、確実に人狼を見抜くことはできないはずだ。矛盾するのは狂人のあんたの方だ」


 ナハトはさらに言い返すことはなく、ただ不敵に笑ってみせた。


「ええと……。ローラーは却下ということでよろしいでしょうか? それなら、占いの対象はどうしましょう? 先に指定して二人の占い先を合わせるという方法もありますが……」

「その手法のメリットは、占い師の識別がしやすいという点。デメリットは人狼が襲撃を被せやすいという点だな」


 人狼がターゲットにできるのは人間だけ。あえて仲間を襲撃するというのはルール上不可能だ。

 つまり、襲撃されたプレイヤーは人間だと確定する。

 その情報を頼りにゲームを進めてゆくのだが、人狼が占い先を襲った場合に占いが無駄になってしまう。


「俺はなるべく情報を増やしたいから、占い先を合わせるのには反対だな」

「……妥協してくれそうにないですから、仕方ありませんね。では、吊り先を決めて次のターンに回しましょう」


 その後、一日目のターンが終わりフーガが吊られた。夜のターンに襲撃されたのはカノン。

 二日目からは占いと霊媒の情報が加わるも、これと言った進展はなく脱落者が増えてゆくのみ。

 そうしている間に霊媒師を名乗っていたメヌエも襲撃を受け、仕方なく対抗者のジムもローラーの意味で吊る。

 村人側が後手に回り続け、ついに最終日となった。

 残っているのはナハト、マオ、ワイゼンの三人。


「最後か……。おい、とっとと占い結果を教えろ。それでゲーム終了だ」


 それを聞き、ナハトは頭を抱えて笑いを噛み殺した。


「何がおかしい!?」

「本当はわかっているだろう? 俺が偽物だって」

「……やっぱりか、貴様! 片方だけが襲撃されたのは、本物の占い師がどっちなのか人狼が見破ったからだ!」

「喜ぶのはまだ早い。どうして俺が偽物だと名乗り出たのか、まだわからないのか?」

「は? それは……負けを認めたからか?」


 ナハトは溜息と共に立ち上がり、椅子を持って中央へと出た。

 そして、マオたちへと向かい合わせに腰かけ、足組をする。


「俺は狂人だ。今からパワープレイという手法で人狼を勝利に導いてやるよ」


 パワープレイ。人狼と狂人が票を合わせ、村人を吊る戦術のこと。

 狂人を含めた人狼陣営が村人陣営より人数が多い場合に成立する。


「たった今から、このゲームは人狼に紛れた村人を吊るゲームに変わった。お前らには人狼としてアピールしてもらう」

「人狼として……?」

「自分の怪しい行動を主張するもよし、俺を偽物だと見抜いた基準を説明するもよし」

「それじゃあ、こんなのはどうだ?」


 今までほとんどしゃべってなかったワイゼンが口を開いた。


「確かマオは、お前が偽物だとわかった瞬間吊ろうとしていた。それって、自分が村人だからじゃないのか?」

「な!? 咄嗟に頭が回らなかっただけだろうが!」

「いいや、こいつは村人だね。俺は自分が人狼だと主張する材料はないけれど、マオが村人だと主張できるから消去法で俺が人狼だ」


 悔しそうに歯を食いしばるマオ。

 勝ち誇ったように笑うワイゼン。

 そして、投票の時間となりマオが吊られた。


「ただいまを持ちまして、勝利チームが確定しました。人狼陣営の勝利です」


 流れるアナウンス。

 マオは悔しさのあまりうめき声を出している。

 ワイゼンはキョトンとしたまま絶句。

 ただ一人、ナハトだけが口元を歪めていた。

 読者様への挑戦状です。

 最後に残った三人の役職は何でしょうか?

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