パンドラの
私は、この世界に絶望している。
始まりは小学生の時のIQテスト。
「IQ180だって!?お前は天才だな!」
今まで仲の良かった同級生の足の下。
「お前、少しくらい頭が良いからって調子のンなよ」
"アレ?"
いつも笑顔の先生。
「先生、その記述間違っています」
「チッ」
"アレレ?"
貰った成績表を開くと、授業成績オール10の横に「素行に問題あり」と書いてあった。
"アレレ?"
私よりも頭が悪い奴らが支配する世界に
絶望した。
私一人が天才でも
この世は変わらない。
三角形の頂点に君臨したとしても、
変えることはできない。
それを中学生の時に計算し、理解した。
「うんっ、ムリ!
ぜつぼ~した~。適度に生きよ~」
私の学ランの裾を引く小さな手。
「おれがこのせかいをかえてやるよ」
ムフーと鼻息荒く、ただの幼稚園生である幼子は言った。
その時、私は楽に生きるために
英検1級、パイロット免許、大検合格資格を保持していたのだが
それでもこの幼子の、私への愛は心に響いた。
「ヨ、ヨウくん・・・♡ 俺のために・・・♡」
可愛すぎてむぎゅりと抱きしめ、
顔をぐりぐり押し付けたら、「うぇ~ん、おか~さ~ん」と泣かれた。
あの頃のヨウくんは可愛かったなぁ~・・・むにゃむにゃ。
「おい、レイ」
「おきろヨ」
あ、寝てた。
体を起こし、顔に付いた机の跡をこする。
隣にいる男の子を見る。
大きい。ヨウくん、おっきくなったなぁ。
「明日、本番なんだから、寝てんなヨ」
「わ~ごめん~寝てた」
胸元に紙を押し付けられる。
「採点しろ」
「・・・生意気になったよね、ヨウくん・・・レイたん悲しい・・・」
「早くしろよ、こっちは金払ってんだぞ」
「オレは世界を変えるんだから、ぐずぐずしてらんないの!」
「世界なんて変えなくていいじゃん」
「変えるの!オレが!」
きりりとした表情で言う。
こういうところは変わってないな。
サクッと数秒、目を通す。
「ん、満点♡ ほんとにもう教えることなんてないよ~」
「オレはその問題全部解くのに一時間かかったけどね、・・ゴホッゴホッ」
「大丈夫?また風邪?」
「ああ・・・、オラ、こっちの英語も見ろよ」
「ん、全問せいか~い」
「ま、俺は世界を変える男だしな」
「あ、でもね、ここの英訳、先生によっては△かも。こう書いた方が採点者受けすると思うよ」
ピンクのペンで書いていく。
それを見ながらヨウは別の問題に取り掛かって行く。
別に、
世界なんて
変えなくていいのに・・・。
めんどくさいし。
ヨウは真剣な面持ちで、問題を解いている。
真剣な顔、可愛い・・・♡
白くてふっくらしたほっぺに、指を当てる。
ぷにぷに~♡
「さわんな!」
じろりと見られ、手を払われる。
無視して、本格的に抱き着いていく。
「やンめろ!邪魔するなら帰れヨ」
お尻をけられる。
「イヤン」
「ゴホッゴホッゲホゲホゲホ・・」
ヨウが激しく咳き込む。
「ヨウくん?大丈夫?」
ヒューヒューと呼吸音がする。
「だいじ、おま、・・うつるから、もう帰れ」
支えようとした手を押し返される。
「え~!心配だよ~。明日、本命の試験日だよね??大丈夫なの??
私がヨウくんの代わりに受けてきてあげようか・・・」
ヨウはキッとした目で私の後ろにある壁を叩く。
「帰れ」
ヨウの部屋から部屋から追い出される。
壁ドンされちゃった・・・。