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鈴木君  作者: 枡 小南
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突然の来訪者

できるだけ毎日更新していきたいと思っています。


 私の住む町では、お昼の12時になると町内放送でエーデルワイスが流れる。

町内のあちらこちらにあるスピーカーから流れるエーデルワイスにエコーが掛かって、不思議な音になる。

 

 そして、このエーデルワイスを聞き終えてから私の一日が始まるのだ。

「ぐわー」だとか「ぬおおおお」だとか、およそ自分以外の女性はきっとこんな奇声を出すことは無いだろうなとう声を絞り出して、布団から飛び上がる。

 余談ではあるが、その奇声が私が1日の中で発する最初で最後の音になる事も多い。


 背中をボリボリと掻き、大口開けて欠伸をしながら2階にある自分の部屋から1階のリビングに移動する。

いつもの様に、母の置手紙とラップされた昼食がテーブルに並べられている。


『みな美へ 冷蔵庫にプリンがあります。あとお母さんは今日帰り遅いからね』

と書いた置手紙には豚だか猫だか良くわからない生物のイラストが添えられていた。

 最近、母の中で流行っているのか必ずこの謎の生物が描かれている。


 母の帰りが遅いという事は、私の夕食を準備する人が居ないという事になる。

とりあえずテーブルに置いてある炒飯と中華スープを晩御飯に取っておく事にした私は、スナック菓子を摘む事にした。


 風呂に入るべきか、二度寝するか、それとも録画してあるアニメを消化していくか…

今日はどうやって1日を過ごすべきか、そんな事を考えている時だった。


「ごめんください」


 玄関に突然の来訪客… 居留守を使うべきか、それとも出て行くべきか迷っていると、その声は私を呼んだ。


「みな美さんいらっしゃいますか?」


 私を名指しでご指名とあらば、出て行くより他に無いであろう。

重い腰を上げて玄関先に向かった私が最初に思ったのは(どっかで見たことある人だなぁ)だった。


「お久しぶりです」

精一杯の愛想を利かせた声色で言った。

あとは会話の中からこの綺麗な御婦人が誰であるか思い出していけばいい。


「久しぶりね、みな美ちゃんが最後に家にきたのは中学校の時だったかしら?」

と、その御婦人は笑顔で言った。


中学校の時の友人の母親か?


「あーたぶんその位ですね、高校に行ってからあまり遊ばなくなってしまって」

「まぁ仕様が無いわよ。年頃になると異性と遊ぶのって周りの目とかもあって気にするでしょうし」


中学校時代の友人で男というフレーズで完全に思い出した。


「鈴木君は今何してるんですか?」

「それが分からないから、みな美ちゃんに逢いに来たのよ~」

「はい?」


そんな事を言われても、今の今まで鈴木君の事すら忘れていた私に鈴木君の現状等分かるわけも無い。

素っ頓狂な声を出してしまったのが悔やまれる。


「あれ?幸江さんから何か聞いてない?メールしておくって言ってたけど」

「ちょっと玄関先じゃアレなので、居間でまってて下さい。携帯見てきます」


 そう言って鈴木君のお母さんを居間に通して、2階にある私の携帯を見ると確かに母からメールが入っていた。


『鈴木君のお母さんがみな美に用があるって!なんかバイト紹介してもらえるみたい?』


 母はどうにも私に労働して欲しいらしく、時たま母の知人を介して私にバイトやらの面接を紹介してくる。いつも難癖つけて面接にすら行かない私への対策なのだろうか? 紹介してくれた本人を家に寄越したのは初めてだった。


 ため息をつく以外に無かった。

上手に適当な理由を見つけて、鈴木君のお母さんを説得してお帰り願おう。

 

「メールきてました、バイト紹介してくれるかも?だそうです」

もうテンションはがた落ちである、誰が聞いてもそれと分かる声色だったと思う。


「いやね、この間偶然カフェで幸江さんに会ってね。探偵を探してるっていう話をしたのよ」

「探偵?」

「そなのよ!そしたら幸江さんが、みな美ちゃんが毎日家で暇してるから探偵に使ってみたら?って冗談を言ったんだけど、私がその冗談に乗っかった感じなのよ~」

「探偵を!?私が?何するんですか?」



 今までもパチンコ屋の景品交換所やら、イベントの着ぐるみだとか何処で見つけてくるのか判らないようなバイトを母経由で紹介されてきたけれど、まさか探偵が来るとは思いもよらなかった私は、思わず食いついてしまった。


「祐介が今何をしているのか調べて欲しいのよ」

「何処に住んでいるかとかですか?手がかり無しじゃどうにもならないですよ~」


 私的には、素人だから場所すらみつからないですよ?というニュアンスの言葉を遠まわしに言ったつもりだったのだが、流石は母と同じ位の年齢のおばちゃんである。手がかりがあれば私にもできると思ったのだろう


「住んでいるマンションなら知ってるわよ?」


 なんだそんな事!とでも言いたげな表情でこちらを見てくるので、それが分かってるなら自分で直接聞きに行けばいいじゃないか!と言いたかったが、探偵を雇う位なので、なにかしら事情があるのだろう。


「お母さんが直接会うことって出来ないんですか?」

「高校進学したくらいから会ってないのよ。私もお父さんもね」

 

 先ほどまで笑顔だった彼女の顔が曇った。事情を詳しく聞く気も無いが、私が今29歳なので、10年?15年?近く自分の息子と会っていないなんて普通に考えてもおかしい。

 しかも住んでいるアパートまで知っているのに?

眠くなってきたので、中途半端ですが…

さあ明日も仕事だ

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