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あいたい  作者: 平井和希
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スポーツテスト前日

次の日も結局木下さんとは話すことができなかった。

その帰り道、詩子が突然聞いてきた。

「ユウタ、最近、ていうか、今学期入ってから塾行ってなくない?あんた、中学受験するんでしょう?」

そうなのだ。僕は5年生から塾に通い始めて隣の県にある東大社(東大社)中学を目指して今猛勉強中だ。他の中学受験組は3年生か4年生から塾に通い始めており僕はその差を埋めるべく頑張っている。

では、なぜ僕は5年生からなのか。答えは簡単。

僕が受験したがらなかったからだ。控えめに見ても僕はこの学校で1番と言っていいくらい頭がいい(こんなこと口に出そうもんなら詩子に締められるので言わないが自他共に認めていることである)。そんな僕に受験させないのは勿体無いと思った親が塾に通わせ始めたのである。なお僕はこのとき猛反対して結局、妥協案として5年生から通うことになった。

「塾は今、春休みなんだ。明日からまた始まるよ」

「そうなの。じゃあまたあんまり一緒に帰れなくなるね。でも、頑張ってね。」

「ありがとう、頑張るよ」

そうは言ってみたものの塾はしんどい。

皆は行きたい学校があるから頑張れるのかも知れないが僕は特に行きたい学校もなくこの近辺で1番学力の高い学校にいたずらに照準を合わせているだけである。

しかも受験してしまえば敦貴や詩子と同じ学校に行くこともできない。この3人の仲がいつか自然消滅してしまわないかと僕は不安になる。

また、僕は塾の日は学校に塾の道具も持って行き、学校の目の前のバスから塾へと向かう。つまり詩子たちと一緒に帰ることはかなわないのだ。これも少し寂しい。寂しいから話を変える。

「そういえば、明日はスポーツテストだね。」

「俺の大活躍、楽しみにしとけよ!」

さっきまで黙って話を聞いていた敦貴がはしゃいでいる。

「私なんてテニススクールで選手育成コースに入ってるのよ?運動神経あるに決まってるじゃない!女子優勝はもちろん、総合優勝してやるわよ!」

「でも、この中では僕が1番ソフトボール投げの記録長いよ」

「ユウタって前少しテニスやってただけなのに肩いいよね、少し分けてよ」

「詩子の50メートル走の記録を分けてくれるなら」

「俺も灰原の肩の力は羨ましいな」

「3連続総合優勝の敦貴に言ってもらえるとは光栄だね」

この日はこんなバカな会話をして家路についた。

明日からは3人で帰れる日も少なくなる。

今この瞬間を大切に過ごそう。ユウタはぼんやりとそう思った。

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