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やってやるよ

またまた華麗に盗んで見せたクロウ!

学園ではどうやら行事が迫っているらしいが?

 1時間目が始まる合図の鐘の音と同時に教室に入ってきたのは、リオのいるこの1-Bの担任を務める人物だった。


「はいはい、席に着く!クロウはわかったから席に着きなさい。フール君、そこで写真売ってないで、ほら!」


フールは ちぇ と言いつつも、周りにいたクラスメイトに目配せをしていた。どうやら次の休み時間にもフール命名「クロウの写真売っちゃうぞ会」を開催するらしい。リオはそんなフールを見てやれやれと首を振る。隣のリリアンもリオと同じ意見のようで、ホントにもう… と呟いていた。


生徒が全員席に着いたのを確認した先生は、来月この学園の一大イベントの一つである「フィオーネ学園魔法大運動会」があることを発表した。それを聞いた途端生徒達がそわそわし始めた。

それもそのはず。このフィオーネ学園の大運動会には世界各国から有力者が集まり、その人たちに自分を売り込むイベントでもあるのだから。


何故って、この学園には金持ちの子息や大賢者の子孫、王族貴族の子供達が多く通っているからだ。当然、子供や孫の活躍を見にその親も集まる。加えて、親が優秀な子供達が通う学校とあって、将来的に期待できそうな人材を求めてあらゆる「偉い人」が集まってくるのだ。いわばこの運動会で将来を決めるといっても過言ではないほど、世界的に注目されている運動会なのだ。


「この時間を使って、皆さんには自分が出場する種目を一つ決めてもらいたいと思います」


先生はそう言うと、黒板に向かって指をパチンと鳴らした。チョークが宙に浮き、ひとりでに黒板に文字を刻んでいく。すぐに黒板には大運動会で行われる個人競技の種目がずらりと書き並べられた。


「まずは個人競技から。出たい種目が決まった人から手をあげてください。先生が名前を黒板に書いていきます。一つの種目には一クラスから二人出場していただきます。人数が余ったり足りなくなった場合にはクラスのみんなで多数決をとってもらいます。では、はじめ!」


みんなもう出たい種目は決まっていたのか、先生の合図で多くの生徒が一斉に手をあげた。先生は順番に名前を呼び、彼らが言った種目の下に彼らの名前を書き込んでいく。


リオはフールを振り返る。


「なあ、お前はどうする?」


フールは黒板に書いてある種目を見て、どうしたものかね と困ったように言った。


「『精霊&悪魔対決』ってのがあるだろ?あれ、俺の火魔ファイアーデビルだとちょっと弱い気がしてさ。かといって、『魔力量対決』も自信がない。ただの体力勝負なら負けない自信があるんだけどなあ…。なんたって『魔法大運動会』だからなあ…。どうやったって魔法が絡むんだよな。まいったよ」


弱気なフールを意外だと思った。リリアンもどうやら同じく思ったようで、フールを面白いものでも見るような目で見た。


「あら、あなたにしては弱気じゃない。自慢の炎はどうしたの?」


「おまえなあ、確かに俺は炎魔法が得意だけど、そんなのこの学校にくさるほどいらぁ。お嬢はエルフだから『精霊対決』にでも出るつもりなんだろ?リオは何に出ても強そうだし…」


確かに、強力な精霊を呼び出せるリリアンは『精霊対決』に出場すればまず間違いないだろう。リオはもうB組というレベルでない人物だということはクラス中が承知だ。フールの言うとおり、何に出てもA組にもへたすりゃS組にも立ち向かえるだろう。

そう考えると、フールが落ち込むのも理解できる。パートナーの二人がここまですごいと、いくらB組の中では割と強い炎魔法の使い手であるフールといっても、落ち込むのは無理ない。


「…まあそういわずに、お前は『悪魔対決』に出場しろよ」


リオがとんでもないことを言ったものだから、フールは はあ? とリオを見上げた。しかしリオはなにやら含むところがあるようで、得意げな笑みを浮かべていた。それを見たフールは仕方なく手をあげて、『悪魔対決』と言った。


「何か考えがあるんだな?」


「ああ、まかしとけ!」


リリアンはフールの言ったとおり、『精霊対決』に出場するようだ。肝心のリオは、まだ手をあげていなかった。正直、何でも良かったのだ。


「…リオ君は何に出ますか?」


もうクラスのほとんどの生徒の名前が黒板に書かれてしまったとき、先生がリオを振り返った。みんなも気になっていたのか、リオをちらちら見ていた。


「そうですね…。何でもいいんですけど…今残っているのは何の種目ですか?」


先生が確認すると、今現在残っている種目はあと一人のものも含めて『悪魔対決』『精霊対決』『変身対決』『下剋上』『魔力量対決』『500m魔走』『魔法障害物競走』の7つだった。


「ふーん…。じゃ、全部で。」


先生は はい分かりました と機械的に返事をし、黒板に向かってから固まった。


「ぜ、全部?7つ全部ってことですか、リオ君?」


ゆっくりと振り向きながら問いかける先生に、何か問題でも? という表情をわざと作って頷く。個人競技は、一人何個にでも出ていい。が、大抵2~3個だ。多くても4つがせいぜいだ。リオのように5つ以上も出場するという生徒は、他に例がなかった。


「自分の魔力量をちゃんと考えていますか?『魔力量対決』もあるのですよ?」


「大丈夫ですって。たとえS組の奴と競うことになっても、俺が負けることはないと思いますよ。『下剋上』でも俺が圧勝して見せます」


打倒S組を軽く言ってのけたリオを、先生も生徒も信じられないものを見る目つきで見る。そりゃそうだ。『下剋上』なんて競技は名前だけで、本当の目的はS組やA組の生徒がいかに普通の生徒よりも優れているかを売り込むために学校が仕組んだ競技なのだから。


「俺はね、やって見せるといったらやりますよ。学校側の事情なんて知ったこっちゃありません。『下剋上』ってついてるくらいですから、もちろん参加するA、S組の生徒も底辺のB組の生徒に負けないつもりで来てくれるんでしょう?ねえ、先生?」


学校を、さらにA、S組をさらっと馬鹿にして言ってやると、先生は呆れた顔をしてリオを見た。


「こんなことを言うのはあれですけど、B組のあなたがA、S組の生徒に勝てるわけないでしょう。でも、あなたがそこまで言うのなら、やれるところまでやってみなさい。負けて、世の中の広さを知りなさい」


「言ってくれますね。勝ちますよ、俺は」


先生は呆れながらリオの名前を黒板に書き込むと、溜息を吐いて再びリオを見た。


「A、S組の生徒にそのように喧嘩を売って大怪我をしても、先生は責任を取れませんよ?A組の生徒ならまだしも、S組の生徒が集団で怒ったら、流石に先生方では止められませんからね」


「怪我なんてしませんよ。逆に俺が怪我をさせても、先生の責任にはならないんですよね?」


「なりませんが、冗談もほどほどにしておきなさいね。はい、今日はここまでです」


先生は俺を馬鹿な生徒だと思ったことだろう。頭を振りながら見放したように教室を出て行った。

数秒の沈黙。しかしすぐにリオの周りには人の壁が出来上がった。


「お前、マジでやるのか?」


「先生にあんなこと言って、大丈夫かよ」


「お前ならやれそうな気がするよ。頑張れ!」


かけられる声は様々だが、先生のように『絶対に無理だ』というやつはいなかった。そのことがみんなに認められているようで、リオは妙に嬉しく感じた。




     「やってやるさ」




そんなみんなに向かってリオは力強く頷いて見せた。


運動会まで書くのが楽しみです!

次回は集団競技を決めます。


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