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教室脱出!

学園ですでに目立ってきたリオですが、いよいよクロウになります。

「召喚符を破るとその子達は消えますよ~」


 先生はフェンリルを一撫でしてから満足そうに鼻歌を歌いながら教室を出て行った。休み時間の始まりだ。リオはみんなが自分の召喚した悪魔やら魔物やら精霊やらを持って自分の方に来るのを溜息をはいて見ていた。

 ちなみに、今日は新入生はこれで終わりだ。3時限目までしか授業はないのだ。


「すぐにでも帰りたいところだけど…」


もう机の周りを固められた状態を見て、無理だな と肩を落とす。


 案の定、もう恒例行事のようになった質問の嵐が飛んでくる。それに適当に答えていると、人垣の中から腕が伸びてきて、リオの制服がついと引っ張られた。首をひねってそちらを見ると、フールが教室の出口を指差し、それからフェンリルを指差した。そしてもう一度教室の出口を指差すと、いいか? というように首を傾げた。

 フールが何を指し示しているのかを瞬時に理解して頷くと、フェンリルに念話を送った。


『ヴェル、この場から逃げるぞ』


リオにヴェルと名づけられているフェンリルも、どうやらこの騒がしさに嫌気が刺していたようだ。二つ返事で了解した。

 それを確認してから、リオはあれこれと質問を続けているクラスメイト達に向かって制するように両手を挙げた。するとみんなピタッと質問を止め、訝しげにリオを見る。

リオはニヤッと笑うとヴェルの背に飛び乗り、人垣を飛び越えてリリアンとフールを回収し、教室を飛び出してフールが開けておいてくれた廊下の窓から外へと飛び出した。後ろを振り返ると、あちこちの窓からこちらを見ている人が見える。


「すっげーな!リオ!」


「脱出方法が大胆ね!」


フールもリリアンもまだ召喚符は破いていないようで、火魔ファイアーデビルとシェーシャはそれぞれの肩にいた。水精霊ウォーターマンは返したようだが。

ヴェルが地面に軟着陸した。衝撃はヴェルが全て影に逃がしたため、乗っている3人には全く衝撃が来ない。


主殿あるじどの、これからどこに行くので?』


「そうだな…。フールとリリアンを寮まで送って、あとは家に帰るとするよ」


『承知した』


ヴェルがものすごい勢いで学園の敷地を駆け抜ける。瞬く間に寮に着いてしまった。フールもリリアンも、フェンリルがこんなに速いとは思わなかったと大興奮だった。寮の中に入っていく二人を見送ると、リオはヴェルと二人で寮の日陰になっている部分へ歩いていった。


「ここらでいいだろう。ヴェル、頼んだよ」


ヴェルは頷き、魔力を足元の影になじませる。影はどんどん濃くなり、リオとヴェルの足元には底の見えない穴が空いているかのようになった。リオは影の具合を確かめると頷き、指をパチンと鳴らした。

すると、リオとヴェルの姿はその真っ黒な影に吸い込まれるように消えた。


 その様子を運悪くそこを通りがかった一人の生徒に見られてしまったことを、リオは知らない。





 + + + + +





「はぁ~、つっかれた~!ヴェルもお疲れ」


 ヴェルの頭を撫でてやると、気持ちよさそうに目を閉じた。時計を確認して予告までの時間を計算し、少し眠ることにした。


 ヴェルのあの魔法は便利だ。影と影をつないで移動することができる。特に夜は先程のように魔力を足場に溜めなくてもすぐに移動できる。あの魔法を使ってすぐに家に帰ってこられるように、この家には一つの真っ暗な小部屋を用意してある。先程もその部屋に移動してきたのだ。


『では主殿あるじどの、我はこれで』


ヴェルはリオにペコリと頭を下げると、先程出てきた真っ暗な部屋に入っていった。あそこから魔界に帰ったのだろう。


リオはググッと伸びるとベッドに倒れこみ、眠りに落ちた。


 予告の時間まで、あと11時間。





 + + + + +





 5時きっかりに目を覚ましたリオは大きなあくびをしてから私服に着替え、買い物籠をもって市場へ向かった。昼を食べていないからお腹が減ってなんでもかんでもおいしそうに見える。買い物リストを確認しつつ、誘惑に負けないように夕食の材料を買い込んだ。最後の最後にやっぱり我慢しきれずに肉まんを一つ買ってそれを食べながら家に帰った。


「さって!」


 12時まではまだかなりある。先に夕食を済ませてしまおうと、さっそく買ってきた材料を手に取り料理を始めた。一人暮らしが長いリオにとっては、料理は当たり前にできることで、今ではいろんなバリエーションも増えた。


「今日はクリームシチュー♪」


鼻歌交じりに手際よく調理をしているリオを見て、誰もこの白い彼が真っ黒い怪盗クロウだとは露ほども思わないだろう。


 予告の時間まで、あと5時間。





 + + + + +





 できあがったクリームシチューを食べ終えて片付けも済ませると、あと4時間。


「さて…どうしようか…。下見はもう行ったしな~」


そうは言いつつも、装束に着替え始めている。仮面を付けて、腕を組む。


「あ~。どうしようかな~」


仮面をつけたクロウがこんな風に話している場面を聞いたことがある者は一人としていない。

時計を確認すると、まだ3時間以上もある。考えた末、結局速めに現場に行くという結論に。外ももう真っ暗だったため、クロウは思いっきりジャンプして屋根をすり抜け、夜の空へ黒い翼を出して飛び上がった。


 予告された定石店の前には以前の美術館同様、3時間も前だというのに大勢の人でごった返していた。泥棒がここまで人気が有るという話も珍しいものだ。クロウが他の泥棒と違うところは、


 ①予告状を出して堂々と盗む

 ②手口が鮮やか

 ③どんなセキュリティも難なく突破

 ④年齢も声も顔も分からないミステリアスな存在

 ⑤魔法がパネェ

 ⑥観衆には紳士的


特に①と④と⑥が人気の秘訣と言えるだろうか。盗みを成功させるたびにファンは増えていった。クロウ自身、それを喜んでいた。


「さて、今日はどうやって盗んでやろうかな…」


仮面の下で舌なめずりをして目的地へと向かう。


クリームシチュー食べてるリオってなんか可愛い…。

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