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2時限目

リオはなんとかクラスの人に気に入られたようですね。

さて、次の授業は?

 一時間目が終わって十分間の休み時間。リオの周りには人だかりができていた。何故と言うまでもなく、先程の自己紹介でクラス中の注目を集めたのは本人の予期せずしてリオだったからだ。

 リオ本人としてはクラスの人に遠ざけられるのは嫌だったため、なるべく自分は明るくてユーモアがあるんだってことを示したかっただけなのだが、制服も白、髪も白、おまけにオッドアイという面白い外見も手伝って、なんだかんだで一番目立ってしまったのだ。


「なあなあ、リオ、目見せて!」


「おぉ、マジでオッドアイだ。俺初めて見た!」


「しっかし白いな、お前」


この通り、皆リオの容姿が珍しいのだ。


「両親もこういう色してるのか?」


必ず、この質問をされる。だからリオの答えはいつも決まっていた。


「ひ・み・つ♥」


すると大抵皆残念そうに ぇえ~ と言う。今回もやはりそう言って、少し食い下がるも、言葉をうまく使ってかわすと、すぐに諦めてくれた。


(…だって俺の両親は…。これを言うと絶対皆俺を遠ざけるからな…。言うわけにはいかない)




「はーい席について~。時間だぞ~」


 眠そうな男の先生が手をたたきながら教室に入ってきた。2時間目の始まりだ。

この時間は魔法の見せ合いをするという。先程の自己紹介で紹介した自分の得意魔法を披露していくのだという。


「じゃあ…出席番号一番からいこうか」


廊下側の席にいる女の子が はい と返事をして立ち上がり、右手を頭の上にかざした。そして詠唱をぶつぶつと唱え、「我に光を 『フラッシュ』!」と叫ぶと共に、教室中が彼女の右手から放たれる光で目が痛いほどに光った。リオはとっさに心の中で(『防御シールド』)と唱え、対象を自身の目にしぼって光を防いだ。

 しかし、こんな真似が出来るのはこのB組ではエルフのリリアンとリオと先生だけで、他の生徒はものの見事に目を潰されていた。


「うっわぁ~…何にも見えない」


「チカチカする…」


魔法を唱えた女の子はそんな皆を見て得意げに鼻を鳴らした。


(性格悪いな…)


リオは光魔法が得意な彼女を見て苦笑いした。先生がすばやく回復魔法をクラス中にかけたため、皆の目はすぐに回復した。


「最初から厄介な魔法が出たな。じゃ、次…」


こうして、自己紹介のときと同じように次々と魔法は披露されて、リリアンの番になった。

 彼女は いきます と言うと、詠唱を始める。詠唱が進むに連れて、彼女の周りに水滴が浮かんでいく。目をパチッと開き、「我が血族の名の下にここに来たれ 『水精霊ウォーターマン』!」と言った。

 次の瞬間、彼女の目の前に水滴が一瞬にして集まり、手のひらサイズの小さな水の精霊が現れた。


「これは…召喚ですか。いや、すばらしい。エルフの召喚魔法を見られるなんて、皆さんラッキーですよ」


先生も眠そうだった目を見開いて感心したように水精霊ウォーターマンを見る。生徒達も先生の言葉を受け、珍しそうにリリアンの肩に座った水精霊ウォーターマンを見つめる。


『ご、ごごご主人様、ここは?』


水精霊が言葉を発したことに、リオを除いて皆驚いた。


「ウーちゃん、ここは学校よ。授業の一環でちょっと呼び出させてもらっちゃったけど、何かまずかった?」


『いいえ、見慣れない場所と人に戸惑っただけです。…おや…?あなたは…』


水精霊ウォーターマンがふとリオのほうを向いて何かを言おうとしたのを察して、リオはとっさに彼女(彼?)の口元を魔法で封じた。それによって彼女(彼?)はリオの考えを察したのか、頷いておとなしくなった。


 リオはまさかリリアンが水精霊ウォーターマンを召喚するなんて思ってもいなかったため、外側はなんともない風をよそおっていたが、内心はあせりまくっていた。思わぬ伏兵によって、先程の休み時間の努力が水の泡になるところだった。


「珍しいものも見れたし、あといっかって思うんだけど…?」


先生が適当なことを言ってフールを見る。


「冗談じゃないっすよ、先生。俺は目立ちたいんです!」


ニッと笑って言うが、そう言ったことによってフールのハードルがかなり上がることに彼は気付いているのだろうか?


「冗談だ。さ、次はフールだ」


先生もニッと笑って言った。フールは待ってましたとばかり立ち上がり、「よっし!」と気合を入れると、詠唱を始めた。こぶし大の火の玉が彼の周りに次々と現れ、30個を数えたときに彼は右手を先生に向かって振り下ろした。火の玉は眠そうな先生に向かって勢いよく飛んでいく。所々から悲鳴が上がった。

 しかし当の本人は依然眠そうな顔をして、動作を起こさない。火の玉は全弾命中…したかのように思われたが、煙の中から出てきたのは無傷の先生だった。フールはかなり驚いたようで、ぇええええ!!? と素っ頓狂な声を上げた。

 先生はというと、フールの反応を見て得意げに笑った。


「はっはっは。どうだ。眠そうな先生だからってなめんなよ」


しかし皆はそんなことよりも何故先生が無傷なのかを聞きたいらしく、で? という顔をして見ている。


「…まあ、なんだ。お前は炎系の魔法が得意だと聞いていたから、お前が詠唱を始めたときに俺はもう水の幕を身体に張ってたんだ。そしたら予想通り、お前は俺に向かって炎をぶち込んできたってわけだ」


リオを除いて、皆感心したように先生を見る。リオにはそんなことは分かりきっていることだった。見えていたのだから。フールが詠唱を始めた途端先生の身体に魔力が巻きついたのを。


「さて、じゃあお次はそこの不思議君…リオ君の番だね」


リオがスッと立ち上がると、自己紹介のとき同様、クラス中が興味津々といった様子でリオを見た。


「俺は闇魔法が得意だって言ったよな?」


言うと、皆頷いた。先生も「闇魔法を使えるのはかなり珍しいことだ」と言ってリオを注目した。それを確認したリオはニヤッと笑い、右手を高く上げてパチンと指を鳴らす。

 その瞬間、先生を含めたクラス全員の目が虚ろになった。リオはそれを確認すると、「立て」と一言。すると全員が一斉にその言葉に従って立ち上がった。


「後ろに下がれ」


全員が教室の後ろに移動する。


「一人ずつ、俺が指示する言葉を順番に黒板に書いていけ」


そう言って、一人ずつ名前を呼んで言葉を伝え、全て書き終えた後にもう一度指をパチンと鳴らすと皆の顔がハッとなって元に戻る。そして何故自分達が教室の後ろにいるのかと首を傾げた。しかし、先生だけは額に手を当て、「やられた」と言った。


「皆、黒板を見て」


黒板を見た皆の反応は実に面白かった。黒板には一人一人の字で自分の名前と、その後ろに『操り成功』と書かれていた。


「え、こんなのいつ書いたんだ!?」


「俺の字だ…」


「おい、先生のもあるぞ」


皆驚き、戸惑い、説明を求めるようにリオと先生を見た。先生はやれやれといった顔でリオを見て、「説明してもらえるかな」と言うと、リオは頷く。


「皆俺が詠唱してるのを聞いていなかったと思うけど、それは俺がこの授業が始まってから心の中でずっと詠唱してたから。先生に名前を呼ばれたときにはもう準備はできてたのさ。で、指を鳴らす。その瞬間この教室は俺にのっとられた状態になった。映像も撮ってあるから見るか?」


 リオは指をパチンと鳴らすと、黒板の前に魔法のスクリーンを出現させた。この映像はリオの目で見たものを映し出すものだ。


「まったく、君は準備が良すぎるね。本当にB組の人間かい?」


先生がもはや呆れ口調で言った。リオは まあね と言うと、映像を再生させた。もちろんそこには先程の様子が流れ、皆自分の姿が映ると ホントに操られてる… と驚きを露わにした。先生がリオの命令どおりに動いているところが写されたときには、すげー とよく分からない声があがった。


「…とまあ、こんな感じです。どうも、失礼しました」


リオが皆を勝手に操ったことを詫びるつもりで頭を下げると、拍手が起こった。


「すっげ!」


「先生も操っちゃうなんて!」


皆の反応に少し驚きつつも、ありがとう と言って笑顔で座った。

その後も魔法お披露目は続いたが、リオの魔法ほど驚くものはなかった。



2時限目、終了。

先生も操っちゃうリオ。

この魔法、怪盗にも使えないですかね…。


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