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最初の授業は

いよいよ本格的な学園生活が始まります!

 校門が見えるところまで歩いてくると、リオ自身は結構早い時間に家を出たと思ったのだが、すでに多くの生徒が登校してきていて、自分のクラスを確認していた。大抵パートナーと一緒のクラスになるから不安はない。


 校門の内側に貼られている紙を見て、リオは『1-B』という文字を頭に留める。そして学園内に入り、所々(ところどころ)にある学園案内図を見ながら目的の教室へ向かった。

三階にある一年生の教室は、全部で5つだ。クラスの分け方は、入学式のときに学園内に入る時点で計測された魔力量によるもので、魔力量が多い順に S・A・B・C・D とクラス分けされることになっている。


 リオが配置されたB組は、いわば超平凡スーパーノーマルといったレベルのクラスだった。が、実際のリオの魔力量はそんなものではない。リオは魔力量が多すぎるあまり、魔力を普通に開放しているだけで周囲のものに何らかの影響を与えてしまうため、小さいときから魔力の制御の訓練を行い、今ではほぼ無意識的に魔力を抑えて生活しているのだ。

 だから、不意の魔力チェックでも並の魔力だと計測されてしまったのだった。本来ならばS以上の魔力の持ち主であるのに。



 そんなことはまだ新入生の誰も知らない。もちろんリオも。目的の教室の前にたどり着いたリオは扉の前で深呼吸をしてから扉を開けて中に入る。するとやはり、幾つもの舐めるような視線を感じた。それらの視線を痛いほど感じながら、リオは涼しい顔をして教卓の上にある席の位置を確認して、そこへ座る。座ってからも、好奇の目は刺さってくる。


 いやだなあ…と思っていると、後ろから肩を叩かれた。振り返るとフールがいた。


「おっはよう!リオ…だったよな?」


「お、おはよう。フール、後ろの席だったのか!」


 フールは嬉しそうに頷き、リオの隣の席はリリアンだと説明してくれた。彼女が隣の席であることにかなり喜んだが、肝心の彼女はまだ来ていないようだ。

 教室の入り口の方を見ていると、フールがまた肩を叩いてきた。


「なあなあ、今朝のニュース見たか?あの怪盗クロウが今度は今夜12時に俺ん家の近くにある宝石店に盗みに入るって予告状を出したんだぜ!!俺今日絶対見に行く!で、リオはどうする?」


 ああ、それか と、リオは頭の中で笑った。なんせその予告状を出したのは他でもない自分で、昨日の夜買い物に行ったついでにその宝石店の裏のポストに忍ばせておいたものなのだから。だからもちろん盗みに行く本人が観衆の側になることはないわけで。


「ごめん、今日は大事な用事があるんだ。またの機会にな」


フールは至極残念そうな顔をしたが、すぐにニコッと笑って


「じゃあ俺が怪盗クロウの写真をバッチリおさえて明日見せてやるよ!」


と言った。フールは優しい奴だなと思い、若干のフールに対する罪悪感を抱きながら ありがとう と言うと、任せとけ と胸を張った。


「何の話?」


 急に頭の上から降ってきた声に驚いて、フールと一緒に うわっ!? と言ってから上を見ると、いつの間に来たのかリリアンが立っていた。


「お、おどかすなよ~。おはようさん、リリアン嬢!」


「ビックリした…。おはようリリアン」


「おはよう二人とも!…フールその呼び方止めてくれる?」


リリアンはフールが考えた呼び方はお気に召さなかったようだ。


「で、なんの話をしてたの?」


リリアンが問うと、フールは途端に目を輝かせてリリアンにずいと近寄って言った。


「よくぞ聞いてくれました!!リリアンも見ただろ!?今朝のニュース!」


リリアンは一瞬 何のこと? と首を傾げたが、すぐに思い出したような顔になって頷いた。


「ええ、見たわ。あれでしょ?怪盗クロウ様の予告状」


「そうそれ!…って、クロウ様?」


リリアンはしまったという顔になって、みるみる顔を赤らめた。


「リリアン、もしかして大のクロウファン…?」


林檎さながらに顔を紅くしたリリアンは、手で顔を覆いながらコクンと頷いた。

 

まじか…と内心でガッツポーズをとっているのは言うまでもなくリオだった。


(怪盗やってて良かった~♪ …ん?でもリリアンが好きなのは黒ずくめで仮面をつけている誰だかわからない俺であって、今ここにいる真っ白な俺ではなくて…。…んん?)


 やや一人で混乱しているリオをよそに、フールはリリアンがクロウ好きと聞いてここぞとばかりにリリアンに近寄る。


「なあなあなあ!その予告状が出された宝石店、俺ん家のすぐ近くなんだけどさ!今日一緒にクロウを見に行かない!?」


「ちょ、近いわよ!…でも、その申し出はありがたく受けさせてもらうわ。リオは来ないの?」


 リリアンがリオを見るが、リオはまだ考え事をしていて全く話を聞いていなかった。それを見たフールは、リオは来れないよと伝えると、そう と少し残念そうな顔をした。


 ちょうどそのとき教室に先生が入って来て、「はーい席について~」と言った。





 + + + + +





「はい、じゃあまずは自己紹介から!」


ノリのいい男子生徒が ピュィィィイイイイ! と指笛を吹く。微笑が起こる。


「いいねぇ。じゃ、先生から行きまーす!」


 まだ30代前半くらいの若い女の先生がその指笛のテンションを気に入ったらしく、彼女自身も少しテンション高めで自己紹介を始めた。


「私の名前はルーシー=エルメル!ルーシー先生って呼んでくださいね♪見ての通り、ただの人間。得意な魔法は幻想魔法よ。これからよろしくお願いしまーす!」


 そう言ってお辞儀をしたルーシー先生に、生徒一同が拍手した。その後、次々に生徒の自己紹介が始まる。リリアンの番が来た。


「私の名前はリリアン=スターレイン。見ての通りエルフよ。得意な魔法は水属性の魔法。よろしく頼むわ」


少しツンツンした話し方だが、クラス中の男子はリリアンのその美しい容姿に見とれてそんなことは気にしていなかった。魔力が多い人間は普通美形なのだが、エルフはもともと身体に大量の魔力を持っている種族で、美形が多いのだ。だからエルフであるリリアンがこのB組にいるのは先生側からすると違和感があった。


次はフールだ。


「俺はフール=フェストブル!THE☆凡人とは俺様のことだ!!得意魔法は炎属性の魔法だ。よろしくな!」


 彼の自己紹介にクラス中が笑った。彼を知っているものもいたらしく、よっ凡人フール! と合いの手を入れる生徒もいた。


 よりにもよって、フールのあとにリオの自己紹介が待っていた。グループごとに自己紹介しているから仕方ないのだが、こんなことなら最初にしておくんだったと若干の後悔をしているリオだった。

 やれやれと思って立ち上がると、クラス中の興味が一気に自分に集まるのが分かった。ここはもう、覚悟を決めるしかなさそうだ。


「…俺の名前はリオ=クロウディア。いいか、男だ。たまに女に間違われるが、ちゃんと下も付いてるからな!そんでもって、隠してもしょうがないから言うが、俺のこの金色の方の目には魔力が見える。髪の色は生まれつきだ。気にするな。得意魔法は闇魔法。白いのに?とか言うなよ。ってなわけで、これからよろしく」


 まだまだ隠している事は幾つもあるが、それは言えない。まさか、怪盗ですなんて口が裂けても言えない。

 一気に言い終えると、しばらくみんなポカーンとしてリオを見ていたが、一斉に拍手が起こった。


「はははっ!お前最高!スマン、最初見たとき女だと思った」


「魔力見えんの!?すっげ!」


「面白い奴だな!」


「名前も女みたいだし、俺勘違いしてたわ。わりぃ」


 四方からリオを認めた声が響くのを、リオはホッとした気持ちで聞いた。こういうのは、最初が肝心なのだ。変な格好をしている上に暗い奴だと思われたが最後、クラスでの居場所は減る。


「ねぇねぇ、リオ君かっこよくない?」


「それあたしも思った!ってか一回女装させてみたい!」


「やばいって!絶対似合うって!」


方や女子からはあまりありがたくない声も聞こえてきた。


 フールを見ると、女子の会話を聞いたのか今にも吹き出しそうな顔をしてぷるぷる震えながらリオを見ていた。



 その後も自己紹介は続き、1時間目は終わった。




やっぱりリオは女の子に見られるみたいです。

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