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表と裏

入学したリオですが、友達できるかな?

 リオの自己紹介に対してフールと名乗った彼は、舐めるようにリオを見たことを謝り、人懐こい笑みをリオに見せた。

 こいつとはうまくやれそうだと思っていると、もうひとりがやってきた。…女子キター!!!リオとフールは二人して思わずテーブルの下でガッツポーズをとった。


 彼女はリオとフールを交互に(やはりリオのことは二度して)見ると、残っている席へ腰かけ、ふわりと微笑んで挨拶した。


「はじめまして。リリアンっていいます。見ての通り、エルフよ。これからよろしくね!」


 自身の紹介どおり、彼女の耳はエルフのそれで、人よりは長かった。そして…美人だ!!リオとフールもそれぞれ簡単な自己紹介をした。

 その後はお互いの誕生日やら好きな食べ物やら異性のタイプやらと、ありきたりな情報交換をした。


 しばらくすると大広間の中も人でいっぱいになり、騒がしくなってきた。うるさいなと思い始めたころ、コンコンという音が前方にあるステージから聞こえてきて、大広間の皆がそちらに注目したことでざわめきは収まった。


 見ると、初老の、しかし顔つきはまだまだ険しい男性がステージに立っていた。おそらくあの人がここの園長だろうなと思って見ていると、彼の口元に淡いクリーム色の光が飛んでいった。この光はこの世界でのマイクのようなものだ。

 彼は大きく息を吸って、一言。


「進入生徒諸君、我がフィオーネ学園にようこそ!!これから新しい仲間と共に、この学園での生活を楽しんでもらいたい!!以上!」


 彼はそれだけ言うとステージから降壇した。一拍遅れて拍手が起こる。

 リオたちは「面白い人だな」と言って三人でこれからの学園生活に期待を膨らませていた。司会らしき人が紹介したのを聞くと、やあり先程の男性はここの学園長で、グランシスという名前だそうだ。


「生徒会長、お願いします!」


 次にステージに現れたのはいかにもという感じの、メガネをかけたややイケメンの生徒会長だ。


「僕らフィオーネ生徒は、君たち新入生が来るのを心待ちにしていた。不本意ながら学園長と同じことを言うことになるが、ようこそフィオーネ学園へ!勉学に励むのはもちろん、部活動なんかにも積極的に参加して、充実した学園生活をおくってほしい。分からないことがあれば先輩方にどんどん質問してくれ。この学園で君たちの思い出がたくさんできることを願っている」


 スティーヴンという名前の彼は、生徒会長らしい挨拶をしてステージから降壇した。途中、学園長から「スティーヴン君、そりゃないぜ」という声が聞こえてきて会場の笑いを誘ったことを含め、彼の話し方はとてもはきはきとしていてよく通る声をしていたために、とても好印象だった。くそ真面目そうに見えたが、あの様子だとどうやらユーモアのセンスも持っているようだ。


 二人の挨拶が終わると、司会から今座っている席の説明が始まった。その説明によるとどうやら席に座っている人同士はこれから三年間のパートナーになるんだそうだ。そこであちらこちらのテーブルから、改めて「よろしく」という声が聞こえてくる。もちろん、リオたちのグループも挨拶しなおした。


 次に寮の説明に入ったのだが、どうやら個人個人に部屋が与えられるらしい。リオには関係のないことだが、フィオーネは金持ちだな~と感じていた。この大広間も、実は天上にはシャンデリアがあって、内装もかなり豪華だ。


 その後は先輩達の魔法での歓迎会やら部活動紹介やらを披露され、目いっぱい楽しんだ後帰宅となった。とはいっても、ほとんどの生徒は寮に戻るだけなのだが。

 リオや数名の生徒がパートナーの人たちと別れの挨拶をかわし、帰宅した。






 + + + + +





 「楽しかった~」


 帰宅するなりボフッと布団に倒れこみ、明日から本格的にはじまる学園生活を思い描く。しばらくはそうして時間をつぶし、外が暗くなるのを待った。


 暗くなってからリオはいつもの装束を着て仮面をかぶり、もうほとんど人気のない夜の街へと飛び出した。この暗闇で空を見上げても、誰も怪盗クロウが飛んでいるのを見つけることはできない。

 彼のポケットには昨夜盗んだ絵画が入っている。何をしに町へ出たのかというと、もちろんこの盗品を売りに、だ。


 彼はいつも盗品を売っている路地裏のマンホールまでたどり着くと、マンホールの蓋の上に立ち、下へとすりぬけた。所謂いわゆる闇市と呼ばれる空間が広がっており、今日も金持ちや裏の人間がうじゃうじゃいた。

 彼が降り立ったのは立ち並ぶ闇市のとある店の裏。そこに、いつもの店主はいた。彼は左半分を火傷した顔を引きつらせて彼の前に降り立ったクロウを嬉しそうに見た。


「やあやあクロウさん。いつもありがとうよ。で、今日は何を持ってきてくれたんだ?」


 クロウは無言で手を開き、握っていた絵画を元の大きさに戻した。店主はその絵画を見ると顔をパアッと明るくして受け取った。


「おぉ!これはあの有名な『悪魔の涙』じゃねーか!!やっぱりうちに売りに来る奴の中でクロウさんが一番いい品を持ってくるなぁ」


 店主はその不気味な絵画に頬ずりして、クロウに金を渡した。トランクいっぱいに入った札束に確認魔法をかけて、全て本物であることを確認してから店主に向かって頷き、上へ飛び上がった。


 マンホールの蓋をすり抜け、そのまま空へ飛び上がる。仮面の下は満面の笑みだ。


「これで学園での金はしばらく大丈夫だな」


 一気に家までとばし、金の入ったトランクを小さくして棚の中にしまう。


 装束を脱いで仮面をとり、今度は小さな鞄を手にとって買い物に出かけた。


「…はあ…。ちょっとめんどくさいな…。夜ご飯何にしよっかな…」


 …誰も、怪盗クロウが買い物かごをぶら下げて夜の街を歩いているとは思わないだろう。

このとおり、リオは一人暮らしです。

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