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怪盗入学

どうも作者です。

まちまちの更新ですが、どうぞ。

 美術館の方からはまだ歓声が聞こえてくる。それを背中に聞きながら、クロウは夜の街の上を飛んでいた。

 おもむろに装束のポケットに手を入れると、中に入っている魔法で小さくなった絵画を確認する。そして仮面の下でにやりと笑う。


「あの警察の顔ったら!それにあの歓声!」


 美術館の中から出てきたときの警察の顔を思い出し、ククッと笑う。そうして、目的の建物の上まで来ると羽をしまい、美術館に入り込んだのと同じ要領でその建物の中に入った。

 そう、ここは怪盗クロウのアジト…という名の、彼の家だ。


 ベッドと机と椅子と台所。あとは小さな棚くらいしかない、なんとも殺風景な部屋。そこが、怪盗クロウの家だった。彼は部屋の真ん中に降り立つと、仮面を取り装束を脱いでたたみ、棚の上に置いた。

 クロウ…もとい、リオ=クロウディアという、どっちも名前のような姓名をもつ彼は、真っ白な、それこそ輝くような純白の短髪を揺らし、ベッドにごろんと横になった。そして右は青、左は金のオッドアイを開いて呟く。


「あー、面白かった。この仕事、ホント天職だな」


 起き上がり、小さくなった絵画を持って隣の部屋に入る。そこは、いわば宝物庫だった。彼が今まで盗んだ盗品が、所狭しと並んでいる。そして『絵画』というプレートが張ってある一角へ行くと、小さくなっていた絵画を元の大きさに戻し、そこへ置いた。


 リオは部屋の入り口まで戻ると部屋全体を見渡し、満足げに頷いた。

 自室に戻って再びベッドに横になり、そのまま眠りについた。





 + + + + +





 クロウにまんまとしてやられた警官達は、悔しそうに館内にかけた監視魔法を解いて回った。


「なんでクロウのヤローはこれに映らねーんだ?」


一人の警官が納得いかないといった様子で隣の同僚に声をかけた。


「さあな。そういう魔法をかけているとか?」


「そんな魔法、聞いたことねーよ。だいたい、そんな魔法があったら、世の悪人が乱用してるはずだろ?」


「クロウのことだ。一人でその魔法を開発したんだろ。あいつの実力ならやれないこともないな…」


二人は最後の監視魔法を解いて、長いため息をついた。






 + + + + +





 朝、目を覚ましたリオは白い制服に着替えた。

 彼の着た制服は、この町にある大きな学園、フィオーネ学園のものだ。この学園は数ある学園の中でもトップクラスのエリート学園である。16歳~18歳までが通う、つまりは高校のようなところだ。

 そして今日はその学園の入学式。彼、リオは、今日その学園に入学する一生徒なのだ。


「さってと、ぼちぼち行きますか」


鞄に必要なものを入れて、家の玄関の扉を開ける。


「ああリオちゃん、おはよう。今日からフィオーネ生徒だね、行ってらっしゃい」


やわらかい笑顔を向けて挨拶してくれた隣のおばちゃんにニッコリと微笑みかけ、「行ってきます」と応えた。

 このおばちゃんがリオをちゃん付けするのは、彼女が彼を小さいときから知っているから。小さいときはよく女の子に間違われていたのだが、おばちゃんの場合はそれがそのまま残ってしまったのだ。


 学園には寮もあるが、リオの場合家が近いために必要なかった。歩いて10分もすれば、フィオーネ学園の門が見えてくる。ここまで来ると、学園の周辺は人でいっぱいだった。多くの新入生は家族と共に来ているために、新入生の数よりもその親の数の方が多いように見られる。


 ところで、リオは正直人ごみが苦手だった。クロウのときはあんなに大勢を相手にしていたのに、だ。理由は簡単で、クロウのときは全身を黒い装束で覆い、さらに仮面をつけているために、誰か分からないからだ。クロウじゃないときは、この真っ白い髪と目の色で、皆好奇の目で自分をじろじろと舐めるように見るのだ。それが嫌だった。


「はあ…」


ため息を一つ吐いて、門へ向かって歩き出す。そしてやはり、多くの人が自分を見て、通り過ぎた後になにやらひそひそと話しているのが聞こえてくる。いつものことだから仕方がないといえばそうなのだが、ひそひそ話されることがどうにも苦手だった。


(もう慣れたけどさ…)


門をくぐり、学園内に入る。人の流れに従って建物の入り口へと歩いていき、中に入るとそこは大広間…のようだった。そこには丸い小さなテーブルが幾つも置いてあり、一つのテーブルには3つずつ席が備わっている。テーブルに番号がふってあるところを見ると、どうやら前日郵便受けに入っていた紙に書いてあった番号のテーブルに座ればいいらしい。


(俺は…6番か…)


見渡すと、入り口からそう遠くないところに6番のテーブルを見つけた。

そこにはすでに一人の青年が座っていた。

 そちらへ歩いていき、自分も席に着く。先に座っていた彼は俺を見て驚いたような顔をした。俺はそんなことは気にせず、話しかける。


「はじめまして。俺、リオっていうんだ。あんたは?」



学園ライフ&怪盗ライフの始まりです。

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