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精霊対決

大変長らくお待たせいたしました!

 リリアンが出場する精霊対決が始まった。

競技場にはいつの間にかそれ用のフィールドができており、中心に大きな魔法陣が描かれていた。どうやらあの中から外側にはどんな魔法も出ない仕組みになっているそうだ。安全策のためだろう。


「よし、頑張るわよ!」


リリアンが控え室を出るとき、B組の全員がリリアンの名前を唱えた。リリアンはそれを気恥ずかしそうに、しかし頼もしげに「行ってくるね、皆!」と返し、意気揚々と競技場へと歩いていった。


…精霊は誰を使うんだろう…気になるが、いろんな精霊が見れるから楽しみだな。

俺はワクワクして競技場を見ていた。






 + + + + +






 競技場に一歩入ると、ものすごい人の歓声が体にのしかかるようにして襲い掛かってきた。まるでプレッシャーがそのまま乗っかっているかのようなその重さに、一瞬圧倒されかけた。


ここまでとは思わなかったわ…。


リリアンは気持ちを奮い立たせて出場者が集まっている魔法陣の内側へと足を入れた。


選手が揃ったところで、実況者の生徒が声を上げる。


『さあさあお待ちかね!お次は精霊対決です!毎年感嘆が漏れるこの競技、今年は一体どんな精霊を目にすることができるのかー!?』


…なかなか上手い実況ね。


どうでもいいところに気が向いている自分に気付き、案外そこまで自分は緊張していないのではないかと思った。そんなことを考えていると、肩を叩かれた。


「はい?」


振り返ると、A組の生徒が腕を組んで立っていた。


「おいお前、B組のリリアンだろ?エルフのくせにB組にいるって事は、たいしたことないんだよな?」


にやにやと意地の悪い笑みを浮かべたその太った女は、リリアンを上から下まで舐めるように見ながらそう言った。これには腹を立てた。


「あら、お言葉ですけど、その体型では私に勝てないわよ?精霊を戦わせるよりも、貴方が転がった方がまだましなんじゃな~い?」


こちらも腕を組んで「フン」と思い切り馬鹿にした態度をとって、なにか言い返される前にひらひらと手を振ってその場から歩き去った。


その様子をモニターで見ていたB組は、大爆笑だった。リリアンならやってくれる、そう信じているからこうも陽気な気持ちでいられるのだ。



『さあ、最初の対決は~…、A組キート選手とS組ショー選手の対決です!張り切ってどうぞ!』


呼ばれた二人はフィールドの端と端に立った。


「我に応えよ、現れたまえ!」


「我が名の下に現れよ」


キートが、茶毛で背中にコケが生えたような姿をした狼の緑狼リーフウルフを、ショーが、全身美しい蒼色の毛で覆われている狐の姿をした蒼狐ブルーフォックスを召喚した。

各精霊はフィールド中央に走って行き、『はじめ!』の合図で一斉にお互いに飛び掛った。


召喚者はタイミングを見計らって魔法の指示を出している。


緑狼が蒼狐のわき腹に噛み付こうとすると、蒼狐は水弾を緑狼の口に放ち距離をとる。

今度は緑狼が地中から木の根や蔓を出して蒼狐を捕らえようとする。

蒼狐はそれらをすばやい身のこなしで全て避け、水で自身の分身を作って四方から緑狼を攻撃する。


数分それを繰り返した後、緑狼が飛び掛ってきた蒼狐の水分身を蔓ではじいた。そして学院周辺の木々から大量の木葉を集め、それを蒼狐本体の回りに包囲するようにしかけ、中央の獲物めがけて一斉に放った。


木葉がはらりと舞ったその下には、負傷して動けなくなった蒼狐が横たわっていた。


『決まったー!!!勝者、A組キート選手の緑狼!!!!』


緑狼は嬉しそうに跳ねるように主人の元に駆け寄り、その緑の美しい身体を擦り付けていた。

会場はその鳴き声に期待したが、遂に緑狼が鳴き声をあげることはなかった。




『さあさあ続いてまいりましょう!次は……



 そうして試合は進み、遂にリリアンの出番がきた。


『さて、お次はB組エルフのリリアン選手とA組ビム選手の対戦です!』


さて、私の対戦相手はどなたかしら?

位置について向かいを見ると、なんとそこにはあのからかってきたデブの女がいた。

青筋立ててこちらを見ているところからして、あの言葉がよほどきいたのね。


『両者準備は整いましたね?……はじめ!!!』


「いいわ、今度は貴方の精霊もコテンパンに、それこそ立てなくさせてあげるわ」


「ほざけB組が!」


数秒にらみ合った。


「来いラムリッシュ!」


ビムに呼ばれて出てきたのは灰色の毛を持った二足歩行の熊のような精霊。

犬歯が異様に長く、サーベルタイガーを思わせる。


「まあ、綺麗な岩熊ロックベアーなのに下品な召喚方法ね…。…我、ここに契約の証を示す」


指先に魔力をこめて空中に契約に応じた魔法陣を描く。

その魔法陣から飛び出すように現れたのは尾が二本ある真っ白い狐。


「フィンク、あんな岩熊やっつけちゃって」


『我に任せてくだされ、お嬢』


フィンク、いわゆる光狐ライトフォックスが魔法陣から飛び出したとき、観客席からは溜息のような感嘆が聞こえてきた。

人間の目では光狐の静止した姿はほぼ見れない。光狐が人間を嫌うからでもあるが、その目に止まらない速さで移動するからだ。そしてその生態もよくわかっていない。



「グォオオオオオオ!」


岩熊が地鳴りのような鳴き声を上げながらフィールドの中央に来た。

フィンクは一瞬のうちに中央に移動した。


『我は岩熊は苦手じゃ。精霊のくせに主人としっかりとした意思疎通が図れないなど、最低よの』


そう言い放つと、フィンクの全身は発光し始めた。


「…相変わらず高飛車なのね、フィンクは。意思疎通ができる精霊の方が少ないのよ?」


苦笑いを浮かべながら「熱攻撃!」と指示を出す。


フィンクはそれに頷くと、身体を発光させた状態で岩熊の回りをぐるぐる回った。

岩熊の周りに光の輪ができる。それがじりじりと円を縮め、高熱の光が岩熊の毛を焦がす。岩熊が攻撃しようとその輪の中に腕を振り下ろすも、全く当たっている気配がない。


ビムもいらいらし始めたようで、「何やってんだラムリッシュ!岩壁ロック!」


岩熊はその場で両腕を大きく振りかぶると、足元に向かって思い切り振り下ろした。

すると岩熊の足元からいくつもの岩の板が飛び出し、フィンクと岩熊を完全に遮断した。


そこでフィンクはいったん止まり、二本の尾をキュッとねじって先を尖らせた。

そして今度はその尾の先に熱を集め、尾の先が真っ赤になったと思った瞬間、目の前の岩板むけて尾を伸ばし、岩板ごと岩熊のわき腹を貫いた。


「グォオオアアアアアアア!!!」


『フン、のろまが喚きおって…。うるさいのぅ』


ところが、痛みで岩熊が叫んだと思ったら違ったようで、岩熊は腹に穴が空いた状態で起き上がり、怒り狂った様子で目を血走らせてフィンクを見た。


『こやつ、なかなか丈夫じゃな…』


岩熊がフィンクめがけて走り出す。フィンクはそれを見て再び攻撃態勢をとった。

が、岩熊は数メートル走ると急に足を止め、その場にバタリと倒れ伏した。


数秒の沈黙の後、


『…勝者、B組リリアン選手の光狐ライトフォックス!まさかの圧勝です!!今大会ははB組に驚かされますねぇ!』



もちろんB組の控え室も大騒ぎ。

光狐に見惚れ、ビムを負かしたことに喜びまくっていた。


「やべーなリリアン!やべーよ!」


フールはリリアンが映った画面を見ながらなにやら意味の分からないことを叫びながら喜んでいた。


「なあリオ?…リオ?」


フールが喜びを分かち合おうと後ろを振り返ると、そこにいるはずのリオの姿がなかった。



緑狼:主な生息地は森で、主食は苔や果物。聞いたものは幸せになれるという透き通るような鳴き声をしているが、その声は主人であってもなかなか聞けない。


蒼狐:水が綺麗な水の近くに生息しており、主食は川魚。水中でも息ができるように毛は水分中の酸素だけを吸収する特殊な構造になっている。


岩熊:火山など、草木が生えていない場所に生息する。主食は石や岩で、肉は食べない。しかしその性格はとても凶暴で、体内の魔力を全て力に還元して襲い掛かってくる。


光狐:森や林に生息する。主食は昆虫、小動物、果物など。非常に穏やかな気質だが移動速度がとても速く、通った後は白い筋が見えることからこの名前がついた。彼らの移動を目で確認できるのは動体視力がとてもいいエルフ族のみとされている。

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