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最初の競技

リリアンが得た大ニュースとは?

そして運動会…。

 屋上での出来事の後、リオとフールはこれからのことを話しつつ、教室へと戻っていた。教室のドアを開けると、リリアンがハッとなって席から立ち、そこからまさにひとっとびで二人の前に来た。


さ、流石はエルフ…。身体能力はそこらの人間とは違う…。なんて思っていると、俺とフールはそんなリリアンに同時に胸倉をつかまれた。


「「 ひっ!? 」」


短く悲鳴を上げると、リリアンはやっと我を取り戻したかのように慌てた様子でゴメンと小さく呟いて手を離すと、コホンと咳払いをした。


「あ、あのね、とにかく落ち着いて聞いてね」


うん、お前がな。と言う言葉は飲み込んだ。


「さっき、職員室で先生達が小声で話しているのを聞いちゃったんだけど!」


流石はエルフ。その耳は伊達じゃない。


「ちょっとリオ、ちゃんと聞いてる?」


微妙な態度に見られたのか、リリアンにほっぺをつねられた。


「ぃいででででで!聞いてる聞いてる!」


と、いうか、俺はもうだいたい見当がついているため聞かなくともいいわけだが…、ここでそんなことを言えばリリアンにひねり殺されそうだ。


「もぅ……で、それが大変な大ニュースだったのよ!」


普段大人しいリリアンが、こうも興奮してパートナーの二人に話している内容に、クラスの者や他クラスの者も気になったらしく、今や俺たちの周りにはちょっとした人だかりができていた。リリアンは全く気がついていない様子だが。


「だ、大ニュース?」


フールが問うと、リリアンは大真面目な顔で頷いた。


「なななんと!この学校宛にクロウ様の予告状が届いていたのだ!!!」


場はリリアンの叫び声の後静まり返った。だがそれも数秒。次の瞬間には割れんばかりの驚愕の叫び声がそこら一体に響き渡った。


「「「 ぇええええええええええええ!?!???!? 」」」


リリアンはその反応に満足げだ。フールは顎が外れるんじゃないかというほどに口を開けて呆けている。

一方俺は、一応驚いているふりをしてはいるが、ぶっちゃけ知っていた。そりゃそうだ。俺が出した予告状だもの。


「皆!それだけじゃないわ!クロウ様の犯行予告日は、運動会当日よ!」


直後のみんなの顔を見て、俺は吹き出さなかった自分を褒め称えたいと思う。美人さんもイケメン君もどうすればそんなに崩れる?と思うほどに、目を見開き口はパカッとアホみたく開き、眉はどこまで上げるというほどにあがっている。俺はあれらの顔を一生忘れないだろう。







 + + + + +







 その後の騒ぎは酷かった。噂は瞬く間に学園中に広まり、その騒ぎは収まるどころか運動会が近づくに連れてどんどん増幅した。


当日の今日…。皆口を開けば「クロウ」の単語が飛び出してきた。この学園の運動会は毎年世界中から注目を浴びるために、取材陣の数は多い…が、今年はその倍はいた。そして警備の物の数もハンパではなかった。学園中を警察が取り囲み、学園内部のどこを見ても警備のものがいた。


しかも、クロウが来ると知ってそのファンたちも学園に集まった。運動会当日の学園には、例年の数倍ほどの人が集まっていた。


「よくもまあこんだけ集まったもんだ」


リオが呟くと、両脇の二人は笑った。


「そりゃそうよ。なんたってクロウ様が来るんですもの!」


「まったくだ。逆にもっと集まってもいいくらいだぜ」


「お前らアホか?これ以上は学園に入らねーよ」


運動会を行う屋外の大きなドームのような観客席は、もういっぱいだった。魔法で空中に自分で席を作っている人もいるくらいで、これ以上入るのは不可能だ。だからすでに学園入り口には立ち入り禁止の結界が管理者によって張られている。


三人は生徒用の控え室に着くと、早速競技用のコスチュームに着替えた。控え室には大きなモニターがあり、ドーム内部を隅々まで見ることができる。取材陣は早い段階でかなりいい席を獲得していたらしく、現在は機材の準備をしていた。


「どれ、プログラムは…」



    【フィオーネ学園魔法大運動会プログラム】


     1、開会式

     2、競技開始

       ①魔力量対決

       ②500m魔走

       ③精霊対決

       ④悪魔対決

       ⑤玉入れ競争

        ~ 昼休み ~

       ⑥魔球転がし

       ⑦魔犬リレー

       ⑧変身対決

       ⑨魔法障害物競争

       ⑩下剋上

      3、特別競技 使い魔合戦

      4、成績発表

      5、閉会式



プログラムを見た生徒達は、様々な反応をした。


「うわ、午前に二つも入ってる」


「特別競技?え、使い魔合戦!?何それ!?」


「これ、リオ大丈夫なのか?最初に魔力量対決入ってるぞ?」


「当たり前だろ、魔力が満タンのときにやんなきゃ意味ねーじゃん」


俺が出るのは、①④⑧⑩だ。『精霊対決』と『500m魔走』はあの後俺の身を案じたクラスメイトが名乗り出たらしく、そいつが出場してくれるらしい。なんともありがたい話だ。必要なかったけどな。


「ま、あまり目立つのもよくないか…。あの時はムキになってたのかもしれないな」


俺が言った独り言を、リリアンはその聴力で聞き取ったようで、ずいっと俺に顔を寄せた。


「そうよリオ。だいたい代わってくれた子がいるったって、それでもあなた4つも出場するんじゃない。集団競技は一人最低一つには出なきゃない決まりだから仕方ないけど、もうちょっと何とかならなかったの?」


彼女の顔の前に手を突き出して「近い」と言うと、彼女はフンっとそっぽを向いた。「せっかく心配してやったのに」などとぶつぶつ呟いている。心配してくれるのはありがたいが、今からではもう何を言っても遅いのだ。決まってしまったことだから、今更この競技はやりませんなんて言えない。


「…俺はそんな無責任な男のつもりはないよ」


リリアンに向かってそう呟いたが、今度のは聞こえたかどうかはわからない。視線を感じてそちらを振り向くと、フールが少しは慣れたところから俺を心配そうに見ていた。よく見れば、フールだけではない。クラス中がちらちらと俺のほうを見てひそひそ話し合ったり、胸で手を組んでいたりしている。


(そんなに心配しなくたって、俺は魔力切れなんておこさねーよ)


そんなことを言えるはずもなく、控え室で運動会が始まるのをただただ待った。






 + + + + +





『生徒の皆さんは、控え室前の廊下に整列してください。間も無く生徒の入場が始まります』


控え室に放送が流れ、皆表情を引き締めて次々と控え室を出た。

ただの入場だというのに、緊張して深呼吸をするものや準備体操をするものは多い。まあ、各国の王や貴族までもが見に来るのだから、緊張するのも無理はないのかもしれない。いつもは落ち着いているリリアンも表情が硬い。フールは…ストレッチ中だった。


「…変なの」


思わず呟いた。だが、誰の耳にもその呟きは聞こえなかった。




『生徒が入場します!大きな拍手でお迎えください!』


その放送と共に競技場から軽快な音楽が流れた。とうとう大運動会の始まりだ。

クラス別に色分けされたマントを羽織り、皆綺麗に列を作って入場し始めた。Dクラスは緑、Cは茶、Bは藍、Aは紫、Sは黒という感じでされており、競技中はそれを腰に巻くため、どの子がどのレベルなのかを観客が一目で分かるようになっている。


競技場に入ると観客席はこれでもかというほど満席で、熱気もものすごい。


そうして無事開会式を終えると、いよいよ『魔力量対決』の始まりだ。選手以外は再び控え室に戻って、その様子を観察する。例年通りであれば観客席に生徒用の席を設けてあったのだが、今年はこの有様だ。教員たちが仕方なく控え室を用意したしだいであった。


「おいリオ、頑張れよ!」


「あんまり無理してぶっ倒れるなよ!」


「応援してるぜ!S組の奴らやっつけちまえ!」


応援してくれる者に「勝ってくる!」と返して、競技場の真ん中へ歩いていく。


 魔力量対決の対決方法は、いたってシンプルなものだ。出場する選手が魔力測量器の前に立ち、それに手をかざして自分の持ちうる限りの魔力をそこに叩き込む。そうして出た数値で勝ち負けを決めるのだ。魔力量が多ければ多いほど、魔法使いとしては優秀だ。より多くの魔法を使えるし、大魔法も使える可能性がある。だからこの競技で勝った生徒は一気に大人たちに注目される。

結果は一瞬で分かってしまうが、魔法使いの金の卵を見つけ出すにはもってこいの競技なのだ。もっとも、これはS,Aの生徒を学校が売りつけるためだけの競技で、初めから魔力量が少ないBクラス以降の勝ち目はないに等しい。


『選手は前へ!各測量器の前に来てください』


選手は一斉に測量器の前に立つ。ちなみに、この競技にC,Dクラスは参加できない。普通以下の生徒が参加してもなという学校の判断だ。Bクラスが参加できるのは、一般の魔法使いの魔力量と、A,Sクラスの魔力量との比較がほしいからだ。


(なんつーか…大人の世界は真っ黒だね)


やれやれと溜息をつく。そんな俺を見て、隣にいたAクラスの生徒はフンと鼻を鳴らした。そうして、俺をかなり見下した態度で言った。


「お前みたいなちんちくりんが、俺らA,Sクラスには絶対勝てねーのにな!可哀想に」


ははははっ!と笑った彼がなんだか酷く哀れに思えた。今から俺に負けるというのに…そんな強がっちゃって。


「可哀想なのはお前だよ。今のうちにうんと笑っておくといい」


彼の肩にポンと手を置き、哀れむ顔をした。彼は思ったとおり、青筋立てて怒った。


「この野郎!なんだその態度は!Bクラスのくせしてよぉ!何余裕ぶっこいてんだよ!」


「ま、お互い頑張ろうな~」


そんな彼にひらひらと手を振ってもとの位置に戻った。貴族や王までもが見ているこの場で、流石に暴力まではふるえないため、彼は怒りに震えて俺をキッと睨みつけていた。


「後悔させてやる!!」


「どうぞご自由に」


他の選手たちは俺を心配そうに見ている。BクラスがAクラスに喧嘩を売ったのだから、この反応は当然か。


『選手の準備が整いました。10秒後に開始します』


カウントダウンが始まった。


  『 10…9…8…7…6…5…4…3…2…1、…始め!!』


一斉に選手が全身に魔力を溜め始めた。俺はすでに魔力を送り始めていた。


そういや、Sクラスの魔力量ってどんくらいだろう?確か、この競技に関してはリミッターははずされているはずだけど…。


きょろきょろと周囲のSクラスの魔力値を見ると…10000MP前後。それを見た観客からは おお~ と感心の声があがっている。なるほどね、その程度・・か。


『9000MP!お!12000MPが出ました!』


「んじゃ…」


俺は自身にかけているリミッターを少しだけ解除した。それを測量器に向けて打ち出す。どうだ?と魔力値を見ると、25000MP。…ちょっとやりすぎた。これじゃあまりにも目立っちまう…。

他のBクラスの選手の値を見ると、5000MP。こんな20000MP越えの魔力など、Bクラスの生徒ではまず出すことはできない数値だ。しょっぱなからやっちまったと思い、がっくりと肩を落とした。


『おっと、Bクラスの選手、がっくりと肩を落としました!あまりの数値の差に心を折られたかー!!?』


心折られるのは俺じゃなくて多分Sクラスの人たちだろ。


『さて!数値が出揃いました!まずはSクラスから発表しましょう!』


自分の全魔力を使い切ったA,Sクラスの生徒達は、ぐたーっとその場にへたり込んだ。俺?俺は全然余裕で立ってますが。…あ、余計目立つか。とりあえずしゃがんでおいた。


『Sクラスの最高値は…16000MP!これはすごい!続いて15000MP,13000MPとなっております!』


数値が発表されると同時に、その選手にスポットライトが当たる。会場から歓声が上がった。メモをしている人もいる。


『さあAクラスの最高値は…11000MP!素晴らしい!Sクラスに劣りませんよ!続いて10000MP,9500MPとなっております!』


またも歓声が上がった。普通はここまでがこの競技の見所。Bクラスの数値を見ても極々普通の数値であるため、たいていこの後を真面目に聞くものはいない。競技中もBクラスの数値など見るものはいない。が、今回は違った。


『ではBクラスの最高値を紹介しま……え?』


アナウンサーの様子がおかしい。どうしたと会場がざわつく。


『し、失礼しました。え、と。Bクラスの最高値………(これ本当ですか?…はい。はい、分かりました)…えー、Bクラスの最高値………25000MP…です』


スポットライトが俺に当たる。場は静まり返る。が、次の瞬間、爆発したような声の塊があっちこっちから飛んできた。


「嘘だろ!?20000越え!?」


「Bクラスだろ!?2500の間違いじゃないのか!?」


「測量器壊れてるんじゃないか!?」


「おいどうなってる!」


学校の関係者はそんな観客の対応に慌てふためいた。


しばらくすると、ひとつの花火が打ち上げられた。それにより、騒ぎは止んだ。


『皆様、どうか落ち着いてください。調べましたところ、測量器は正常です。先程の数値は事実です』


会場は再び静まり返った。そして会場内の誰もが、俺を見ていた。



リオやっちまいました!


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