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リオとフールと悪魔

さて、今回はフールの悪魔対決についてです。

昼休み、屋上。


「なあリオ、『悪魔対決』に出場させて、どうする気だ?」


パンをほおばりながらフールは訝しげにリオに問いかけた。


「ん?ああ、言ったろ?考えがあるって」


「ったってよぉ…。俺に今呼び出せるのは火魔ファイヤーデビルしかいないんだぜ?」


知ってるよといいながらジュースを飲む。


「…まあ、放課後に話そうかと思ってたんだけど…いつ話しても同じか。策って言っても、そんなにたいそうなもんじゃない。簡単な話だよ。お前に火魔ファイヤーデビルよりも強い悪魔と契約してもらえばいいだけの話だ」


言い終えて、はむっとパンにかじりつく。フールはと言うと、一瞬何を言われたのかわからない顔をして、それからものすごい速さでリオを振り向いた。


「!??」


「…どした?」


フールが「コイツアタマオカシインジャナイカ?」という顔を向けてきたため、眉をひそめてそう聞いた。


「おまっ…どうしたもこうしたもねーよ!馬鹿じゃないのか?そんな強い悪魔とほいほい契約できるなら、世の中の召喚師は苦労しねーよ!」


「馬鹿」と言われてムッと来た俺は、フールからプイッと顔を背けた。


「馬鹿じゃねーよ。そんなに言うなら手ぇ貸してやんねー」


フールは「手貸すもなにも無理だろ」と呟きながら再びパンに戻った。

それを横目で見つつ、この野郎… と呟いてある悪魔を召喚した。


「汝、我の血の契約の元に来たれ…『地獄犬ヘルハウンド』!」


その名前を呼ぶと、リオの正面に大きな火柱が上がり、その炎が形を成して地獄犬ヘルハウンドが現れた。

これにはフールだけではなく、同じように屋上にいた者(数名)全員が目を丸くした。


「な、ななな…!?」


一番間近にいるフールは咥えていたパンを落とした。


 現れた地獄犬ヘルハウンドの大きさは、大型犬よりは二周りほど大きかった。真っ黒な艶々した毛が全身を覆い、骨でできた甲冑のようなものが身体を覆っている。背中には合計4本の長い突起があり、耳の近くには後ろに向かって角が生えている。そして、骨からは炎があがっており、近くにいるとかなり熱い。


『主殿、久々に呼び出されたと思えば、食事中ですか』


地獄犬ヘルハウンドはその場でお座りの体制をとり、リオに向かって話しかけた。


「ああ。今回はちょっとした仕事を頼みたくてね」


残っていたパンを一気に口に放り込み、ジュースで流した。

それから隣で腰を抜かしているフールの肩を叩く。


「今から一ヶ月間、こいつと契約してほしい」


地獄から来た黒い犬は、主に一瞬何を言われたのか分からなかったらしく、首を傾げた。


『……はぁ!?』


そう言ってしまってから、地獄犬ヘルハウンドはしまったというようにハッとなって、


『し、失礼しました。ですが主殿、恐れながら、私にはその人間の子供が私に契約の対価を払えるような人間には見えませぬ』


と、お座りから伏せの体制になって言った。


「そ、そうだよリオ!何考えてるんだ本当に!馬鹿か!?俺が地獄犬ヘルハウンドなんて大物と契約できるわけないじゃないか!…てか、お前どうやったらそんなに強力な魔物と契約できるんだよ!」


フールがそう叫んだ途端、地獄犬ヘルハウンドがフールの喉元に自身の鋭く尖ったダイヤよりも硬い爪の先を突きつけた。


『馬鹿…だと?主殿を侮辱したな?』


フールの喉がヒクッと鳴った。溜息をついてそれを制止する。


「レグル、やめろ」


『…はい』


リオが一言そう言うと、地獄犬ヘルハウンド、レグルは大人しくリオの元へ戻った。犬さながらに忠誠心の厚いこの悪魔は、主人を侮辱されたり傷つけられたりすることを極端に嫌う。


『頼むよ、こいつ俺の友達なんだ。一ヶ月の間だけだ。対価は俺が払う。それでいいだろ?』


レグルにだけ伝わるように念話を送る。レグルは犬さながらに クーン と困ったように鳴いた。


『…主殿がそこまで言うのであれば、やるしかありませんね。ただし、対価を主殿に払わせるわけには行きません。主殿には最初にもう対価をいただきました。この体が朽ちるまで、私は主殿の悪魔です。一か月分の対価ならば、この子供にもなんとか払えるでしょう』


レグルは念話を隠さずに話したため、フールはレグルが何を言っているのか分かっていない様子で、「えっ?えっ?」と混乱している。そんな彼にリオはフッと笑いかけ、彼の肩に手をおいた。レグルは不敵な笑みを浮かべてフールを見ている。

彼の知らぬ間に勝手に決まった契約の話だった。






 + + + + +






「こ、これから一ヶ月間、よろしく頼む…」


『任せておけ。我が主、まお……リ、リオ様の名にかけて、それでなくとも、そもそも私がそこらの悪魔に負けるはずもありませぬ』


屋上にはぐったりしているフールと、黒から毛先にかけて緋色のグラデーションがかかった短髪の長身ハンサムと、ハンサムが言いかけた言葉に途中ものすごい形相で睨みだしたリオと、その他見物人数名がいた。


「おいおい……冗談だろ?」


「あのリオって子、……確かBクラスよね?」


「ありえねぇ…。変身フォームチェンジだと…」


見物人が目を丸くしてこちらを見ていることに気付き、リオはやれやれと肩をすくめた。


「あ~あ…。俺これで先輩方にも目ぇつけられたっぽいな」


リオの面倒そうな顔を見て、短髪のハンサム…もとい変身フォームチェンジしたレグルは、申し訳ありません と頭を垂れた。リオは、自分よりも高い位置にあるその頭を撫でた。


「はははっ。お前が悪いんじゃない。契約のためには仕方なかったさ」


 見物人が驚くのも無理はない。変身フォームチェンジ…つまり人外の存在が人の姿に変化へんげすることができるのは、その相応の魔力や霊力を蓄えた高位のものだけ。

 さらに、無数にいる地獄犬ヘルハウンドの中でで変身フォームチェンジできる個体は、報告されているもので十頭だけ。つまり、今目の前にいるのが、その十頭のうちの一頭ということになるのだ。驚きもする。

 こうした特殊な悪魔や魔物、精霊については、この学校に通うものであれば皆一年時に習うもので、知らない方がおかしいというものだった。


「小僧…いや、フールといったか?見た目に反してなかなか旨かったぞ」


レグルは口の周りについた血を親指で拭い、その指を妖艶にペロリと舐めとった。


「は、はあ…」


悪魔の契約とは普通、血の契約のことを指す。血の契約とは、契約対象の悪魔に相応の量と質を兼ね備えた己の血と、悪魔が契約者を認めることで成り立つものだ。

だから高位の悪魔になるほど、契約しようとすればリスクが大きくなる。悪魔に認められなければ殺されることもあるのだ。腕や足を持って行かれた例は、まだいいほうだ。

そのために魔方陣を張るのだ。もちろん契約の成功率をあげるための役割が大きいのだが、失敗したときのことも考えての魔法陣だ。仮に失敗して悪魔が襲い掛かってきたとしても、魔方陣があれば悪魔を送り返すことができるのだ。


レグルはフールとニ、三簡単な言葉を交わすと、変身フォームチェンジを解いた。レグルがわざわざ変身フォームチェンジしていたのは、血をもらうときに地獄犬ヘルハウンドのままではフールは焼け死んでしまうからだった。

しかし、契約してしまえば悪魔は契約者にどんな攻撃も与えることができなくなる。だから灼熱の炎を纏っているレグルの頭をリオは普通に撫でることができるし、契約したフールもかなり近距離にいるにもかかわらず、熱さは感じていない。


『では、私はこれで帰らせていただきます』


レグルはリオに深々と頭を下げ、新しく主となったフールにもペコリと頭を下げて、火柱と共に消えた。


「…しかし、まずいものをまずい人たちに見られちゃったな~」


チラ、とまだ驚愕の表情を顔にはっつけている見物人を見やった。あれはおそらくAクラスの先輩だ。


「な、なあリオ」


フールが震える声でリオを呼んだ。振り向くと、どうやら感激のあまりに震えていたらしい。


「俺、あんな高位の悪魔と契約できると思ってなかった!こんな日が来るなんて!ありがとう、ありがとう!」


リオの手を両手でしっかりと握って上下にぶんぶん振った。ちょっと痛いと思ったが、フールが嬉しそうなため、まあいいか と笑った。






 + + + + +





 そのころリリアンは…。


「リオー!フールー!大ニュースよーーー!!!」


リリアンに何も告げずに屋上へ行ってしまった二人を、必死に、しかし嬉しそうな顔で学校中を探し回っていた。




大変遅くなりました。すみません;


お気に入り、評価、ありがとうございます!

じわじわ増えていくのを見て、嬉しい限りです!

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