表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
高い城の男  作者: 白乾兒
4/7

4話 地政学

避難所で夕食を終えた俺は、

食堂のテレビでニュースを見ていた。


俺の免許証にある住所は、

原発から半径三十キロ圏内。


避難勧告地域に含まれている。


ここにいる連中も、だいたい似たような境遇だ。


もっとも、この避難所は

一年限定で開設されている施設らしい。


つまり――


俺がここにいるのも、長くて高校卒業までだろう。

それにしても二度目の人生を異世界でとは、

ようやく頭の整理が出来て来た頃だ。


 

そして、この二か月で

俺はこの世界と元の世界の地政学的な違いを

かなり知ることになった。


向こうの世界では、

世界は大きく四つのブロックに分かれていた。


白人諸国を中心とする

アメリカ・欧州・オーストラリアの白人ブロック。


ロシアと中国を中心に、モンゴルを含む

共産ブロック。



日本、満州、インド、トルコを軸とする

南ユーラシアブロック。


そして資源国の

中東・アフリカブロック。


四極構造の世界だ。


そしてウクライナは中立国家として、緩衝地帯となっており、


中国がチベットやウイグルの人々を搾取しているのはどちらも同じだ。



朝鮮半島は日本から独立していたが、

南北に分断はされていない。


日本とは同盟関係にある。


そして日本は、台湾を含む

日本共和国という国家だった。


政治体制は、ちょうど今の韓国に近い。


徴兵制もある。

まあ、今の俺にとっては、そんな比較よりも

こちらに馴染む事の方が重要だが。

 


そんな世界から来た俺は今、

夢の島公園の避難所から通っている。


通学先は――


水道橋にある

東京都立工科芸術高等学校。


通称「都工芸」。


建築科だ。


 

夢の島公園から学校までは

約十一キロ。


最寄り駅は新木場。


電車通学もできなくはない。


だが、乗り換えや待ち時間を考えると

所要時間はランニングとあまり変わらない。


だから俺は、

通学時間をそのままランニングに使っている。

学校の近くのロッカールームを月1万で借りて、

そこに靴と着替え、そして教科書を置いてある。

ウチの学校は私服OKなので助かる。

そして朝早く、学校近くのセルフカフェで

クールダウンがてらアイスコーヒーを片手に

教科書に目を通してから登校する。



俺が読んだアウトロー漫画では、


工業高校といえば

不良だらけの男社会――


そんなイメージだった。


だが、俺の転入先は違った。


女子七割、男子三割。


完全に逆転した人員構成に

少し面食らった。

しかも、可愛い女の子が多いこと多いこと。


ほとんどの男子生徒が彼女持ちという、

なんとも羨ましい環境だった。



校舎はガラス張りのカーテンウォール。


地上九階、地下二階。


地下には温水プールまである。



普通の高校というより、

建築家 槇文彦 の研究施設のような建物だ。



脳筋と言われようが俺は足腰を弱らせたくない。


だからエレベーターは基本使わない。


九階でも、階段だ。


 


デザイン科。

建築科。

アーツクラフト科。


女子好みの学科が多いせいかもしれない。


廊下を歩くと、

むしろ美術高校のような雰囲気すらある。


 

だが、この学校にも

意外に硬派な場所があった。


空手部だ。


 

俺は迷わず入部した。


練習は

月・水・金の週三日。


武術というものは、

週に三度は体を動かさないと上達しない。



並行世界では武を尊ぶ文化で、

予備士官学校では格闘技が必修だった。


日本拳法と柔道。


この二つは特に重視されていて、

卒業までに最低でも二段を取らなければならない。


俺の場合、拳法は国際指導員の資格を持つ親父の道場で

かなり早くから鍛えられていた。


だから三段。


柔道は軍学校で叩き込まれた。


投げ、寝技、拘束。


実戦では

むしろ柔道の方が役に立つことも多い。


この部活のローテーションは

ちょうどよかった。


 


ただし――


ひとつ問題があった。


 


俺は転入生。


しかも三年。


 


つまり。


 


先輩がいない。


 


この空手部の三年は、

俺だけだった。


部をまとめているのは

二年生だ。


 


高校の空手部といえば

普通は伝統派だ。


だが、この学校は違う。


 


フルコンタクト。


顔面は打たないが、

それ以外は全部あり。


 


体育館の隅で

二年生同士の組手を見て思った。


 


――悪くない。


 


久しぶりに、


体が動きそうだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ