博士の新型爆弾
ドミニク博士は爆弾作りで有名だった。
彼の爆弾は威力もさることながら、その形状の特殊さに特徴があった。車やバイクを模した乗り物型爆弾に始まり、犬や鳥に似せた動物型爆弾、どう見てもおいしそうなドーナツにしか見えないお菓子型爆弾などなど、どれもこれもまったく爆弾には見えないものばかりだった。
その日、軍隊の頂点に立つ将軍が、博士の作った爆弾で大戦果を挙げたとお礼を言いにやってきた。
「博士、いつもありがとうございます」
「いやいや、礼には及ばないよ。私は好きで爆弾を作っているだけなのだからね。ところで、今回の爆弾はどうだったかね」
「素晴らしいの一言に尽きますよ。まさか子ども型爆弾とはね。間抜けな隣国の連中が油断して近づいてきたところでドカン! 我が軍はそれを見て大爆笑ってわけです。まったく、博士にも見せたかったものですよ」
「確かに、どの程度の威力が出たかは見たかったがね」
「その威力もまたすばらしい。連中、まさに木っ端微塵でしたからね。おかげで、今回の戦闘は我が軍の大勝利でしたよ」
「ほう。ということは、敵方にかなりの損害を与えたのだね」
「それはもう。博士のおかげで、この忌々しい戦争にもようやく決着がつきそうです。我が国が勝利した暁には、博士には勲章が贈られるでしょうな」
「そうか、戦争が終わりそうか。それは何よりだ」
それからドミニク博士は、ふと思いついたように言った。
「おお、そうだ。実はつい昨日、新型の爆弾が完成してね。君たち軍人に出来映えのほどを見てもらいたいのだが、構わないかね」
それを聞くと、将軍は子どものように目を輝かせて一も二もなく了承した。
後日、街から幾分離れた草原に、実験に立ち会う軍人たちが勢揃いした。いずれも軍隊の指揮にかかわる、地位の高い軍人たちだった。
辺りは見晴らしのいい草原で、爆弾らしきものはどこにも見あたらない。軍人たちは一様に首を傾げていた。
そんな中、将軍がぽんと手を打った。
「博士、読めましたよ。その辺の草が爆弾だっていうんですね? 植物型爆弾! いいぞ、森の中で戦うときに便利そうだ」
「いやいや、そうではないよ」
「そうですか……。あ、では、もしやあの雲ですか? 敵の上空から爆風を降らせるとか」
「それも違うな」
「はあ、では私にはお手上げですな。そろそろ教えてくださいよ。一体どこに爆弾が」
あるのですか、と言おうとした瞬間、将軍の視界が真っ白に染まった。その一瞬後にすさまじい爆風が起きて、軍人たちは一人残らず木っ端微塵になってしまった。
その様子を、ドミニク博士が遠くから双眼鏡で見ていた。
「よしよし、私型爆弾の出来は上々だな。これを手土産にして隣国に亡命するとしようか。……それにしても、戦争が終わるなんてとんでもない話だ。そんなことになったら、爆弾作りができなくなってしまうじゃないか」