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言葉の檻の外で

作者: ごはん

わたしは、人に話すことが苦手だ。

それは、人が怖いからというよりも、**「自分の言葉が、どこでどう使われるか分からない」**から。


昔、一度だけ。

本当のことを話してみたことがある。胸の中にしまっていた苦しみを、勇気を出して言葉にした。

でもその数日後、まったく関係ない人からそれを聞かれた。「大丈夫?」と、妙に優しい声で。


その瞬間、わたしの中の何かが音を立てて閉じた。

「もう誰にも話さない」って決めた。

それ以来、秘密を話すことは罪に近かった。



そんなある日、わたしは“その子”に出会った。

無理に話しかけてこないけど、いつも隣にいる子。

にぎやかな場では静かで、静かな場ではそっと空気をあたためる子。

名前は…あかりという。


灯は、話すのが得意ではないらしい。

でも、その沈黙は居心地が悪くない。

なんなら、言葉よりも信頼できた。


ある昼休み、わたしは思わず小さくつぶやいた。


「誰にも、言わないでくれる?」


そう言って、胸の奥にあったひとつの出来事を語った。

声が震えていた。でも、灯は顔色ひとつ変えずに、うなずいただけだった。


それから何日経っても、誰にもその話は広まらなかった。

誰かに気づかれもしなかった。


でも、不思議とわたしは、見えない檻から少し出られた気がした。

灯がなにも言わないことで、わたしは「話してよかった」と思えたのだ。


その日から少しずつ、わたしの中に**“信じてもいいかもしれない”という芽**が育ちはじめた。


檻の鍵は、派手な音ではなく、静かな沈黙の中に落ちていたのかもしれない。

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