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ストーリーが分からない逆ハー乙女ゲームの悪役令嬢に転生したけど、無事溺愛モードに突入しました  作者: 水錵 咲


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23、魔石発掘

 思わず軽く叫んだ私は、衝撃を受けた手をもう片方の手で押さえる。


 あれっ?!


「エミューの花がない!!」


 私の言葉にハッとした全員が、すかさず険しい表情で周囲を見渡した。

 その瞬間、私たちを取り囲むようにして大勢の影が現れる。


 また魔獣?!


 心の中で叫んだ瞬間、響いてきた声はよく聞き慣れたものだった。


「ご苦労だったわね」


 そう言って、姿を現したのは不適な笑みを浮かべるソニアだった。

 周囲は大勢の騎士たちが取り囲んでいる。


「ソニア!」


 私の叫ぶ声にニヤッと笑って、私から奪ったエミューの花を見せびらかすようにして掲げている。


「ずっと後をつけて、この時を待ち侘びていたのよ」


 なんてこと……!


「エミューの花は渡さないわ! シリル様と一緒に飲もうなんて絶対に許さないんだから!」

 ソニアは私を見据えてそう叫んだ。


 えっ?!何を言ってるのよ、シリルと飲むはずないじゃない!

 それでなくたって、私は公爵家で厄介者の家族の立場なんだからっ!


 いや、そうじゃなくて、この忌々しい痣が残らないようにするために必要なのよおお!


 私の焦る表情を見て不気味な笑みを深めたソニアは騎士たちに向かって叫んだ。

「この者たちはね、我が侯爵家第一騎士団の精鋭たちなのよ! さあ、あんた達やっておしまいなさい! おーほほほほ」


 その瞬間、騎士達が一斉にこちらへ飛びかかってくる。


 うわ!さすがにこの人数に立ち向かうには厳しいんじゃない?!



 ――――と、思ったのも束の間、私を除いた4人は先ほどのように瞬時に体制を整えて、私を守ってくれた上にあっという間に騎士達を制圧した。



 あ、楽勝だった……。

 騎士達が全員床に伸びてしまったのを、ソニアは唖然とした表情で見ている。



 ……いくら侯爵家第一騎士団の精鋭たちでも、さすがにゲームのヒロインと攻略対象たちに敵うはずもないよね。

 あんなに大きな魔獣まで倒しちゃうくらいなんだから。


 私は伸びている騎士さんたちを不憫に思いながら、この騒ぎでソニアの手から落ちていたエミューの花を拾おうとした、その瞬間――――


 一瞬の隙をついたソニアがバッとエミューの花を掴み、伸びている騎士さんのマントに残っていた小さな火に向かって投げた。


 あ!!!!!


 手を伸ばすが届くはずもなく、エミューの花はあっけなく燃え尽きてしまう。


 そんな……!!

 だって、今日の夜がタイムリミットの3回目の満月なのに……!


「ふんっ、いい気味だわ! おーほほ――――ぶへっ!」


 高らかに笑うソニアを、ロジェが魔法で捕縛し口を塞いだ。



 うう、希望の光が……。


「そんなに落ち込むなよ」

 そう言って、ロジェが隣に寄り添い私の頭にぽんと手を乗せて、困ったような表情でこちらを覗き込む。


「そうですよ! ルーチェならそんなもの使わなくても、きっとその魅力で愛されるはずです!」

 エリーが私を元気づけるように言う。


 あれ?

 そうか、私ちゃんと説明してなかったものね……。


 そう思い、みんなに向き直って言った。

「そうじゃないのよ……あのね、この痣は呪いを受けてから3回目の満月が来ると消えなくなっちゃうんですって。エミューの花を煎じて飲むとそのタイムリミットを伸ばせるらしいの」


「まあ、そうだったんですか……」

 エリーが驚いた表情でそう呟いた。



「3回目の満月とは……」

「今夜か」

「だったら、とっとと治癒しちまえばいい話だろ」


 最後のロジェの言葉に、ミカエル様もシリルもハッとした表情になり、3人は牽制し合うようにお互いの顔を見つめた。


「こんな不気味な痣を持った女性と結婚してくれる人なんて、きっといないもの!」


 そう言って、私がわんわんと泣いていると、


「俺はどんなルーチェも好きだぞ」

「王太子妃になった暁には、誰にも何も言わせない」

「公爵家にいればいい。僕がきっと君を守ってみせる」


 3人がそれぞれ私を慰めようとしてくれているのはわかったけれど、私の落胆は止まるところを知らなかった。



 ぎゃーぎゃーと喚く私たちを尻目に、エリーがふと辺りの気配を伺って呟いた。


「あれ? 何か変な音が聞こえませんか?」


 その瞬間、ロジェが表情を消して言った。

「崩れるぞ」


 その言葉が終わると同時に、洞窟内のどこからともなくゴゴゴゴという轟音が響いてくる。


 何?!すごい音……!!

 


「2度の戦いの衝撃にはさすがに耐えきれなかったようだな、急いで戻ろう」


 えっ?洞窟が崩れたら魔石ってどうなるんだろう?

 ダンジョン探索はまたちゃんと続けられるのかな。


 私がそんなことを考えていると、シリルが私の手をさっと掴んだ。

「ルーチェ、こちらに」


 ロジェが魔法具を作動させて、みんなが捕縛したソニアたちを引き連れて、あっという間に洞窟の入り口に戻っていた。


「離れろ!」


 みんなについて慌てて洞窟から離れると同時に、岩が次々と落ちて、跡形もなく崩れ去っていく。


 えっ?!



「ねえ! ここはもう入れないってこと?!」

 私は思わず叫んだ。


 せっかくあそこまで辿り着いたのに……。

 最深部はもう間近だったはず。


 そう思い落ち込んでいると、目の端に何かがキラリと光った。


「……!!」


 みんなが驚いた表情で見つめる先を辿れば、崩れた洞窟の割れ目から大きな光の欠片がどんどん湧いてきている。


 これって、ひょっとして魔石……?!?!


 不思議で美しい光景に、みんなが暫しの間、見惚れていた。



「もしかして……エミューを倒すことが魔石発掘の条件だったのではないですか?」

 沈黙を破るように、エリーが目を輝かせてみんなにそう言い放った。



 そうだったんだ……!

 とにかく、魔石が見つかったんだ!ばんざーい!



 あ――とりあえず一つ先に欲しいんだけど、やっぱりダメかな。

 そう思いながら私はチラリとみんなの様子を伺った。


 すると、ミカエル様が考え深げな様子で呟く。

「とにかく……これを持ってすぐに神殿に行くか」

「え?」

「しかし殿下、学園に報告をしなくては。手続きもなしに勝手に持ち出しては、」


 真面目に訴えるシリルを、ミカエル様はまあまあと制して私の傍に歩み寄った。


「どんな姿でも愛らしいが、そなたはその痣があると気になるのだろう?」

 そう言って、ミカエル様はぽんと私の頭に手を置いて、優しく笑った。



「魔石に含まれる光魔法が治癒の力となるかもしれない」


 ミカエル様がシリルにそう言うと、シリルはふむふむと頷いた。


「確かに、ルーチェのためなら早くしなければ」

「お前……どっちだよ」

 シリルの急変した態度に、ロジェが冷や汗をかいたような表情で突っ込む。


「まあ、そうだな。ルーチェを治癒するって言っても、誰も譲る気はなさそうだし、これくらいで譲歩するか……」

 ぶつぶつと何かを呟いているロジェをエリーが宥めている。


 ミカエル様は、素早く魔法で伝令を学園に向けて出してから、私に向き直った。


「さあ、行くか」

 そう言って、私に手を差し伸べる。


「ありがとうございます……!」

 私はミカエル様にお礼を言って、その手を取った。

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