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ストーリーが分からない逆ハー乙女ゲームの悪役令嬢に転生したけど、無事溺愛モードに突入しました  作者: 水錵 咲


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22、エミューVSルーチェ

 相変わらず不思議な態度を見せる3人とエリーと私とで、ダンジョン探索は順調に進み、さらなる下の階層へと潜っていた。


 エリーからは湖と似た泉も出現の可能性があるので気をつけるように言われているため、慎重に歩を進めている。


 すると、また泉らしき水辺が見えてきた。


 私が警戒して距離を取っていると、後ろから来ていたミカエル様が私の頭に優しく手を乗せながら言った。


「そう警戒しなくとも大丈夫だ。これはエミューの湖だ」


 私に穏やかな笑顔を向けると、腰にかけていた剣を鞘から抜き取り、剣先を滑らせるように湖の水面をスーッと切った。


 まるで水に触れた剣先から光の粉が現れたかのように、青い光の粒子がキラキラと輝く。


「わあ、綺麗……!」

「ほんとですね!」

「S級ダンジョンの深層部にある湖には、青色の光で覆われたエミューの湖と呼ばれるものがいくつか存在する」


 はしゃぐ私とエリーに、ミカエル様が説明してくれる。


「そうなんですね」

「些少の治癒力もあって、この水に浸せば小さな怪我なら治すことも可能だ」


 すごい、そんなこともできるのね。

 

「この階にはあちこちあるようだ。エミューの湖がこれだけ増えてきたってことは、次の階あたりには花も見つかりそうだな」

 辺りの探索を終えてシリルと共に戻ってきたロジェがそう言いながら私たちの元へやってくる。


 いよいよエミューの花が見つかるんだ!

 私はワクワクしながら、みんなに続いて下の階層へと降りた。


 どんどん薄暗くなる洞窟の中を、みんなと進んでいくと、これまで見てきたよりも一際大きな湖へと到達した。


 見回してみれば、水辺の一部に微かにキラキラと光る物体を見つける。


「あっ! あれってもしかして!」

 私の指差す方を見て、みんなの空気がふっと緩む。


「エミューの花ですね!」

「そうだな」

「やっと見つかったか」

「ああ」


 私は嬉しくなって走り寄り、ふんわりと青く光るその花に触れようと手を伸ばした――――


「ルーチェ危ない!!!」


 エリーの叫び声が聞こえた瞬間、腕を強く引き寄せられ固いものにぶつかり大きな衝撃を受けた。


 ハッと気づいて見てみると、私はミカエル様に抱き庇われている。


 安心したところで、さっきよりも暗いことに気づきふと顔を上げると、そこにはこちらを見下ろしている巨大な魔獣がいた。


 ええっ?!

 何、あの怪獣のようなモンスターは!!


 よくよく見てみれば魔獣が動けないようロジェが大きな炎で魔獣を取り囲み、シリルは剣を構え、エリーは私たち全員を守るように保護魔法でシールドを張っていた。



 この一瞬でみんなそれぞれ自分の役目を把握し的確に動いていることに、急場も忘れて関心してしまう。


 しかし、何でいきなり魔獣が現れたの?

 っていうか、私が花を採ろうとした瞬間に――


「どうりでエミューの名前がついてると思ったんです」

「え?」

「エミューってこう見えてめちゃくちゃ強い魔獣なんです。倒さないとこの花、取らせてくれそうにないですね」

 エリーが魔獣を見据えながらそう言った。


 ど、どうしよう!

 そんなに強い魔獣なら、私たちピンチなんじゃないの?!


 いくらゲームのヒロインと攻略対象たちがいるとはいえ、これだけ大きくて強い魔獣に敵うかどうか――――



 と、そんな私の心配も一瞬で吹き飛ばすように、ロジェはまるで魔獣を魅了するように炎を自在に操り、ミカエル様とシリルは華麗な剣捌きを見せ、エリーはそんな3人を的確に補助しながら魔獣を追いやった。


 私は只々、4人の格好良さと聡明さに圧倒されるばかりで目が離せなかった。


 彼らの戦う姿は、美しい。


 それは元の世界でプレイしてきたどのゲームでも味わったことのない不思議な感情だった。




 私がぼーっと見惚れていると、戦い終えたエリーが傍にやってきて手を取りエミューの花へと促す。


「さあ、ルーチェ採ってください」

 そう言って私に軽く微笑んだ。


「いいの……?」

 だって、戦ったのはみんななのに―――


 私の戸惑いを拭きとばすかのように、ロジェもミカエル様もシリルも優しい表情をしている。


 私はその温かさに後押しされて、みんなに頷いて見せた。


「ありがとう」

 一人ひとりの目をしっかりと見つめながらそう言って、しゃがみ込みエミューの花を摘む。


 手にしたエミューの花は、ずっと淡く青色の光を絶やさなかった。


「見て、綺麗ね……!」

 私は嬉しくなって立ち上がりみんなにエミューの花を掲げた。


 和やかな笑顔に溢れたその瞬間――――――

 手に衝撃が走る。


「痛っ!」

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