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しわしわさんたちのお祭りはますます盛り上がっていました

どこからともなく、色とりどりの食べ物の乗ったお皿を

持ってきて、私の前に積み上げ始めます

それはまるで、おもてなしをしてくださっているようにも

見えました


それにしても、しわしわさんたちのご馳走は

なかなかに、見慣れないものばかりでした


形は苺に似ているのですが、色が真っ青なフルーツとか

なんだか、目と鼻と口に見える凹凸のついた木の実とか

真緑色をした、骨付きのお肉?のようなもの

それから、きらきら、ちかちかした星がいっぱい入った

ドリンクもありました


しわしわさんたちはご馳走を並べると

さあ、召し上がれ、と声を揃えておっしゃいました


…これは…いただいたほうが、いいのかしら?


折角のご厚意を無にするのも申し訳ない気もいたします

とはいえ、手を出すのも、ちょっと怖…


いいえ!

私はぎゅっと目を瞑ると、思い切って青いフルーツを

手に取りました


しゃりっ…


齧ると思ったのと違う歯ごたえがあって

その後に、甘い味が口いっぱいに拡がりました

確かにこれは、見た目は、ちょっと、あれですけれど

とても美味しいフルーツでした


ひょおおお!!!


私がフルーツを食べたのを見て

しわしわさんたちは、大喜びをしていました

手を叩き、隣のしわしわさんと肩をたたき合って

喜んでいらっしゃいます

このくらいのことでそんなに喜んでいただけるなんて

それはそれで、嬉しい気持ちになりました


「みんな、姫様、大好き」


ふいに、胸元からそんな声が聞こえました

しわしわさんたちの声ではありません

あれ?と思って見下ろすと、バネタロウさんが

きっ、と鳴きました


「姫様、果物、食べる

 言葉、分かる」


なんとなんとなんと!

しわしわさんだけではなく、バネタロウさんの言葉まで

分かるようになっていたではありませんか!


「素晴らしい!」


思わず叫んでしまいました

すると、一瞬、しわしわさんたちが、しーん、と

静まり返りました


これは、なにか、まずいことをしたかしら?


思わず不安になりかけたときでした


「すばらしい~~~~~!!!!!」


突然の大合唱でした

それは、森中に響き渡るかと思うくらい

大きな大きな声でした


しわしわさんたちは、とんでもなく皆喜んでいて

ばしばしばし、とちょっと痛そうなくらい

お互いの肩を叩きあっています


なかには涙を浮かべているしわしわさんもいました


突然、攫われて、食べられてしまうのかと怖くなって

でも、怖いことは何も起こりませんでした

どこかの姫様に間違えられていることは

いろいろと、その、心にはひっかかりますけれど

なにはともあれ、こんなに嬉しそうにしてくださると

それはそれで、こちらも嬉しくなってしまうのでした


そのときでした


「ひゃっほ~」


妙に聞き覚えのある声がして、びゅぅん、とツタに捕まった

フィオーリさんが、飛んでこられました


え?


フィオーリさんの手が伸びて、しわしわさんがしたように

私の腰のところを掴もうとなさいます

けれども、フィオーリさんは私にしがみつくようにして

そのまま、ずるずるとツタから落ちてしまいました


「う

 あいつは持ち上げたのに…」


あ、そういえば、まだリュックは背負ったままでした

このリュックの重さは、フィオーリさんたちには

精霊界でも有効なようです


「マリエ!大丈夫かい?」

「聖女様!今、お助けします!」

「嬢ちゃん、無事か?」


次々と到着なさったみなさんが、広場の端の木の上から

こちらにむかって叫ばれました


「あ、はい

 大丈夫です~~~」


私は、みなさんに安心していただこうと

ゆっくりと手を振って合図をしました


横で見ていたフィオーリさんは、少しばかり

気が抜けたようなお顔をなさいました


「聖女様が、いきなり攫われて

 みんな、焦ったっす!」


「ごめんなさい

 でも、しわしわさんたちは、私をどなたかと人違い

 なさったようです

 多分、悪気はなかったと思います」


「突然、有無を言わさず攫っといて

 悪気はなかった、もないと思うけどね?」


羽のあるミールムさんは、しわしわさんたちの頭上を飛んで

こちらへとやってこられました


「どうか、怒らないであげてくださいまし

 あんまり喜んでいらっしゃるので、私もまだ

 事情の説明はできておりませんけれど

 きっと、ちゃんと人違いだと説明すれば

 解放してくださると思います」


私は、話しながら、さっきの青い果物をミールムさんに

差し出しました


「よかったら、おひとつどうぞ?

 とても、美味しいのですよ?」


「げーっ、こんな不気味な色、食べて大丈夫なの?」


ミールムさんはきっぱりと嫌そうな顔をなさって

手を振りました


「まあ、美味しいのに」


「んじゃ、おいら、いただきますよ」


横からフィオーリさんは手を伸ばして

私の手の果物を取りました

そして、一口齧るなり、叫びました


「うん

 うめーーー

 これは、うまいっす!」


「えーーー…

 じゃあ、僕も、一個」


それを見ていたミールムさんも手を出します


「はい、どうぞ」


果物を乗せて差し上げると、恐々匂いを嗅いだりしましたが

思い切ったように、口に入れました


「うん

 美味しい」


「そうでしょう、そうでしょう」


私は、自分の手柄でもないのに、妙に嬉しくなって

しまいました


そこへ、しわしわさんたちを掻き分けて

お師匠様とシルワさんもやってこられました


「なに?なに?

 なんか、宴会になってるん?」


「聖女様、心細い思いをさせてしまい

 申し訳ありません」


それほど時間は経っていませんが

やっぱりまたこうしてみなさんが揃うと

ほっとするのを感じていました


私は、どうやら人違いをされているらしいことと

しわしわさんたちが、とてもご親切にもてなして

くださったことを、みなさんにお話ししました


「まあ、まあ、それは、ようございました

 聖女様の愛らしさに、精霊のみなさんも

 思わず心惹かれてしまったに違いありません」


シルワさんはそんなことをおっしゃいます

いつも通り、少しばかり、私のことを買い被り過ぎです


「ふん、ふん、これはまた、珍しい食材やな

 よっしゃ、嬢ちゃんも世話になったみたいやし

 お返しに、これ使って、なんか料理しようやないの」


お師匠様はそんなことをおっしゃいました



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