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いやさて、どうしたものか


「もう片っ端から転がすしかないか」

「無理でしょ、いくつあると思ってんの?」

「アイフィロスさんに聞きに行きます?」


皆さん膝突き合わせて喧々囂々…

けれど、なかなか、これ、という意見はありませんでした


「…こんなとき、シルワさんなら

 どうおっしゃっるのでしょうか…」


思わずそう呟いた時でした

どこからともなく、しゃら、と竪琴の音が聞こえました

はっとして耳を澄ませましたけれど

それはほんの一瞬のことで

どれだけ耳を澄ませても、もう音は聞こえません

もしかしたら気のせいかもしれないとも思いました


すると、突然

どこからともなく、たくさんの鳥が現れました

鳥たちは一斉に藪のほうへ飛んでいきます

と思うと、あちこちで、ぱんっ、ぱんっ、と音がしました


「うわ、なんやあの鳥?」

「まさか、偽物の玉子、全部壊してる?」

「こりゃあ、一瞬で確かめられるかもしれませんね」


みなさん呆気に取られて見ていらっしゃいます


ぱんっ、という音が鳴りやむと

鳥たちはやってきた時と同じように

また一斉に、四方八方へと飛び去っていきました


「いったいまた何で、あんなに鳥が集まってきたんやろ?」


「あのう、さきほど、竪琴の音のようなものが

 聞こえませんでしたか?」


首を傾げているみなさんに

私はさっき聞こえた音のことを話しました


「さて、そんなもん、聞こえたかな?」

「気のせいなんじゃないの?

 僕、耳はいいほうだけど

 そんな音、聞こえなかったよ」

「おいらも、聞こえてません、かね?」


けれど、皆さんは揃って首を振られました


「…シルワ師…?」


ただ、ノワゼットさんはぽつりとそう呟きました


私は急いで尋ねました。


「もしかして、ノワゼットさんには聞こえましたか?

 さっきの竪琴の音のようなもの」


ノワゼットさんはまじまじと私を見つめておっしゃいました


「…まさか、あなたは聞いたのか?あの音を?」


はい、と頷くと、ふうん、とだけおっしゃって

そっぽをむいてしまわれました


「…あれは、シルワ師の魔法だ…」


けれど、むこうをむいたまま、ぼそりとそう付け足しました


「シルワさんの魔法?」


「まさか、あの鳥を呼び集めたんか?」

「へえ、やるじゃん」

「玉子のことは鳥に聞け、ってわけっすか?」


皆さん、一斉に尋ねられましたけれど

ノワゼットさんはもうそれ以上

何も応えてくださいませんでした


「けど、なんや、シルワさん、

 やっぱりついてきてるんか?」


お師匠様はわずかに眉をひそめました


「どうして姿を現わさないでしょうね?」


フィオーリさんも心配そうに続けます


「おお~い、シルワ~

 いるなら出ておいでよ~~~」


ミールムさんは大声を上げて呼びかけました

それを見て、皆さんも、口々にシルワさんを呼びました


けれども、シルワさんは、どんなに呼んでも

姿を現わしてはくださいませんでした


「なんで出てけえへんのやろ?」

「何か、出てこられない理由でもあるのかな?」

「だけど、ずっと一緒に来てたんっすかね?」


皆さん首を傾げましたけれど

誰もそれに答えられる人はいません


「とりあえず、おいら、玉子、見てきますよ」


フィオーリさんはそうおっしゃると

また藪の上を駆けて行きました


「みなさ~ん

 ばっちりっす~~~」


しばらくして戻ってきたフィオーリさんは

玉子をひとつだけ手に持っていらっしゃいました


「一個だけ残ってました」


ほくほくと手渡された玉子をお師匠様は受け取りました


「とりあえず、最初のトラップは無事突破かな?」

「先へ行くとするか」

「そのうちシルワさんも

 出てきてくれるかもしれませんしね」


皆さんそうおっしゃりつつ、また玉子を転がしました


ころころころ…


玉子はまた藪のほうへと転がっていこうとしました


「うわ!やば!」


慌ててフィオーリさんが、玉子を掴もうとします


そのときでした

また、あの竪琴の音が、しゃら、と鳴りました

それと同時に、ぱりん、と何か割れる音もしました

はっとして耳を澄ませた目の前で

藪に、さっと一本の道が開きました


玉子はその道を真っ直ぐに進んでいきました


「もしかして…

 さっきと同じトラップにひっかかるとこやったんか?」


「けど、これ、魔法使いがいなければ

 解除不可能だよね?」


「あ、いや、ちょっと待ってください」


フィオーリさんはそう言うと藪の入り口を丁寧に調べました


「…こことここに、鏡みたいなもの、埋め込まれてあります

 けど、割れてる?

 これって、魔導鏡なんじゃないかな…」


「つまり、実際には藪なんかないところに、藪があるように

 見せかけてあった、ってこと?

 それが割れたから、魔法も破れた?」


「そうか、先に進めんところに来たら

 鏡を探したらええ、っちゅうことやな?」


お師匠様は藪の入り口に埋め込まれていた鏡を

丁寧に掘り出しました

それは指先ほどの小さな小さな鏡でした

本当によく気づいたものだと感心するほどの小ささでした


「…なるほど、なるほど…

 割れてもうてるけど、この鏡、何かの役に立つかもしれん

 もろうて行くとするか」


「フィオーリ、この先、鏡を見つけたら回収していこう」


「了解っす」


「っと、さっきの玉子は?」


鏡を探している間に玉子はまた行方不明になっていました


大変だ大変だと狼狽える皆さんに

ノワゼットさんはぼそりとおっしゃいました


「多分、さっきのところに、またある、と思う」


「そうなんっすか?

 あ、おいら、見てきます!」


即座にフィオーリさんは駆けて行って

すぐに玉子を手に持って戻ってこられました


「ありました!

 ありましたよ!」


大喜びのフィオーリさんに抱きつかれそうになって

ノワゼットさんは、ひょい、と器用に避けています


「けど、なんで分かったんっすか?」


「あ、そっか

 そこが、魔力の補給ポイントなんだ!」


気づいたのはミールムさんでした


「もしかして、そこに玉子が入ったら

 フェイクも発動するようになってた、とか?」


「けど、今回は、フェイクなんて、一個もなかったで?」


「もしかして、さっきの鳥が全滅させた、とか?」


「あれだけの魔道具、一瞬で全滅なんてね

 今頃、アイフィロス、大泣きしてるんじゃないかな…」


ノワゼットさんは淡々とおっしゃいました


「確かに

 あれで意外と力押しやからな、シルワさん…」


お師匠様はどこか楽しそうに笑っていらっしゃいました










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