表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/127

17

そういうわけで、今日は四人でやってまいりました

木の下から声をかけたのですけれど

アイフィロスさんのお応えはありません

シルワさんが構わないとおっしゃったので

ぞろぞろと勝手に上っていきましたら

アイフィロスさんは、まだ寝ておられました


「ふへえ

 シルワ、早いじゃないか」


アイフィロスさんはまだちょっと眠そうです


「昨夜、遅かったのに

 …って、君の場合、元気の素がいるからなあ」


「元気の素?

 エルフ族にはそのような技がおありなのですか?」


そのようなもの、あるなら、是非とも教えていただきたい

そう思って尋ねたら、お二人とも苦笑なさいました


「君、ちゃんと言ってないのか?」


「…最近は割と堂々と言っているのですけれどね?

 なかなか、通じていませんようで…」


「なに?なにが通じてないのですか?」


重ねて尋ねると、お二人とももっと苦笑なさいました


「シルワほどの朴念仁もいるまいと思ってたけど

 上には上がいるもんだね?」


「わたしなど、何に於いても大したものではありません」


シルワさんは手を振って謙遜なさいます


「いいえ?

 シルワさんは、大した方ですとも!

 私、保証いたします!」


力説してから、昨夜のことをちょっと思い出して

また恥ずかしくなってしまいました


「昨夜もそうおっしゃってくださいましたね」


シルワさんは優しく微笑んでおられます

けれど、その笑顔、少し胸に痛いです


「…すいません、私ってば、また…

 今日はお酒はいただいておりませんけど…」


「ふふ

 とても、嬉しいです

 聖女様にそう言っていただく度に

 わたしの中に力が湧いてきます」


シルワさんはにこにことおっしゃいました


「なんと言っても、わたしの元気の素ですから」


「はあ、元気の素って、私のことですか?」


自分を指さして尋ねたら

アイフィロスさんもシルワさんも声を合わせて笑いました


「楽しそうにお話しのとこ、あれやけど

 探し物は見つかったんかいな?」


そこへお師匠様が入ってこられました

アイフィロスさんは、探し物?とちょっと首を傾げてから

ああ、まだだ、と手を叩かれました


「やっぱ、まだなんかいな

 ほな、ちょうどええわ」


「おいらたち、今日は宝探しに来たんっす」


「宝探し?」


アイフィロスさんは首を傾げます

それにシルワさんは苦笑して説明しました


「あの物入れのね、中を全部出して、片付ける、と…」


「はあ?

 いや、いらない

 余計なこと、しないでくれ」


アイフィロスさんは手をぶんぶんと振りました


「ああ見えて、オレにはどこに何をしまったか

 ちゃあんと分かってるんだから」


「ちゃあんと分かってる、割りに

 探し物は出てきませんなあ?」


お師匠様に言われてアイフィロスさんは言葉につまりました


「それは!

 …その…」


「なあんも

 余計なところは触らへん

 ただ、全部出して、綺麗に入れ直すだけや

 ほかしたりもせえへん

 横にいてもろうて、いちいちお伺い立てますやんか

 それでもあかんか?」


う、とアイフィロスさんはもう一度言葉につまりました


「どんなお宝が出てくるのか

 もう、わっくわくで!」


話しにフィオーリさんも参加なさいます


「こら

 余計なことは言わんでええ」


けれどすぐにお師匠様に叱られてしまいました


アイフィロスさんは思い切り苦笑しておられました


「まあ、オレも、そろそろ一度、片付けるかあ?

 って、思ってたところだし?

 それを手伝ってくれる、って言うんなら…

 手もあると、助かるっちゃあ、助かるし?」


「やらせてくれるっすか?宝探し?」


「君たちにとってお宝かどうかは、分からないけどね?」


お師匠様は黙らせておきたかったようですけれど

フィオーリさんは、生き生きと本音を言ってしまってました


「やったあ

 おいらたちってば、他所の人のお宝見せてもらうの

 大好きなんっすよ」


「あ

 この場合のおいらたちってのはホビット族のことやから

 わたしは違うからな、念のため」


お師匠様は律儀に付け加えました


そんなこんなで、小屋のお片付けが始まりました

ただ、始めてしばらくして、誰もが悟りました

これは、到底、一日二日じゃ、終わらない…


小屋のなかには

ガラクタになりかけのお宝や

ガラクタ一歩手前のお宝や

ガラクタにしか見えないお宝など

たくさん、たくさん、詰まっていました

物を引っ張り出そうとして何度か雪崩も起き

小柄なお師匠様やフィオーリさんは何回も埋まりました


「これは、一筋縄ではいかなさそうですねえ」


にこにことおっしゃるシルワさんが

思わず大物に見えてしまいました


「だから言ったろ?」


「自慢げに言うこっちゃないよ、それ」


アイフィロスさんはお師匠様に叱られてしまいました


「まあまあ、皆さん

 千里の道も一歩から

 塵も積もれば山となる

 目の前の物をひとつずつ

 こつこつとやっていきましょう」


そう申し上げると、盛大なため息が返ってきました


「千里どころやないで、この道は

 世界一周くらいできるんやないの?」


「塵も積もれば山となる、なんて

 この塵の山見ながら言われると

 あまりにも実感あり過ぎて…」


フィオーリさんはけらけらと笑い出しました


「さあさあ、そう落胆なさらないで

 聖女様のおっしゃる通りですよ

 ひとつずつやっつければ、いつかは終わります

 さあ、口ではなく、手を動かして」


シルワさんだけはそう言ってくださいました


「分かった

 とにかく、人海戦術と行こうや

 みんな、隣に並んで、順番に手渡しするんや

 とにかく、お宝かガラクタかの判別は、後にする

 今は、物を出すのに集中や」


お師匠様の号令で、私たちは一列に並びました


それからは、出して出して出して…

フィオーリさん流に言うなら、出しまくりました

本当に、小屋の中にはお宝がわんさか詰まっていました

魚を咥えたベアの木彫りに、手足のない木製のお人形…

三角の旗に、鞄に付ける大小さまざまなお守り…


「これは、両想いの方とおふたりで分けるお守りですね?」


「おうおう

 後生大事に両方ともとってありはる」


「それ、片方、誰かに渡すものじゃないんっすか?」


「シルワ!

 君の仲間って、人の痛いとこほじくるのが趣味なわけ?」


ときどき、アイフィロスさんの悲鳴も聞こえましたけれど


「まあまあ、そんなわけないじゃないですか

 みなさん、心根のお優しいいい方ばかりです

 ただ、ときどき、ちょーっとだけ

 思ったことをそのままおっしゃるだけですよ」


「それが痛い、って言ってるんだけど?」


そうは言っても、やっぱり、宝探しって楽しいです

珍しいものもたくさんありましたし

どうやって使うんだろう、とか気になるものもたくさん

もちろん、使い道を尋ねる余裕はありませんでしたけれど

後で、アイフィロスさんに尋ねてみましょう




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ