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デザート探しはとても楽しいお仕事でした
お味見と称してつまみ食いをしながら
私たちは美味しい木の実を探しました
森にはたくさん食べられるものがあります
甘いのも、ちょっとすっぱいのも
本当によりどりみどりでした
シルワさんは森のことを本当によくご存知です
木の実や草の実を探すのはいつもとてもお上手なのですが
この森だと、いちだんとたくさん収穫物がありました
「この森は幼いころから慣れ親しんだ場所ですから
どこにどんな木があるのか熟知しているのですよ」
シルワさんは照れたようにおっしゃいます
森は本当に宝の山でした
赤いのや青いのや緑色をしたの
それはまるで森の宝石のようでした
「聖女様」
ふいに呼ばれて振り返りました
すると、口の中にぽいと何か放り込まれました
「う、あま~い」
噛みしめた瞬間、じゅっと湧き出す甘い汁
口いっぱいに広がる幸せの味
それはほっぺたが落ちそうなくらい美味しい実でした
「精霊苺
とても珍しい実なのですよ」
シルワさんはにっこりしておっしゃいました
見ると小さな赤い実をびっしりつけた木がありました
木の背はそんなに高くないので、私の手でも届きます
私は、早速持ち帰ろうと実をひとつちぎりました
赤くて丸くて、粒粒した実がきらきらしています
形といい色といい、うっとりするほど綺麗な美味しそうな実
けれど、籠に入れようとすると、すっと消えてしまいました
「取ってすぐに食べないと消えてしまうのです
残念ながら、みなさんには持って帰れませんね」
見ていたシルワさんが教えてくださいました
持って帰れないのは、とても残念でした
「なんだか、私ばかり美味しいものをいただいてしまって
申し訳ない気持ちです…」
私はちょっとため息を吐きました
けれど、すぐにいいことを思い付きました
「なら、明日、皆さんとここへ参りましょう
皆さんにもお腹いっぱい食べていただきたいです」
こんなに美味しいのですから
皆さんにも是非味わっていただきたいのです
きっと皆さん、大喜びなさるに違いありません
シルワさんは、にっこりと頷かれました
「お優しい聖女様
この苺の木は、私の秘密の場所だったのですけれど
聖女様のお優しさに免じて
明日、皆さんをここにお連れするとしましょう」
「まあ、それは…
かまいませんか?」
今度はシルワさんに申し訳なくなってしまいました
シルワさんは、はは、と声を出して笑いました
「秘密にしておくなんて、欲深いのはよくありません
聖女様のおかげで、わたしもそれに気づけました
わたしの罪を減らしていただいて、有難うございます」
「いえ、そんな…」
お礼など言われてしまってはかえって戸惑います
シルワさんはにっこり微笑んでもうひとつ実をちぎりました
「でも、今日はまだ、ふたりだけの秘密です」
そんなふうにおっしゃって、実を差し出されます
「どうか、消えないうちに、あーん」
消えてしまうといけません
私は大急ぎでシルワさんの指先にぱくつきました
甘い味がまた口いっぱいに拡がりました
「あ、っと…すみません、はしたない真似を…」
やってから、恥ずかしくなってしまいました
シルワさんは、いいえ、と首を振りました
「はしたない真似をさせたのはわたしですから
罪ならわたしにあります」
シルワさんは微笑んで自分も実をひとつ口に入れました
「実はわたしもこれが大好物なのです
聖女様を共犯者にしてしまいました
どうか、皆さんには一緒に謝ってくださいね?」
「もちろんです
そして、明日には是非、皆さんとここへ参りましょう」
皆さんと明日は苺狩り
とてもとても楽しみになりました




