表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死にたがりの英雄 〜俺の間違いだらけの人生〜  作者: 武天 しあん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/36

26.出立を阻まれる



「リオ、姿が見えないと思ったら引いていたのか。」

「あぁ。皆の手柄を横取りするのはよくないからな。」


ギルマスも引いて俺のところまで下がってきた。



「ギルマス、リオさんは引いていますが、この位置から危ない箇所を見つけては風魔術を飛ばして皆を援護してくれています。」

「そうなのか。やはりリオは凄いな。戦いをもっとじっくり見たかったが、最初の爪を受けて翼を切り落とすところが見れただけで、ここにきた甲斐があった。」


「そうですね。リオさんは誰も相手していないワイバーンを一瞬で倒していましたから、しっかり目で追っていないとその瞬間を見るのは難しい。」

「俺も戦わずに見ておけばよかった。」


俺の戦いなど見たとしてどうなるんだ?

カルドも見たいと言ったから見せはしたが、最小限の動きで倒す俺の動きなど見ても、面白くはないだろう。


もっと綺麗な剣捌きをする者の動きを見たらいいと思う。



「それでリオが単体で倒した個体は5体か?」

「えぇ。Bランクの方々であれば3~4人で当たってもいけると思いますが、Cランクでは10人でも厳しいところもあるので。」


「まぁそうだろうな。パーティーでCに上がった奴らはCとは言ってもCの実力がない者も多いし。」

「そうですね。弓と魔術師が思った以上に実力がなかったのは誤算でした。リオさんがいなければ、下手したらワイバーンに皆殺しにされていたかもしれません。」


「あぁ。洞窟から出すだけで犠牲者が出て、しかも半日以上かかったかもしれん。」


「・・・。」


たぶんそんなことはないと思うが・・・。

受付の奴とギルマスが話しているのを少し聞きながら、俺は皆の戦いを見守った。



もうすぐ終わるか。

大怪我をした奴はいないが、すり傷や切り傷を受けた奴は何人もいる。

俺はその場を離れ薬草を摘みに行った。


あの程度の傷ならポーションを使うまでもない。しかし魔獣から受けた傷だ、放置していいものではない。


薬草をある程度摘んで戻ると、石で擦り潰した。



「リオ、それはもしかして傷口に塗るやつか?あのオークから救い出した奴や、商人の護衛を助けた時に使ったという!」

「あ、あぁ・・・。

あの程度の傷ならポーションを使うまでもないが、魔獣から受けた傷は放置するとよくない。」


「あぁ、やはりリオだ。」

「・・・。」


なんだ?薬草を擦り潰すぐらい誰でもするだろう?ギルマスの反応がよく分からず、俺は戸惑った。


ワイバーンとの戦闘が終わるとギルマスが怪我をした者を集めた。

そいつらは俺の前に一列に並んだため、俺は仕方なく、1人ずつ水で傷口を洗って、擦り潰した薬草を塗っていった。




これで俺の役目は終わった。


「それじゃあ。ワイバーンの討伐も終わったし、俺は先に進む。」


「ダメだ。報酬を払っていない。

せっかく会えたのに、そんな簡単に逃しはしない。」


俺が先に進むことを告げると、みんなに周りを固められた。


「いや、俺は目的があるから先を急ぎたい。

俺の分の報酬はここにいるみんなで分けてくれればいい。」

「ダメだ。リオを街に無理に引き留めようとは思っていない。報酬を渡したら旅立っても構わないから、ギルドまではきてくれ。」


囲まれているせいで、逃げられそうになかった。


「騒がれたくないのは知っている。街に入っても騒いだりしないから。」

「分かった。」


簡単には最南端に辿り着かせてもらえないということなんだな。それも罰の一つか。

それなら、受け入れるしかない。



またオーク討伐の時のように、回収チームが来るのを待つ。


「リオ、あの剣はどうだったんだ?」

「分からん。鈍らだとは思わなかった。普通の頑丈な剣に感じた。」


「そうなのか。やはりリオほどの腕になるとどんな剣も使いこなせるんだな。」

「そんなことはない。」


俺にあるのは腕力と忍耐だけだ。

情けないことだ。

ただ人よりも軍で戦った経験があるだけ。それだけなんだ。



ワイバーンとの闘いが長引いたため、かなり皆が疲労しており、みんなその辺に寝転んだり、木や岩に体を預けて休んでいる。

俺に構ってくる者はカルドとギルマスくらいだったのは、まだよかった。


いや、そうではないか。カルドとギルマスが特殊なだけで、俺なんかと話したい奴などいないということだ。

騒がれたくないなど、俺はどれだけ自意識過剰なんだ。本当に恥ずかしい。


自分の愚かさに居た堪れない気分になり、俺はその場を離れるために立ち上がった。


「リオ、どうした?まだ行くなよ?」

「あぁ。洞窟がしっかり埋まっているか見に行くだけだ。」


適当な理由をつけてその場を離れた。



「カルド、リオについていけるか?」

「いや、さすがに今から山を登るのは厳しい。」


「そうだよな。リオは体力もかなりあるんだな。」

「あぁ。今朝はグリズリーを1人で背負ってきたしな。俺の力では1人で背負うなど到底無理だった。」


「なに?荷車は使わなかったのか?なぜ早朝に森に行ったんだ?」

「早朝に行ったわけじゃない。昨日あの後、リオを追いかけたら街を出て森に行ったから、野営に付き合わせてもらったんだ。グリズリーは夕飯のためにリオが倒してくれた。」


「あぁ、だから片腕が無かったのか。それにしてもリオと野営か。贅沢だな。」

「あぁ。貴重な経験をさせてもらった。

リオは、何事にも動じないような感じに見えるが、信仰深い人物のようだ。

朝晩、膝をついて空に向かって祈りを捧げていた。これは俺の見間違いかもしれないが、泣いているようにも見えた。」


「そうか。きっとリオも色々なものを抱えているんだろうな。」

「そうかもしれん。」



ふぅ、カノン、死にたいと、殺してほしいと思うより、生きなければならないと思う方が辛いんだな。

待っていてほしい。必ず俺が蘇生の薬を見つけてみせるから。

俺はもっと早くに、そのことに気づくべきだったのに。取り戻せない時間が俺の心を抉るように罰を与えていく。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ