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第91話 物置小屋2


「華ちゃん、物置小屋を置く場所はやっぱり泉の傍だよな」


「泉に張り出した別荘のデッキから泉に飛び込んだら気持ちよさそうですよね」


「今度の物置小屋じゃそこまではできないけれど、すこしずつ手をかけていけば何とかなるかもな」


「そうですね」


「手をかけていくとなると、前もって材木屋にいって材木も仕入れておいた方がいいな。

 発電機を置けば電動工具も使えるから、日本で電動工具とかワークベンチを揃えたら素人の俺でも物置小屋の改造くらいできそうだものな」


「期待しています」


「任せてくれ」


 ということで、俺はにわか大工になることが決まった。まっ、何とかなるっしょ。



「もう一度泉のほとりをよく見ておくか?」


「はい」


 ピョンちゃんを連れて華ちゃんと泉のほとりに跳んだ。


「華ちゃん、ここらの灌木やら茂みは華ちゃんの魔法で何とかなるんだろ?」


「刈り取るだけなら、ウィンドカッターで簡単に刈れると思います。そのかわり木の切り株はそのままになります」


「そこは俺が1つずつアイテムボックスに拾っていくから何とでもなるよ。

 あとは、地面をどうやって突き固めるかだな。なにかいい魔法ってないかな?」


「それは、うーん。

 やっぱり、思いつきません」


「重力魔法って知らないかい?」


「???」


「重力魔法というのは重力を操る魔法なんだ。敵に対して重力を10倍にしてやればたいていの敵は動けなくなる。相手が人間だとして、戦闘機のパイロットか何かで対G訓練していなければ、まず失神だ」と、俺はラノベとゲーム知識を華ちゃんに開陳してやった。


「なんだか、スゴそうな魔術ですね」


「そういった魔法を地面にかければ一度に地面が突き固められるだろ?」


「そうですね。でも、今は具体的なイメージがぜんぜん湧かないから無理っぽいです」


「華ちゃん、ジェットコースターとか絶叫系のマシンって乗ったことないかい?」


「ジェットコースターならあります」


「俺も乗ったことがあるのはジェットコースターだけだけどな。あれで、カーブを切る時なんか体が横に押し付けられたり、上から下に突っ込んでいってそのまま駆け上る時なんかかなりのGがかかるんだがな」


「思い出しました。そうですね。体が押し付けられるような感じ。

 イメージが湧いてきました。これならできそう。

 ところで、重力って英語でなんて言うんでしたっけ?」


「おそらく、グラビティーだと思う。間違ってたら赤面だが、多分間違いではないはずだ」


「それじゃあ、試してみます。

 グラヴィティー!」


 華ちゃんから少し離れ、草木が何も生えておらず、むき出しだった3メートル四方ほどの地面が10センチほど沈下した。


「凄いな。ホントにイメージできさえすれば魔法が使えるようになっちゃうんだ」


「自分でもおかしいとは思うんですが、なぜかできちゃいそうな気持ちになるんです」


「なるほど。そういうものなのかもしれないな。

 これで基礎工事は簡単に終わる。ますます俺の日曜大工の腕前が大切になるな」




 思わぬ収穫で華ちゃんがグラヴィティーなる重力魔法を使えるようになった。見た限りでは範囲魔法なので、ダンジョン探索中でもかなり使いでがありそうだ。



 それから裸足になって30分ほど泉の水際を歩いたりしてゆっくりしたあと、


「そろそろ帰るか」と、俺が華ちゃんに言うと、


 華ちゃんは頷き、ピョンちゃんに向かって、


「そろそろさよならするね」


 そう言うとピョンちゃんは聞き分けよく頷いて、最初の木の枝に羽ばたいていった。


 絶対にピョンちゃんは華ちゃんの言葉を理解している。


 華ちゃんが軽くピョンちゃんに手を振ってその後俺の手を取ったところで、俺たちは屋敷に戻った。



 その日は夕食のあと、華ちゃんとリサが風呂から上がったところで予定通りみんなを居間に集めケーキをだしてやった。


 みんなの幸せそうな顔を見ていると、甘い物は偉大だとつくづく思うよ。


『幸せは、満足にある』という言葉があるが、この満足とは足るを知るということではなく、甘味を食べて満足するってことだ。


 俺は寝る前の日課の金錬成を終え、その日も満足してぐっすり眠ることができた。



 翌日。


 物置小屋を建てるため、朝から作業員がやってきて、資材も搬入されるということなので、門を開け放しておいた。


 朝食を終え、子どもたちを配達に送り出したあとしばらくして、商業ギルドが寄こした作業員が4名ほどやってきた。


 お互いにあいさつを済ませた後、


「ここですね」


 作業員の親方に物置小屋の建っていた場所を教えた。


「土間だった場所はしっかりしていますから、拡張部分の地面を均していきます」


 作業員たちは、玄関わきで軽快な音を立てている発電機をチラ見していたが特に何も言うことなく、作業を始めた。


 まず丸太を3本組んだだけの櫓の下に突き固め用の太くて短めの丸太を置いて、それを親方の合図で3人の作業員が滑車で釣り上げ、一気に落とすを繰り返し地面を固めていった。同じ場所で何回か突き固めたら、櫓を移動させ突き固めを繰り返す。華ちゃんを呼んで例の重力魔法なら一発だが、先方の仕事を取るわけにはいかないので、作業を眺めているだけにした。


 そうこうしていたら、資材を積んだ馬車が数台到着して、作業員たちが地固め作業している少し先に資材を置いていった。


 地盤の突き固め作業は昼前には終わり、作業員たちは休憩に入った。俺はリサに、氷の入ったボウルを渡して、作業員たちに冷たくしたお茶を出すように言っておいた。


 車座になって弁当を食べ始めた作業員たちに、リサができ上った冷たいお茶をグラスに入れて持っていったらエラく感謝されたそうだ。



 午後に入り、作業員の親方は、資材の中にあった短い杭を頭が地面から20センチくらいになるよう木槌を持った作業員を使って打ちこんだ。杭が打ち込まれた場所は、焼けた物置小屋土間の角だ。次に親方は、その杭の上に板のついた三脚を置いた。その板の中心の裏側から先のとがった錘が下げられている。親方は錘が杭の真上に来るよう三脚を動かした。


 位置が定まったところで、水準器で三脚の上の板を水平にした親方は、板に置いたおそらく磁石を見ながら板の方向を調節し、2本の筒の付いた器具を板の上に置いた。2本の筒はお互いに直角で、片側を何かに合わせ、もう片方を覗くと、直角がとれる仕組みのようだ。


 作業員は、巻き尺の一端を持って杭の頭の真ん中に合わせ、もう一人の作業員が巻き尺を伸ばしていく。巻き尺を伸ばした作業員の位置を親方が筒を覗いて修正して、OKを出した場所に3人目の作業員が杭の尖った先を当てた。その杭を最初の作業員が巻き尺を放して木槌で打ち込んだ。


 次に親方は、もう片方の筒を覗き、親方に指図された作業員たちによって3本目の杭が打ち込まれた。


 親方は3本目の杭の上に三脚を移動し、1本目の杭を片側の筒で真ん中でとらえるよう板の方向を調節し、その筒に直角な2本目の筒を覗いて4本目の杭が打ち込まれた。


 最後に親方は4つの杭の頭に糸を張って長四角を作り、水準器でそれぞれの糸が水平になるよう杭を打っていった。


「今日の作業はここまでです」


 そう言って親方を先頭に作業員たちが帰っていった。



 子どもたちも工事に興味があるようで、空いている時間俺の傍に立って作業を眺めていた。





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ラブコメ風味のものを試しに書こうと書き始めたのですが、途中で魔が差し、その結果どこにでもある悲恋系の何かを書いてしまいました。


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