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第90話 物置小屋1

誤字報告ありがとうございます。


 商業ギルドで物置小屋の新築を依頼したあと、他に用事のなかった俺は屋敷に戻った。リサは買い物に出ていて、華ちゃんと子どもたちは屋敷中の窓を開けて家の中の拭き掃除をしていた。



 みんながせっせと働いている中、俺はソファーに浅く腰を掛けてふんぞり返り、次の近代化計画について思いをはせていた。


 こんど物置小屋ができ上れば、それをコピーして楽園にコピーを設置すれば別荘にできる。ここが暑いときは避暑地、寒いときは避寒地だ。


 しかし、電気のない生活は暇である。本でも仕入れておけばよかった。こんど日本にいったら本屋にいって大人買いしてやる。



 などと、妄想していたら、リサが買い物から帰ってきたようだ。居間に顔を出したリサが、


「ご主人さま、いらっしゃったんですね。

 お茶でもご用意しましょう」


「サンキュウ」


 簡単にお茶を頼んだが、今は電気がなかったことを思い出し、居間を出ようとしていたリサの後ろ姿に向かって、


「リサ、お茶はやっぱりいいから」と、断っておいた。電気は必要だよな。


 ということで、急場をしのぐため、玄関先の軒下に発電機を置くことにした。



 発電機のレシピは錬金工房にあるし、材料は昨日スクラップになってしまった2台の発電機を含め素材ボックスに十二分にある。


『コピー』


 声に出したわけではないが、発電機のコピーを作り、玄関先に置いた。コピー発電機にはオイルもガソリンも入っているのでそのまま起動できる。


 昨日玄関先で輪にしてまとめておいた100V用と200V用の電線の先に各々プラグを取り付け、発電機のコンセントに差し込んだ。


「準備OK」


 さっそく手順通り発電機を起動したら、良い感じでエンジンが回った。屋敷の中で今現在何個かのスタンド型電灯が点いているのだろうが、普通に発電機が起動したところを見ると、問題なかったのだろう。


 いい気分で、玄関の扉を開けて中に入ったら、2階を掃除していたらしい華ちゃんたちが階段から下りてきた。


「発電機直ったんですか?」


「昨日の発電機はもちろんお釈迦だけど、予備はあるんだ」


 華ちゃんには俺が一度でもコピーを含め錬成したことのあるもののレシピを覚えていつでもそのコピーを作れることは言っていないはずなので、予備の発電機を使ったことにしておいた。


「急場しのぎだけど、玄関わきに発電機を置いておいた。

 明日から、新しい物置小屋を建てるために工事が始まって、3日ででき上るらしい。そしたらちゃんと発電機を置こう」


「そんなに簡単に物置小屋ができるんですか?」


「木造の小屋だし、床もなければ内装もないわけだから、そんなものだろ」


「そうなんだ」


「今回は雷で燃えて、危うく大爆発するところだったが、次回はジーゼル発電機にしようと思う」


「前のはガソリンで、次はディーゼル。どう違うんですか?」


「前の発電機の燃料は文字通りガソリンで、ガソリンというのは常温で気化してガスになる。このガスに適量の酸素が混じり何かのきっかけがあれば爆発するんだ。昨日は運よく酸素の量が少なく大爆発しなかったんだと思う。

 それでジーゼルは本来エンジンの発明者の名まえをとったエンジンのことなんだが、その燃料の油のこともジーゼルと言うようになったんだ。日本では軽油のことをジーゼルと言うらしいな。で、その軽油だが、ガソリンと違って常温では気化しないので火が着きにくいんだよ。言い換えれば、ガソリンと比べよほど安全なわけだ。

 欠点というほどではないが、ガソリンエンジンと比べジーゼルエンジンは比較的頑丈に作る必要があるそうで大きく重くなるみたいだな。今の説明()適当だから詳しく知りたかったら、日本に帰って検索してくれ」


「今の説明で、よく分かりました」


 まっ、華ちゃんのお世辞だろうけどね。


「それで、岩永さんはこんどいつ日本にいかれますか?」


「物置小屋が新しくできたらそれをいったんコピーして、楽園にコピーを置こうと思ってるんだ。物置小屋でも楽園に置けば別荘になるんじゃないかと思ってな」


「いいですね。

 泉はあまり広くはなかったけど、別荘ができたら泳いでみたいな」


「華ちゃん、泳ぎは得意なのかい?」


「中学の時は水泳部でした」


「そいつはすごい。

 そう言えば、ピョンちゃんに2、3日会っていないから、午後からでも別荘予定地の下見のついでに会いにいってみるか?」


「はい!」



 俺と華ちゃんが立ち話しているあいだも、子どもたちは俺たちの立っている玄関ホールから居間や食堂の掃除をしていた。よく働く子どもたちである。感心なので、今日は昼食と夕食にデザートを出してもいいな。




 昼食が終わり、予定通りアイスクリームをみんなに配った。夕食のあと、華ちゃんとリサが風呂から上がったら、居間でケーキを出すことにしよう。


 午後からは、楽園のピョンちゃんの顔を見に行くだけだから、防具はいいだろうということで俺も華ちゃんも、普段着のままだ。



 華ちゃんが俺の手を取ったところで、転移。行き先は楽園の中心で下り階段のある空き地だ。


 前回同様ピョンちゃんは最初の木の枝に止まっていた。


 俺たちが現れたのを見つけたとたん、ピヨン、ピヨンと、鳴きながら華ちゃんに向かって羽ばたいて、華ちゃんの右肩に止まった。そのあと、しきりに自分の頭を華ちゃんの耳や髪の毛にこすりつけていた。オウムのくせに犬みたいなやつだ。


 華ちゃんも嬉しかったようで、近くに生っていた赤い実を摘み取ってピョンちゃんにやったら、ピョンちゃんがその実をついばむのだが、半分くらい華ちゃんの上着の上にこぼれている。洗濯は大変だろうが、華ちゃんはニコニコしていた。


 華ちゃんの汚れてしまった上着を見て、やはり洗濯機を何とかしたくなった。


 今は井戸の近くで手洗いしている洗濯も、電気洗濯機があればかなり楽になる。ネックは水道だ。やはり井戸に電動ポンプを取り付けて、屋敷の中、少なくとも洗濯機の排水が流せる風呂場の近く、脱衣所だな、それと台所に水を送りたい。別荘よりこっちの方が優先度が高い。俺の日曜大工で出来るようなものなのか、はたまた、この前の電気工事のようにホームセンターの人を屋敷に呼んで工事をしてもらうか。無難なのは後者だな。


 自衛隊の山本中隊長の言ったように俺が大手を振って歩けるのなら、ダンジョンの出現した日本から不思議の国に作業員を連れてきても、前回の電気屋さんのように気にも留めない可能性が高い。すべては自衛隊次第。明日にでも様子を見にいってみるか。自衛隊からスマホに連絡が入っているかもしれないしな。スマホは今持っているから、アパートからなるべく遠いところに現れて受信だけすれば十分だろう。



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