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第8話 冒険者ギルド、錬金術師ギルド

誤字報告ありがとうございます。


 冒険者ギルドの売店でヒールポーションを売って小銭を稼いだ。


 冒険者証があると何かと便利らしい。ラノベ知識なので本当かどうかは不明だ。それでも、せっかくだから冒険者登録をしておこうと思ってカウンター(まどぐち)の列に並んでやった。


 待つことしばし。テンプレのベテラン冒険者からの絡みもなく俺の番になった。


「冒険者ギルドにようこそ」


 来ました、定型フレーズ!


 ギルド嬢はこの世界で初めて見る美形のお姉さんだった。金髪がきらめいていらっしゃる。口元のえくぼがキュートだ。


「冒険者になりたいんですが」


 思い過ごしかもしれないが、ギルド嬢は俺の顔を見て一瞬怪訝(けげん)な顔をしたような気がした。冒険者の新規登録で27歳のおっさんがやってくるのは珍しいのだと思う。それでもギルド嬢はプロなので、


「まずは登録ですね。この用紙に必要事項をお書きください。登録料は銀貨三枚になります。代筆は必要ですか?」


「いいえ、自分で書けます」


 代筆が普通に必要とされるのなら、この国限定かもしれないが、識字率は高くないのだろう。銀貨三枚をギルド嬢に渡し、用紙を受け取った。


名前:ゼンジロウ

出身:ニホン

性別:男

生年月日


「いま27歳で、5月6日生まれなんですが、生年月日の生年は何年になりますか?」


「今日が652年5月4日ですから、28引いて624年ですね」


生年月日:624年5月6日

職業:錬金術師

特技:杖術


 書き終わった紙をギルド嬢に返した。


「ギルド証を作りますので、しばらくお待ちください」


 列を離れて、しばらくぼーとしていると俺を呼ぶ声がする。


 先ほどとは違う窓口で違うギルド嬢が俺にギルド証を渡してくれた。この人もかなりの美形だった。こげ茶がかった黒髪。ブルーネットというのかな。ややキツそうな顔立ちだが俺の好みだ。手渡されたギルド証の素材は銅でできているようだ。新品の十円玉と同じようによく光っている。


 ギルド証には名前やら、生年月日やらが彫り込まれていた。失くさないようにポケットに入れるふりをして、アイテムボックスに収納しておいた。


「ゼンジロウさんはFランクの冒険者として登録されています。登録された冒険者は、常設依頼と自分のクラスの一つ上のクラス以下の依頼を受けることができます。ゼンジロウさんは最低ランクのFランクなので、現在受注可能な依頼は、FランクとEランクおよび常設依頼となります。ギルドへの貢献度によって、ランクは上下します。もちろん、Fランクではランクが下がりませんが、貢献度のマイナスが続くようですと、ギルドからの除名になります。ちなみに、FランクからEランクへは、まじめに依頼をこなしていけば早ければ半年、遅くとも一年で昇格出来ます」


 長ければ一年か。ずいぶん長いな。


「わかりました。ありがとうございます」


 そう言って俺は冒険者ギルドを後にした。新人いじめといったイベントがなかったのは残念だが、逆に言えば冒険者の質というかモラルは高いのだろう。


 冒険者ギルドの次は、さっき売店で話に出た錬金術師ギルドだ。




 歩いている人に道を聞きながらやってきました錬金術師ギルド。


 先ほどの冒険者ギルドと比べ建物が立派だ。こちらはかなり羽振りが良いようだ。


 大きなドアを開けて中に入ると、内装も立派だった。床なんかは大理石? 冒険者ギルドのホールの床は汚れた板張りだったよ。


 予想に反して、中には人気がなかった。奥の方が事務室になってるのか。ここはただの玄関ホールだな。


「ごめんください! ポーションを売りたいんですが?」


 玄関口で、大きな声で自己主張してみたところ、


「ポーションをお売りならこちらにどうぞ」


 事務室とおぼしき部屋のドアが開き、身なりのよろしいお兄さんが現れた。


 招かれるまま、玄関ホール脇にある階段を上り二階の部屋に招き入れられた。


 低めのテーブルとソファーが置いてあった。ここは応接間らしい。


「おかけになって、しばらくお待ちください」


 そう言ってお兄さんは帰っていった。


 窓口に人ぐらい置けよ。儲かってるんだろ!


 部屋に入って、ソファーに座り寛いでいると、


「失礼します」


 美形のお姉さんが部屋に入ってきた。運んできたお盆の上の紅茶カップを俺のすぐ前のテーブルの上に置いてくれた。


「どうも」


 そのお姉さんはそのまま俺の向かいに座ったのでちょっとびっくりしてしまった。お茶を出しに来ただけじゃなかったようだ。


「私は当錬金術師ギルドの副ギルド長を務めますマリー・カズハと言います。ポーションをお売りとのことですが?」


 錬金術師ギルドは儲かっているハズだと俺は思いこんでいたが副ギルド長がお茶を運んでくるほど人手が足りないのか? 本当のところを聞いてみたいが、聞けないよな。


「失礼しました。私の名前はゼンジロウと申します。いちおう錬金術師です。この町は初めてなのですが、錬金術師ギルドさんではLv1ポーションでも良い値段で買い取っていただけると聞いたもので、それをお売りしたいのですが」


「どこで、そういったうわさを? 失礼ですがゼンジロウさんの錬金術のレベルはいかほどですか」


「かまいませんよ。私のレベルは3です」


 何も錬金術のレベルとは言っていない。ワタシウソツカナイ。


「その若さで、錬金術の最高レベルですか。にわかには信じられませんが、ポーションを拝見出来ますか?」


 あれ? 錬金術の最高レベルってたったの3? 俺の錬金術レベルはマックスで数字にすれば10だったハズ。


「どうぞ」


 アイテムボックスで、劣化ポーションをすかさず作成し、ポケットから出すように見せかける。


 彼女は俺から受け取ったポーション瓶の蓋を外し、瓶を傾けて器用に手の甲に一滴だけ垂らして、舌で舐めた。


「Lv1ヒールポーションというよりLv2に近いポーション。これをLv1ヒールポーションの値段、今ですと銀貨二十一枚で売っていただけるのですか?」


 この人もポーションの鑑定ができるようだ。


「ええ、銀貨二十一枚でしたら問題ありません。なにせ冒険者ギルドでは銀貨七枚ですからね」


「冒険者ギルドですか。商売を知らない人がやっているとギルド経営も難しいですよね。それで、お売りになるポーションは何本ほどになりますか?」


「とりあえず今日は百本ほどお売りしたいんですが」


「百本も! いいえ失礼しました。百本ですと金貨二百十枚ですね。明日以降もお売りいただけるなら願ってもないです」


「それでは、明日以降もお持ちしますのでよろしくお願いします。では、さっそくですが、このテーブルの上に出していきますね」


 アイテムボックスで十本ずつポーションを作りながらテーブルの上に並べていく。


「……、九十九、百。ちょうど百本。ご確認ください。ああ、最初の一本は差し上げます。試供品です」


「……、錬金術が最高位《レベル3》のうえにアイテムボックスもお持ちなんですね。いま代金をご用意しますので、しばらくお待ちください」


 そう言ってマリーさんは部屋を出て行った。


 出されたお茶を飲みながら待っていると、マリーさんがお盆をもって帰ってきた。お盆の上には金貨の入った小袋。


「お確かめください」


 小袋の金貨をいったんお盆の上に出して勘定して、出された領収書にサインした。


 金貨を小袋に入れ戻してアイテムボックスに収納し、部屋を出ようとした俺に、マリーさんが、


「ゼンジロウさん。もしよろしければ、錬金術師ギルドに加盟しませんか? 通常ですと、ギルドに加盟するには、この町の有力者や、高名な錬金術師さんの紹介などが必要になるのですがゼンジロウさんほどの方なら大歓迎です」


「ギルドに入ると私にはどういったメリットがあるのですか?」


「当ギルドではギルドメンバーに対し素材の安定供給と、ポーションの定額買取を行っております。これがギルドメンバーにとっての最大のメリットとなります。かなり希少な錬金素材も扱っておりますし、要望があればメンバーに代わって錬金素材を取り寄せることも可能です。しかもギルドメンバーへの錬金素材の販売価格は、通常の価格の10パーセントから30パーセント引きになっております」


「では、デメリットは?」


「デメリットかどうかはわかりませんが、ギルドメンバーは、最初に入会金として、金貨一枚。ギルドへのポーション売却総額の5パーセントを1年後一括して支払う義務が発生します」


 俺にとっては何も旨味はないし、面倒なだけだ。


「そうですか。錬金術師ギルドへの加盟は考えさせてください。今後ともよろしくお願いします」


 残念そうにされても知らん。


 こうして俺は、錬金術師ギルドを後にした。





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完結ローファンタジー『異世界で魔王と呼ばれた男が帰って来た!』

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99万3千PV。よろしくお願いします。(残酷描写ありは保険ではありませんが、当社比なのでそれほどでも?)

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― 新着の感想 ―
[一言] こんなに敵陣の間近のギルドで、堂々と出身ニホンとかけるのは鋼のハート持ってるに違いない。
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