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第78話 真・第2層

いつもながら、誤字報告ありがとうございます。


「うっ」ちょっとげっぷが出てしまった。


 握りはあらかたけてしまい、巻物はほとんど手が付けられないまま残っている。巻物は俺の夜食にとっておこう。


「お茶のお替わりが欲しい人は?」


 3人手を挙げたので、ティーバッグを湯のみの中に入れてやり、60度のお湯を注いでやった。


「きょうはこんなところかな」


 天ぷらはそのうちだ。


「テーブルの上を片付けたら、居間に移動して、今日はアイスだ。

 無理して食べなくてもいいけどな」


「いいえ、アイスクリームなら」「「食べられます!」」


 アイスは最強ということか。


 俺は最後に3個ほど残っていた握りを無理やり口に押し込んで、残った巻物はアイテムボックスに仕舞い、俺以外全員でテーブルの上のものを片付け、ゴミ関係は俺が引き受けたのであっという間に後片付けは終わった。


「ふー、食った、食った。居間にいって音楽でも聞いていよう」


 俺もお腹はパンパンだ。


 みんなでぞろぞろと居間に移動して、思い思いの場所に座って音楽を聞いた。CDは全部プレーヤーを置いた台の横に並べているのでいつでも聞くことができる。今では子どもたちもプレーヤーを操作できる。


 今回はイオナの選曲で、流れたのは、ベートーベンの『月光』だった。少し暗い感じのする曲だが音楽の素養などまるでない俺でも知っているメジャーなピアノ曲だ。


 こういった名曲を聞いていれば頭が良くなるに違いない。なぜなら俺の頭が良くなかったのは子どものころ音楽が大嫌いだったから、と自己分析しているからだ。どうだ、説得力があるだろ?


 俺は今日の午後日本であったことをしばし忘れて曲に聞き入っていたのだが、ピアノの調子が急に激しくなったことでアイスのことを思い出し、みんなのリクエストに応えて、コーンに乗っかったアイスを配ってやった。


 しばらく音楽を聞いていたら、午後9時の鐘が聞こえてきた。子どもたちは既に2階に引き上げている。


「岩永さん、おやすみなさい」「ご主人さま、おやすみなさい」


 そう言って、華ちゃんもリサも2階に上がっていった。


 俺は人のいなくなった居間の長椅子ソファーに寝転がってCD(おんがく)を聞きながら、明日からのことを考えていた。


『俺のアパートの部屋にまで乗り込んでまで見張っているとは思えないが、当分の間アパートには近づかない方がいいな。

 特に必要なものがあるわけじゃないから、日本に帰らなくても困ることは当面ないだろう。

 しばらくダンジョン攻略を進めておけばいいか』


『しかし、日本にダンジョンか。洞窟型のダンジョンだということは、こっちのダンジョンとは違うんだろうけど、自衛隊で調査中という話だが、罠とか大丈夫なのか?』


『明日はピョンちゃんの様子を見てから、あそこの階段を下りてみるか』


『日課だから寝る前に錬金だけは続けるけど、こうなってくると、金も売れないよな』


『そろそろ俺も寝るか』


 居間の電気スタンドを消した俺は、2階に上がって自室に戻り、部屋に置いたスタンドを点けることなくベッドに横になって、日課の金のサイコロを作ってその日もぐっすり眠った。



 翌朝。


 朝の一連の用事を済ませ、俺と華ちゃんは防具に身を包み、まず楽園へ飛んだ。行き先は楽園の中心の空き地、下り階段があるところだ。


 俺と華ちゃんが楽園に現れたら、羽ばたきがが聞こえて、ピョンちゃんが華ちゃんに向かって飛んできた。すぐにピョンちゃんは華ちゃんの肩の上に止まり、しきりに華ちゃんのヘルメットから出た黒髪に顔を擦り付けていた。


なつかれてるなー。羨ましい」


「えへへへ。ピョンちゃん元気でよかったー」


「こうなると、連れ歩かないとマズそうだな。

 仕方ないから、ピョンちゃんを連れてダンジョン探索だ。今までピンチになったこともないから、どうってことないだろ。

 帰りには、いったんここに寄って、ピョンちゃんを置いておこう」


「はい。

 ピョンちゃん、よかったねー。ちゃんとわたしの肩の上にいるんだよ」


 ピヨン、ピヨン。


 偶然だと思うが、華ちゃんの言葉が分かったようにピョンちゃんが頭を縦に揺らしながら二度鳴いた。


「今日はどこにいきます?」


「この階を見て回りたかったが、そろそろ勇者たちもやってきそうだろ?」


「そうですね」


「だから、今日はそこの階段を下りてみようと思うんだ」


 俺はそう言って台座の上に大金貨を置いたらカチリという音と一緒に下り階段がその先に現れた。


「分かりました。

 ピョンちゃん、ちょっと眩しいけど我慢してね。

 ライト!」


 華ちゃんの頭の上でライトの魔法の光が輝いた。いつもより幾分高い位置で輝いているような気がする。


「じゃあ、いこうか」


「はい」


 華ちゃんがデテクトなんちゃらを階段に向かってかけ、異常のないことを確認して、いつものように俺が先頭になって階段を下りていった。


 1、2、3、……、47。


 あと3段ほど残したところで、後ろから華ちゃんが階段の降り口の先に向かってデテクトなんちゃらをかけた。どの程度の範囲が対象なのか俺にはわからないが、見た感じどこにも赤い点滅はなかった。


 48、49、50。


「今回は50段だったな。こっちがホントの第2層だよな。まさに、『真・第2層!?』だ」


「そうですね。300段も昇り降りは大変ですけど、50段くらいならスタミナの魔術も要りませんしね」


 俺の冗談は、華ちゃんには通じなかったようだ。ラノベもweb小説も読んでいないって言ってたものな。


「まったくだ」


「しかし、この層は今までと違って洞窟型だ。こっちの方がダンジョンらしくなってきたな」


「ダンジョンらしい、らしくないで言えば、今までの石造りのいかにもなダンジョンの方が地下牢ダンジョンらしいような」


「うん? よく考えたら華ちゃんの言う通りだな。俺の感覚の方が変だった。

 まっ、それはいいや。

 ピョンちゃんもおとなしくしてるし、これなら半日程度、連れまわしても平気だな」


「ですね。

 ピョンちゃん、偉かったねー」


 好きにやってくれ。


 階段を下りた先は、とりあえず一本道の洞窟だった。進んでいけばいずれ枝道も現れるだろう。


「華ちゃん、見ての通りの一本道だけど、いずれ枝道が現れると思う。そしたら、背後からモンスターが現れることも十分考えられるから、注意を忘れずにな」


「はい。

 何か背後を警戒できるような魔術ができないか考えてみます」


「そういった魔法があれば、役立つよな。どんどん新しい魔法を作っていってくれ」


「できるだけ頑張ってみます!」


 優等生ライクな華ちゃんのことだから、どんどん新しい魔法を生み出しそうだ。そういえば華ちゃんは魔法のことをいつも魔術と言ってるけど、変なこだわりでもあるのかね?




他の作品にも書いているのですが、魔法は魔力を使う本源的な何かで、魔術は魔法をなにがしか工夫して人が使いやすくした技術ととらえています。従って、魔法を使えるモンスターはいますが、魔術を駆使するモンスターは登場しません。三千院華は神殿の座学でそういったことを習っているため魔術と魔法を区別しています。

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