第71話 ピョンちゃん2
ピョンちゃんを連れていつもより早く屋敷に帰ったのだが、着替える前にピョンちゃんの鳥かごを作って中に入れた方がいいと思い、革鎧と手袋それにヘルメットを取ってワーク〇ンスーツになった俺は居間の中で鳥かご製作を始めた。
作り方は一度針金を錬成し、それを曲げたりくっつけたりして、かなり大きな鳥かごができ上った。直径で1.2メートル。高さで2メートルはある。鳥かごの底の受け皿は厚手の鉄板で作ったので全体の重さもかなりある。
止まり木になるような木や枝がなかったので、そういったものが錬成できるか試してみたところ、絵心がないせいかうまくいかなかった。木や枝は諦めて、プラスチックの棒のようなものを作って、それを鳥かごの下から3分の2くらいの高さで固定しておいた。
俺が錬金工房で鳥かごを作っているあいだ、華ちゃんの肩の上でピョンちゃんが「ピヨン、ピヨン」と、高い声で鳴くものだから、子どもたちが集まってきた。華ちゃんはヘルメットと手袋はとっているが革鎧はまだ着たままだ。
「鳥だ!」
「オウムのピョンちゃんよ」
「ハナねえさんがかうの?」
「そう」
「かわいいなー。さわってもいい?」
「ちょっと待ってってね。
ピョンちゃん子どもたちに触らせてあげてね。
これで大丈夫。
でも、一度じゃなくて順番よ」
「うん。
それじゃあ、わたしからいくね」
エヴァがそーっと手を伸ばしてピョンちゃんの頭を軽く撫でてやったら、ピョンちゃんは目を瞑って気持ちよさそうにしていた。
エヴァの次にオリヴィア、その次にキリア、最後にイオナがピョンちゃんの頭を撫でてやった。誰が触ってもピョンちゃんは目を瞑って気持ちよさそうにしていた。
チクショウ。俺の時は嫌がったくせに。こいつはオスに違いない。それも鼻の下の長いオスだ! そんなことを心の中で考えてはいても作業だけはきちんと終えた。
「よーし、鳥かごができたぞ」
俺が今回作った鳥かごは、かなり大きな鳥かごなので小柄な人間ならしゃがめば入り口から中に入ることができる。
華ちゃんがピョンちゃんを肩に乗せて鳥かごの中に入り、ピョンちゃんを止まり木に止まらせた。鳥かごの底には、俺が錬成した鉄製の水入れとエサ入れが置いてある。水入れには水を入れているがエサ入れは空だ。
「ピョンちゃん、いい子にしててね」
そう言って華ちゃんは鳥かごから出てきた。
「エサはとりあえず、楽園リンゴでもやっておこう」
楽園リンゴを1つ取り出した俺は、包丁の持ち合わせがなかったので、ダンジョンで見つけたナイフで楽園リンゴを8等分にしてかごの外から手を入れてエサ入れに置いてやった。見た目通りそのナイフはよく切れた。
俺がエサを入れ終わり手を引っ込めたら、ピョンちゃんはすぐに止まり木からエサ入れの前に飛び下りてきて、あっという間に8等分した迷宮リンゴを一切れも残さず食べてしまった。
「お腹が空いていたのかな? それにしてもあの大きな楽園リンゴを食べてしまって大丈夫なのか?」
見た目、ピョンちゃんのお腹は膨らんでいるようには見えなかったが、止まり木に帰るわけでもなく、エサ入れの前に突っ立っている。
「ひょっとしてまだ食べたいのか?」
エサをやりすぎれば死ぬ可能性もあるので、やたらとエサはやれない。と思うのだが、どうしたものか。そう言えば、オウムってどういった巣で生活してるんだろう。オウムだって巣を作っているよな?
「華ちゃん、オウムも寝なきゃいけないから巣があった方がいいんじゃないか?」
「カゴの中にタオルでも敷いておきましょうか?」
「それで良さそうだな。
台所にカゴがあるはずだから1つ持ってきてくれ」
子どもたちに頼んだら、一人でいけばいいものを4人で走って取りにいってくれた。
すぐにカゴを持って帰ってきたので、カゴの中に子ども用のバスタオルを敷いてピョンちゃんの寝床を作ってやった。
それを持って華ちゃんが鳥かごの中に入って水入れやエサ入れから離して置いてやったら、ピョンちゃんはそこに歩いていき、中に入ってゴロンと横になった。疲れていたのかもしれないが、よく考えたら楽園オウムなる未知の生物なわけで、日本でペットとして売られているオウムと生態が同じはずはない。様子を見ながら対応するしかないが、華ちゃんが面倒を見る以上間違いはそうそう起こらないだろう。
翌日。
昨日はピョンちゃんのおかげで中途半端なダンジョンアタックになってしまった。
そのピョンちゃんだが、楽園リンゴを食べたあと、カゴとタオルで巣を作ってやったらすぐ中に入って寝てしまった。それでも夕食時には起きだしたようで、気付けば止まり木に止まっていた。
フンとか下に落ちてないかよく見たのだが、フンは落ちていなかった。
あれだけのものを食べて、出さないとなるとかなりマズいような気がするのだが、お腹は出ているわけでもなさそうだし、見た目は具合が悪そうでもない。
今日の午前中、華ちゃんはピョンちゃんの世話だ。ピョンちゃんのエサ用に、多いだろうが少ないよりはマシと思って、楽園リンゴを2つ華ちゃんに渡しておいた。
俺は日本に帰って、消耗品の補給だ。まずは牛乳。それから小麦粉も。そう言えば、ここニューワールドでフライは見かけたことがない。天ぷらに至っては当然目にしていない。この街自体の立地を知らないのだが、サカナは目にするがエビは見たことがない。俺の腕で天ぷらを揚げるなどはおこがましいので、スーパーの総菜か、そこらの天ぷら屋で持ち帰りでも買っておこうか。
天ぷらのことを考えていたら、ソバ、ウドンも食べたくなってきた。そしたら今度は握り寿司も食べたくなってきた。かなり小さな欲望かもしれないが俺の欲望には際限ないのだ!
「リサ、今日の昼食は俺が用意するから、サラダだけ用意してくれるか?」
「はい」
今日の昼はフライドチキンとコーラで夕食は握り寿司と天ぷらでいくか。
「夕食も俺が用意するからそっちもいいや」
「夕食もサラダをお付けしますか?」
「夕食にはサラダはいいからゆっくりしてていいよ」
寿司と天ぷらにサラダは合わないような気がするので夕食ではサラダは断っておいた。
「それじゃあ」
「いってらっしゃいませ」
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