表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/526

第55話 冒険者ギルド、初めてのカラミ!


 ワーク○ンでとりあえずの防具を揃えた俺と華ちゃんはいったん屋敷に転移で戻った。


 街の防具屋にいって革の上下を揃えるためだ。防具の寸法を取るのなら、本当はワーク○ンで買った上下を着ていったほうがいいのだろうが、さすがにあれだけを着て歩きまわるのはこっちの世界では奇異だし、吊るしの鎧があるなら、それを買って寸法の調整は後から錬金工房で簡単にできるのでニューワールド用の普段着に着替えて買い物にいくことにした。


「防具屋の場所って、やっぱり華ちゃん知らないよな?」


「うーん、街の中心より少し離れたところじゃないでしょうか?」


「どうして?」


「革の加工とか、金属の加工は臭いも音もでるでしょうから、街の中心では難しそうな気がします」


「たしかに。キューポラのある街も鋳物工場はどんどん町の外に追いやられたようだしな。

 仕方ないから素直に冒険者ギルドにでもいって尋ねてみるか」


「冒険者ギルドってあるんですか?」


「冒険者という連中に仕事を斡旋する口入れ屋のようなもんだ」


「そういえば、イオナちゃんたちがポーションを届けてるといっていましたね」


「お得意さんの一つだ。

 じゃあ、冒険者ギルドに先に行ってみよう」


 華ちゃんが俺の手を取ったところで『転移!』


 冒険者ギルドの建物の横の路地に現れた俺たちはさっそく表に回ってギルドの中に入っていった。俺は忘れないようにアイテムボックスから取り出した銅製の冒険者証をクビから下げておいた。


 受付には人が並んでいなかったので、華ちゃんを連れて適当な受付嬢のところにいった俺は、


「すみません」


「はい。何でしょう?」


「まだ田舎から出てきた新人なんですが、このあたりで防具を売っている店を教えてくれませんか?」


「それでしたら、正面玄関を出て、左手に100メートルほどいくと、左手にボーリー防具店、その向かいがキレーヌ武器店になります。どちらの店も武器も防具も売っていますが、店名通りボーリー防具店は防具の品数が多く、キレーヌ武器店は武器の品数が多くなっています」


「ありがとうございます」


 俺の感覚では一般受けしそうにない店名ではあるが、そこは文化の違いということなのだろう。


「じゃあ、変な名前だけどボーリー防具店に行ってみよう」


「はい」


 俺が華ちゃんを連れて冒険者ギルドを出ていこうとしたら、ホールの奥の方から男の声がした。


「おい、そこの歳食った(・・・・)新人。若い女を連れて買い物のようだな?

 どうだ、その金を俺に払えば冒険者のABC(イロハ)を教えてやるぜ。防具なんかよりよほど役に立つぜ」


 歳食った新人か。たしかにこの歳で新人冒険者は珍しいかもしれない。


 振り返ると、筋肉質で大柄な男がドシドシと音を立てて俺たちの方に近づいてきた。顔は傷だらけで、いかにも強面こわもてなのだが、顔が傷だらけということは、ガードが甘いということだろう。それでもしぶとく生き残っているということは、よほど丈夫なのか運がいいのか。


 素手でまともにやりあえば、俺なんかでは相手にならないだろうが、まともにやり合う必要などどこにもない。俺も根は優しいので、


「なんか用ですか?」と、下手に出てやった。錬金工房の中では薄い瓶の中に塩酸を作っている。男の頭の上に排出すれば簡単に瓶は割れ、男は塩酸まみれになる。


「さっき言ったとおりだ。俺に授業料を払えば冒険者のABC(イロハ)を教えてやる」


「授業料はいくらですか?」


「安くしてやるぜ、1時間当たり銀貨5枚。2時間で金貨1枚だ」


 俺の懐具合から言ってたしかに安いが、この図体ばかりでかい目の前の男に人を教えるような芸当ができるとはとても思えない。結論として断ることにした。


「2時間で金貨1枚程度のことしか教えられないようなら間に合ってるんで、そんじゃ」


「なにー!」


「たいして実力なさそうな男に付き合うのならこちらがお金をいただきたいくらいだ。と、やんわり言ったまでです」


 男は俺の言葉を理解したようで、顔を怒気で赤らめ、腰に下げた剣の柄に手を伸ばした。


 俺は塩酸をアイテムボックスに用意していたが、なんだかおっさんがかわいそうに思えて、塩酸の代わりに如意棒を取り出し構えてやった。如意棒の先端はおっさんの眉間の直ぐ前だ。


「わたしは冒険者とすれば確かに新人だけど、こっちは新人じゃないかもしれないんですよ」


 そう言っておっさんの眉間を如意棒の先で小突いてやった。


 おっさんはそれだけで後に一歩下がった。


 俺がアッチにいけとアゴで合図したら、おっさんはすごすごとホールの奥に引っ込んでいった。


 剣術のレベル3は剣聖クラスだったハズ。俺の杖術レベル3はそれに匹敵すると考えれば、そう簡単に俺が遅れを取ることはない。闇雲に喧嘩を売る必要はないが、降りかかる火の粉は払うまでだ。『勝つと思うな思えば負けよ』という言葉があるが、実際は勝つと思わず負けると思えば必ず負けるからな。


「岩永さん、棒術?も結構強いんだ」と、華ちゃん。


「どっちでもいいと言えばいいんだけど、いちおう棒術じゃなくて杖術な」


「そうなんだ」


「いくら杖術が強いと言っても華ちゃんの魔法にはかなわないけどな」


「そんな」


「いや、ほんと」



 冒険者ギルドを出て、通りを左手に歩いていくと、ギルドで教えてもらったボーリー防具店がすぐに見つかった。ボーリー防具店の通りを挟んだ向かいにはキレーヌ武器店があった。ボーリー防具店は鎧の兵士の看板でキレーヌ武器店は剣と槍の看板だった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ