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第503話 日本町2


 今日から日本町での建設作業が始まる。最初は測量からだ。


 この日は出勤日ではなかったが、オストランに跳んでブラウさんとローゼットさんを連れて測量風景を視察けんがくに行った。


 ゆらぎの近くに二人を連れて転移で現れたら、近くに大型のオフロード車が何台も駐車していた。


 意味があるとは思えないが、ブラウさんとローゼットさんにミスリルのヘルメットを作って渡した。


「日本では工事関係の仕事をするときにはヘルメットを着用するので、格好だけですが被っていてください。いちおうマジックアイテムなので頭に乗っけていればそのうち頭にフィットします」


 3人揃って銀色に輝くヘルメットをかぶった。


「すぐに頭になじみました」「わたしもです」


「勝手に頭にフィットすることだけは分かってるんですが、他に何か効能があるかどうかは分かっていません」


「ミスリル製でしょうから、それだけでも相当の価値があります」


「それもいくらでも作れる物なので、良かったらそのまま持っていってください」


「本当ですか」「ありがとうございます」


 日頃の感謝を込めての贈り物と考えると、ちょっと安すぎたかもしれないが、二人が喜んでいるなら万々歳だ。




「器械を覗いたり棒を持ったり立ち働いて、全員測量の作業員なんでしょうが沢山いますね」


「測量さえ終われば、後は並行していろいろな作業ができますから急いでいるのでしょう」


「町が完成する来年の4月が楽しみですね」



 奇しくも俺が日本町の隅に建てたコンクリートブロックが測量の起点になっている。将来、このコンクリートブロックがニューワールドのグリニッジとなると思うと胸熱だ。オストランの緯度は日本と同じくらいな感じがするので35度くらいなのだろうが、コンクリートブロックが東経0度、西経0度となる。


 測量班はまず北を割り出すことから始める。ニューワールドに惑星ほしの名まえは付いていないのだが、惑星は自転しているので、ジャイロコンパスで方位を決めることができる。緯度も未計測なので若干の誤差はあるようだ。そこは仕方がない。それと海抜も今のところは適当だ。そういった諸々も今後国として組織を立ち上げてキッチリ観測や計測を行なっていかなければならない。留学生たちが無事日本で育って帰ってきてからのことになるのだろう。

 

 測量のあとは設計会社の都市計画に沿って道路が立体的に作られていく。立体的というのは下水道の他、上水道、電力線、信号線、ガス管などを通すコンクリート樋なども同時に埋設、敷設していくという意味だ。


 道路工事と並行して、ゆらぎから引き出された高圧電力を降圧するための変電所などの設備が造られて行く。


 日本町周辺には簡易的な柵をオストラン側で設けており、陸軍の兵隊が周囲を常時パトロールしている。本格的な工事が始まれば、最初に高さ3メートルほどの金属パネルのフェンスを業者側で立てるそうだ。



「8月末には入国審査所、ポーション診療所と宿泊施設それに付随したインフラ施設もできますから、ずいぶん見た目が変わりますよ」


 ちなみに、オストラン国内のインフラが整うまで日本政府関係者を除いて入国者は日本町から外に出さない予定なので、入国審査所ではパスポートの記録と入出国時本人確認をするだけだ。


 しばらく3人で測量風景を見守ってそれから宮殿に2人を送り、俺は屋敷に戻った。




 翌日には日本町の周囲と日本町の隣りに設けた土砂置き場にフェンスが張り巡らされ、数台の大型ブルドーザーが整地を始めた。土砂はトラックに積まれ土砂置き場に積まれて行った。埋め立てするような場所は今のところないので、土砂は俺が処分してもいいし、ダンジョンの中に処分場を造ってもいい。俺が処分するとなると、業者の方がいちいち俺に依頼はしたくないだろうから、ダンジョンの中に造ってしまった方が無難か。



 測量はまだ各所で継続中だが、測量の終わったところから次の工程に移っていっている。ひっきりなしに大型トラックがゆらぎを出入りして、機材や資材を下していっているところをみると、日本側の状況は見てはいないのだが、それ相応に賑わっているだろう。


 その日の内には簡易工事事務所も建てられた。事務所内には弁当などを提供する食堂なども入っているそうだ。同時に地質調査のボーリング機械が20台ほど持ち込まれ、ボーリングを始めた。




 実際の街造りではゲームほどホイホイ建物ができるわけではないのだが、何だか見ていて楽しい。


 暇なときはつい工事現場に跳んでいって様子を見ている。示し合わせたわけでもないのにたまにヘルメットをかぶったブラウさんやローゼットさんと現場で出会うこともあった。



 取水場からの用水路、下水処理水放流用の水路の工事も始まった。取水場はオストランの東側を流れる運河の上流に作り、下流に下水処理場からの処理水を放流する。浄水場と下水処理場はどちらも日本町の中に造る。


 町内の幹線道路の地下には、幹線下水道が走ることになっているので、まず下水道が造られた上に道路が創られて行った。主要道路の両側には歩道が通っており、その歩道の下には、上水道管、ガス管、電力線、信号線が通るよう大型プレキャストコンクリート製の蓋つき樋が、排水用の樋とは別に通っている。


 これから先、コンクリートプラント用の砕石、砂置き場。セメントサイロなども造られることになる。それに加えて、工事車両用の軽油・ガソリンスタンドも造られる。


 道路には街灯が設置され、今週中には簡易的に携帯基地局も置かれ、スマホや事務所でのパソコンなどの使用が可能になるそうだ。建物が建てば日本町全体を覆う本格的なアンテナを持つ基地局が置かれることになる。

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