第481話 島1、新ドローン1
夕方3時過ぎ、ロイヤルアルバトロス号は前方の島から30キロの沖合で停船した。レーダーで他の船影がなかったため島から2キロまで接近してそこで停船した。
果物島からずっと錨を下すことはなかったが、ここでは水深が20メートルほどだったので錨を下すことができた。
2キロ先の島を双眼鏡で眺めた感じでは、果物島とよく似た感じで白い砂浜が広がって、その先はジャングルっぽく木々が繁っていた。人の気配もなければモンスターの気配もない。
他の島は遠くから眺めた感じだけだが目の前の島と似たようなものだった。
今日はこのくらいにして風呂に入ろうと思い、ロイヤルアルバトロス号の風呂に向かったのだが、ふと思いついて船底の展望室まで下りていった。
海の底にはサンゴ礁が広がってた。青い魚や、赤い魚、黄色い魚、色とりどりの魚が泳いでいた。メタルゴーレムオルカが泳いでいるところもちゃんと見えた。
ダイビングできれば面白そうだが、展望窓でも十分だ。
十分堪能した俺は風呂に入るまえに、スマホでみんなに、ロイヤルアルバトロス号の水中展望室からサンゴ礁ときれいな魚が沢山見えるとメールしておいた。
俺が風呂に入っていたら、バタバタとタラップを下りてくる音がしてそれが下の方に下りていった。
アキナちゃんと他の子どもたち、それに華ちゃんやはるかさんたちの声も聞こえていたので、全員やって来たのかもしれない。サンゴ礁なんかなかなか見られないものだしな。
色とりどりの魚は見ている分にはそれでいいが、食欲はそそらないなー。
俺が欲しいのはエビ、イカに、マグロとヒラメとウニ、イクラ。生カニもうまいよな。
要は寿司ネタだった。カニについてはいつぞや巨大カニを仕留めてそれを原料にカニ缶をコピーしたがたまにあんなのがいてもいいんだが。
そんなことを考えながら湯舟に入っていたら、エレギルに寿司を食べさせたことがなかったことに気づいた。今日の夕食の支度はいい線進んでいるだろうから、明日の夕食は握りにしてやろう。島を探検すれば何か新しい食材が見つかるかもしれないからウキウキだな。
初めての場所なので警戒することは必須なので、明日は頭上警戒にメタルゴーレムドラゴンを3匹くらい飛ばしておくか。101匹はさすがにやり過ぎだし、空を覆って暗くなってしまうからな。
明日の作戦は、まず、アスカ2号が新しく作ったドローン2型だか2号機の試験飛行を兼ねた偵察を行なって、それから一心同体で上陸だ。見た感じ島の真ん中が盛り上がっているのでそのあたりを目指してみるとしよう。
風呂から出た俺は、子どもたち用に風呂の準備をしてやり、まだ展望室から上がってきていない子どもたちに向かって、風呂の用意ができたと大きな声で伝えてやった。
そしたら、すぐに「「はーい」」と声がしてバタバタとタラップを駆け上がっていった。
この日の夕食はサンゴ礁と魚の話題で持ちきりだった。
「あれだけ色とりどりだと、食欲が湧かないよな」
「案外食べてみるとおいしいかもしれぬぞ」
「魚によっては毒があるものもいるわけだし、止めてた方がよくないか?」
「刺身にしてしまえば、魚の色は気にならぬのじゃ。もしもの時はゼンちゃんのエリクシールもあるし、さらに最悪な事態となってもわらわの奇跡もある」
「アキナちゃん、そこまでして食べなきゃいけないものでもないだろ? 魚が食べたかったら無難に日本の魚屋でおいしそうな魚を買った方がいいんじゃないか?」
「確かにそうじゃが、いずれ誰かが試さねばならぬのじゃし、もしおいしかったらシャクではないか」
「じゃあ、明日何匹か捕まえてリサに刺身にしてもらうか?」
「それでよいのじゃ」
そうなると俺が必然的に毒見役だよな。毒があってもいったんは胃を経由するので即死はまずない。毒より食べてみてマズいことの方が怖いんだよな。
一心同体の探検開始は10時に屋敷の玄関ホールに集合ということで、9時にアスカ2号と新ドローンをテストすることにした。魚とりは探索が終わってから、展望室の窓越しに泳いでいる魚を、用意したバケツの中に転送するだけなので楽な仕事ではある。
そして翌朝。
朝食前に居間の座卓に座っていたら、アスカ2号が新型ドローンが完成していると報告に来てくれた。俺はアスカ2号を連れ彼女の倉庫兼作業場で完成した新型ドローンを収納して、9時にロイヤルアルバトロス号のブリッジに来てくれとアスカ2号に言ってから屋敷に戻って朝食を待った。
朝食を終えしばらく腹を落ち着かせてからロイヤルアルバトロス号のブリッジに跳んでいったら、もうアスカ2号がそこにいた。
「それじゃあ、テストを始めるか」
「はい」
「新ドローンはテラスデッキの上に置けばいいよな?」
「はい」
ブリッジから後方のテラスに出て新ドローンをデッキの上に置いた。アスカ2号はノートパソコンと小型のスーツケースくらいある無線機を運んできた。
ノートパソコンは台がないと使いにくそうだったので、二人用の小さなテーブルとスチール椅子を出してやった。
アスカ2号はノートパソコンと無線機をケーブルでつなぎ、無線機のアンテナを延ばして、
「マスター、準備完了しました」
「じゃあ、さっそくテスト開始だ」
「はい。
ドローン2号機、離陸!」
アスカ2号がノートパソコンに向かって声を出した。
新ドローンの翼の中のローターが回転しすぐに新ドローンは宙に浮きそのまま10メートルほど上昇した。ノートパソコンにはドローンが写す画像が映っていた。10メートル上から俺とアスカ2号の姿を映しだしているわけなのだが、俺の髪の毛を光線が透過しているような気がしないでもない。それに引き換えアスカ2号の髪の毛はフサフサだ。いいなー。
「ドローン2号機、停止」
ドローンは空中で停止した。
「ドローン2号機、降下して、離陸地点に着陸」
新ドローンは高度を下げ、俺が最初にドローンを置いた場所の上にぴったり着陸した。ローターは回転したままだ。
「マスター、離着陸は成功しました。
次は最高高度と最高速度のテストをします。
ドローン2号機、離陸してそのまま上昇」
まっすぐ上に飛び上がった新ドローンはみるみるうちに大空高く舞い上がっていき、すぐに点のように小さくなった。
ノートパソコンには小さくロイヤルアルバトロス号が映っていて、その横に、高度と速度が表示されていた。
……。
試験の結果はアスカ2号の計算通りだったようだ。ドローン1号機に比べれば速度が落ちたわけだが、トップスピードまで10秒程しかかからなかった。速度が落ちたといってもメタルゴーレムドラゴンよりよほど高速なので十分だ。逆に言えばメタルゴーレムドラゴンを護衛として付けられないということになる。
あと試験中に分かったことだが、この海域には似たような大きさの島が9つ、3×3といった感じで並んでいた。3×3諸島だな。
「よし。そしたら島を偵察してみよう」
「はい。
ブリッジのドローン操縦台のモニターなら一度に5方向の映像が見られますから、ブリッジでドローンを操縦してみましょう」
「それもそうだな」
ブリッジに入ったアスカ2号は、操縦台のスイッチを入れていき、それからテラスに出て、ノートパソコンと通信機を持ち帰ってきた。コードは抜かれていた。
「ノートパソコンと通信機はコードと一緒に俺がアイテムボックスに収納しておいていいよな」
「はい。お願いします」
超高性能ゴーレムコマエンジン搭載2型
全長:1.5メートル
翼幅:3.0メートル
重量:55キログラム
ペイロード:35キログラム
機体の性能
最高速度:時速350キロメートル(高度3000メートル)
制限速度:時速800キロメートル
巡航速度:~時速350キロメートル
失速速度:なし
航続距離:-
上昇限度:6000メートル
回転軸可動式4翅プロペラ(直径45センチ)×2
14センチ超高性能ゴーレムコマエンジン=100馬力×2
ハードポイント3カ所(主翼2カ所、胴体1カ所)
通信限界2000キロ(携帯無線機使用時、500キロ)




