第472話 発電所完成。俺たちの冒険はこれからだ!
ミルワの侵入を未然に防いだ礼としてハリトの都マハリトの一等地を貰ったのだが、100メートル×500メートルもある土地だった。サービスされてしまったようだ。
一心同体の4人でその土地を一回りしてみたものの良い利用法を思いつくことはできなかった。
「100メートル×500メートルの長細い土地と思うから利用法が限られるが、100メートル四方が5つと考えればいいんじゃないか?」
「うーん」「なかなか難しいです」「わらわには無理じゃ」
5つ利用法を考えないといけないからさらに面倒になってしまった。
結局1時間ほどで屋敷に戻った俺たちは、引き続き土地の利用法を考えておこうということで解散した。
その日の発電所工事の迎えは午後6時ということだったので、10分前に迎えに行ったら、その日の作業は終わっていて、アスカ2号を囲んで作業員たちが談笑していた。
超高性能美少女ゴーレムだけのことはある。コミュ力もそこらの一般人以上のものを持っているようだ。現場に来ている作業員はみんな男性だし、アスカ2号の容姿が容姿だけにアスカ2号から見てコミュニケーションのハードルはそうとう低いんだろうがな。
見た感じ発電機はもう組み上がっているようだった。発電機の脇に配電盤のようなパネルが2つ置かれていた。発電機の電圧は1万2千ボルトだそうで、ここから外部にその電圧で送り出し、変電所を通して6600ボルトに落として、更に電気を使う場所で200ボルトないし100ボルトに電圧を落とすのだそうだ。なのでこれから先、日本町に変電所を作る必要があるそうだ。発電所の発電機が動きさえすれば普通に電気が使えるものと思ってたよ。なにせ12万5千kWだ。素人の俺が考えるほど簡単じゃなかったようだ。
そういった説明を以前きいていたのかもしれないが、うちの技術担当者に丸投げしているので少なくとも俺の記憶にはなく新鮮だった。
「発電機の設置は完了しました。明日確認テストを行なえば引き渡しになります」と、現場監督。
2台の大型トラックに作業員たちが分乗したのを見届けて、トラックごと防衛省の駐車場に転送し、俺とアスカ2号も駐車場に転移して、作業員たちが乗ったトラックが帰っていくのを見送った。
翌日は大型トラック1台だけ発電所に運んだ。トラックに乗っていたのは現場監督の他作業員2名だけだった。
「テストと言っても十分な負荷がありませんし、発電機は1機だけの単体ですので、規定回転数の10分の1程度の低回転速度で運転して計器の点検だけ行なうことになります。ゴーレムコマのすごいところは無負荷でも最大負荷でも回転速度が変わらないところですから、このテストだけで十分と思います」
すぐに計測器類が発電機に取り付けられていき試験が始まった。
コマの入った動力部分はカバーで覆われているし、今みたいに規定回転数の10分の1程度だとコマが回っている動力部からはほとんど音が出ないようだ。それでも発電機側の回転音がわずかに高まってきて各計器の示す数字が変わり始めた。
俺は見てて何が何だかわからなかったので、アスカ2号に「どうだ?」と聞いたところ、試験は順調です。とのことだった。
30分ほど発電機が回って、そこで試験は終了した。発電機はまだ惰性というか慣性で回っていた。
「問題ないようでした」と監督が俺に言って確認書類を渡したので、再度俺はアスカ2号の顔を見たところ、アスカ2号が頷いたので書類にサインして写しだけもらっておいた。
「それでは工事完了ということで。ありがとうございました。
変電設備を設置の際は、また当社にご用命ください」
「了解しました」
作業員たちが後片付けを終え、みんなでトラックに乗り込んだところで、防衛省の駐車場に送り帰し、俺とアスカ2号も駐車場に跳んで、帰っていくトラックを見送った。
午前中で発電所の作業が終わってしまった。
変電所が必要とか全く知らなかったが、変電所の工事はダンジョン外になるので、それなりに大変だろうが、どうせ日本町内に作るので、他の建物も日本の建築会社に作ってもらうわけだからその辺は一緒だ。将来的に電力が足りなくなっても今回の業者に頼めば発電機の増設も簡単だろうし。
アスカ2号を連れて屋敷に帰った俺は、アスカ2号に礼を言ってロイヤルアルバトロス号のブリッジに跳んだ。
ロイヤルアルバトロス号は陸地を左手に見て順調に航行していた。もはやハリトからどれほど離れているのか分からなくなったが、陸地は左手にどこまでも続いていた。この大空洞は直径10万キロあっても不思議ではないと思い始めている。こうなってくると平面宇宙だな。
地球の表面積をスマホで調べたら約5億平方キロだった。直径10万キロの円の面積は78億平方キロだった。地球15、6個分か。結構あるな。
だからどうなるわけでも、俺がどうするわけにもいかないが、5万キロ先に大空洞の中心があるとして1日1000キロ進めば50日。考えようによったら大したことないと思えてしまう。
ただ、行く手に何が待ち受けているか不明だし、海上をロイヤルアルバトロス号でどこまで進んでいけるかも不明だ。それでも何とかなるだろう。俺たちの冒険はこれからだ!
何だか打ち切り漫画の最終回的なことを考えてしまった。




