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第462話 大召喚術師


 ハリト軍を預かるというカフラン軍務卿の後について歩いていき、城の中庭のような広場に出た。


 この広場で、デモンストレーションすればいいわけだな。


「それではわたしの召喚の技をお見せしましょう」


 橋の前では大げさな身振りとラシイ呪文を唱えたが、いまさらそんなことをしても仕方ないので、無動作で召喚・・することにした。せっかくなので101匹メタル大蜘蛛大行進だ。俺はハリト語で続けて召喚・・を始めた。


「いでよ、ゴーレム!」


 まず、先ほど収納したゴーレム1型を3体広場の真ん中に出した。


「いでよ、101匹蜘蛛ちゃん大行進!」


 銀色にうごめく大蜘蛛の塊がゴーレム3体から少し離れたところに現れた。


「101匹蜘蛛ちゃんと、ゴーレム1型、お互い戦ってみよ。かかれ!」


 俺の合図で銀色の山が崩れ、波になってゴーレムに取り付いていった。ゴーレム1型たちは手足を使ってメタル大蜘蛛たちを叩き潰そうとするがほとんど効果はなく、3体とも10秒ほどで動きが止まり、ボロボロになり最終的には破片に砕かれてしまった。


 軍務卿も護衛の二人も言葉もなくその光景を見ていた。


 次にメタルゴーレム3体を広場の真ん中に召喚し、


「メタルゴーレム、101匹蜘蛛ちゃん、お互いに戦ってみよ、かかれ!」


 蜘蛛たちが動き出す前に、メタルゴーレムがものすごい速さで走り出し、見る間に蜘蛛たちを蹴散らし叩き潰して、あっという間に101匹蜘蛛ちゃんは全滅してしまった。


 最後に、


「メタル護衛ゴーレム、メタルゴーレム、お互いに戦ってみよ、かかれ!」


 俺の『かかれ!』の声と同時に俺の後ろに立っていたメタル護衛ゴーレムは一番近かったメタルゴーレムに激突し、それだけでメタルゴーレムは粉々になってしまった、その後、左右の拳のワンツーパンチ2回で残った4体のメタルゴーレムは粉々になった。おそらく俺とキリアしかメタル護衛ゴーレムの動きを目で追えなかったのではないだろうか。


 メタル護衛ゴーレムは破片の散り方も考慮して戦ったようで、誰にも粉々になったメタルゴーレムの破片は飛んでこなかった。やるじゃないか。


 メタル護衛ゴーレムが俺の後ろに下がったところで、新たに4体のメタル護衛ゴーレムを俺の前に並べてみた。


「いかがですか?」


「恐れ入りました。

 しかし、敵から見れば戦うまでは小型のゴーレム、戦に勝つことはたやすそうですが戦を抑えることにつながるとは思えませんが」


「今の余興はわたしの実力をお見せしただけのもの。少々都の方々を驚かすことになるでしょうがよろしですか?」


「は、はい」


 俺は錬金工房の中で素早くフィギュアゴーレムドラゴンを101個作り出し、まず10個広場にばらまいた。


 その場でフィギュアはメタルゴーレムドラゴンになり、広場を空けさせるため、上空を舞って待機しろと言うと、翼をはためかせて上空に上がっていった。


 再度10個のフィギュアを広場にばらまきメタルゴーレムドラゴンに戻し、空に待機させた。


 それを都合10回繰り返して最後に1匹メタルゴーレムドラゴンを空に放ってやった。


「どうです? 101匹ドラゴン大行進です」


 半分口を開けて空を見上げていた軍務卿が慌てて、


「恐れ入りました。

 直ちにドラゴンたちを送還してください。お願いします。都の住人が大混乱します」


 確かに城の上はメタルゴーレムドラゴンたちで埋め尽くされて半分暗くなっている。


収納もどれ!」


 そう声を出して101匹のメタルゴーレムドラゴンを一度に収納してやった。


「ドラゴンの大群まで召喚できる召喚術師がこの世にいたとは。まさに驚きです。

 ゼンジーロ殿、こちらにおいでください」


 恐縮した軍務卿に連れられ、俺たちはかなり凝った調度品の並べられた応接室のような部屋に招き入れられた。この部屋は貴賓室か?


「この部屋で少々お待ちください」


 軍務卿は護衛の二人を連れて部屋を出ていった。しばらくして侍女がワゴンを押してお茶と茶菓子を持ってきてくれて一礼して部屋を後にした。


「ゼンちゃん、さきほどの101匹ドラちゃん大行進は見事だったのじゃ」


「さすがはお父さん」


「このゴーレムがこれほど強力とは知りませんでした」


「試すことはできないけど戦闘力だけならアスカを超えているはずだから」


「そこまで」


「フィギュア化した時華ちゃんに言ってなかったけど、警備ゴーレムはアスカの半分くらいの戦闘力と言ってコアに創らせたものなんだ。メタル化したから戦闘力が何倍かになっているはずなので、まず間違いない。

 フィギュアを増やしたとき負担は全く感じなかったから、1000体くらい簡単に作れると思うよ」


「岩永さん、ダンジョン内限定かもしれませんが、もう無敵ですよね」


「華ちゃんの魔法に敵うとは思えないけどな。

 どうもコアから見てゴーレムゴーレムしたゴーレムってお値打ちなんだよな。警備ゴーレム4体創るのにたったの4分だったし」


「ということは、もっと強いゴーレムが創れるということなんじゃろ?」


「そういうことなんだろうな。アスカより10倍くらい強いゴーレムでもダンジョン内限定なら簡単なんじゃないか」


「頼もしいのじゃ」「さすがはお父さんです」「……」


 そういえば、エレギルが城の中に入ってからかずーとおとなしい。


「エレギル、さっきからおとなしいがどうした? 調子が悪いんならヒールポーションがあるぞ」


「いえ、大丈夫です。

 岩永さんが、こんなにすごい人だったなんて知らなくて。わたしなんかがお城の中に入っていいものかと思ったり。わたし以外のみんなが普通にしているのもすごいなって思ったり。頭の中が追いつかなくて」


「あー。そうか。そういうのもあるかもしれないが、慣れていけばそれだけだ。エレギルはもううちの家族なんだから、難しいことは考えず、今自分が安全なのか、そうでないのかだけ考えていればいい。いつだってエレギルは安全なんだから、安心していられるだろ?」


「はい」


「エレギルちゃん、わたしたちが付いてるんだからいつだって大丈夫」


「その通りじゃ」「うん」


 警備ゴーレムもうなずいて、……、は、いなかった。


「そうでした」


 エレギルも少し落ち着いたようで、出されたお茶に手を付けた。ひとまとめで皿に盛られて出されたクッキーはアキナちゃんとキリアでほとんど食べていたので、俺が最後の一つをコピーして増やし、皿の上に10枚ほど置いておいた。


「ゼンちゃん、気が利くのじゃ」「さすがはお父さん」


 また二人が皿に手を出してクッキーを食べ始めた。いくらでも増やせるからいいけどな。



 しばらくそうやって立派な部屋の中でおとなしく待っていたら、お仕着せを着たおっさんが部屋に入ってきて一礼し、


「ゼンジーロさまとお付きの皆さま。こちらにお越しください」


 やっとお呼びがかかったので、俺たちはそのおっさんの後について城の中の通路を歩いていった。


 通されたのは会議室のような部屋で、長テーブルの片側に知らないおっさんとカフラン軍務卿が座っていた。俺たちはその向かいに座るように言われた。


 俺たちは最初の時と同じ並びで俺を中心に並んで座った。


 見た感じカフラン軍務卿より俺の向かいに座っている人物が偉らそうだ。


 そのおっさんがまず口を開いた。


「ゼンジーロ殿、わたしが宰相のスカラムでです」


「召喚術師、ゼンジーロです」


「わたしも窓からですがドラゴンが城の上空を舞っているのを目の当たりにして肝を冷やしましたが、カフラン軍務卿から仔細を聞いて安心しました。

 それでゼンジーロ殿はミルワがわが国に攻め寄せてくるのを防いでくれるとか?」


「防ぐわけではなく、いくさ自体を断念させるつもりです」


「そうでしたな。

 願ってもない申し出ですが、率直なところゼンジーロ殿は何が望みなのですか?」


「望みはとくには。戦がなくなればそれで十分です」


「ここにはわたしと軍務卿しかいません。一国の都など簡単に落とせる力を持ったゼンジーロ殿が望まれるようなものをわれわれが容易に用意できるとも思いませんが、望みがあれば率直に話していただいてけっこうです」


「ですから、望みなど特にありません」


「そうですか。それならそれで」


 何も望みがないと言ったのは逆に先方を警戒させたかな? だからと言ってここで前言を撤回して金貨1000枚とか言うのも変だしな。


「さっそく明日からでも取り掛かりましょう。

 そういえば、一つお願いがあります」


『お願い』の一言で、先方の二人は緊張したようだが、


「軍には混乱しないためにもわたしのゴーレムのことは伝えておいてください」


 俺の言葉を聞いてあからさまに安心していた。


「すぐにでも早馬を出します」


「よろしく。

 用件も終わったことですし、われわれはこのままお暇します」


 俺の目配せで、左右に座っていたメンバーたちが俺の手を取った。先に警備ゴーレムを収納してから屋敷のホールに転移した。




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