第460話 召喚術師1、コスプレ
屋敷に帰った俺は華ちゃんたちに今日の風呂はロイヤルアルバトロス号の風呂にしようと告げて、さっそくコアルームに跳んだ。
コアに手を当てた俺は、大召喚術師をイメージして、その衣装をコアに創らせた。
俺のイメージが素晴らしかったようで、結構立派な大召喚術師のコスチュームができ上った。
俺のイメージしたのは水戸のご老公。和テイストがハリトの国では異国趣味で受けると思ったのだ。
上は温泉の冬用浴衣をイメージした紺色の着物だが丈は腰までで、腰から下はズボンの中に入れる。そのズボンは俺のイメージカラーのエビ茶色のだっぷりとしたズボンでくるぶしを金色の紐で結んでスポーティーさを演出している。
ご老公が着ていたちゃんちゃんこは地味だったが、若さ溢れる大召喚術師は地味であってはならないので、真っ赤なちゃんちゃんこをコーデしてみた。ちゃんちゃんこの丈は膝辺りまであるので豪華さも演出している。さらに、召喚術師らしく、ちゃんちゃんこの柄にもこだわってみた。何とその柄は十二支をモチーフに描いた柄だ。俺のイメージをコアに託して創らせた結果、納得のいく柄となった。
小物として先にガラス玉をくっつけたねじれた杖と、赤い布の帽子。靴は金色でつま先が尖って上にそり上がっている。
コアから受け取ったコスチュームを収納して次は見習い召喚術師たちの服装だ。
華ちゃんはかげろう〇銀、キリアは風〇の弥七、アキナちゃんはう〇かり八兵衛、エレギルは特別出演のだれかか?
うーん。誰もピンとこないな。
なかなかいいイメージが思い浮かばなかった。そもそも水戸のご老公縛りがいけなかった。みんな女子だ。
和テイストは外せないのでここは無難に神社の巫女服をイメージしてみた。白衣と赤袴で神社の巫女服そのままなのだが、それだけだと味気ないので履物は草履ではなく俺とおそろいのつま先が尖って上にそり上がった金色の靴にしてみた。靴のサイズは調整しないといけないが、その辺りは慣れているので大丈夫だ。あとは召喚術師の見習いらしく、真っ赤な鉢巻き。十二支の絵柄付きでは俺と同じになっておこがましいので、犬、猿、キジの鳥獣戯画風線画を描いてもらった。エスプリが効いた逸品だと一心同体のメンバーに絶賛されそうで怖い。エスプリって意味はあってるよな?
ほくほく顔で屋敷の部屋に跳んで帰った俺はさっそく大召喚術師の衣装に着替えてどんなものかみてみようとしたのだが、ドローンのことを思い出した。ドローンはかなり前にロイヤルアルバトロス号の上空に帰ってきているはずだ。俺はドローンを回収するためロイヤルアルバトロス号のテラスに跳んだ。
空を見上げるとドローンはちゃんとロイヤルアルバトロス号の上空で旋回していたのでアイテムボックスに回収しておいた。
時間が時間だったのでさっさとロイヤルアルバトロス号の風呂に入った。風呂から上がった俺は、ちゃんと入浴準備してから大画面モニターを見ていた子どもたちに風呂が空いたことを告げた。子どもたちはすぐに映像を停止して風呂に駆けていった。
「転んでケガするなよ」
「「はーい」」
それから俺は屋敷の自室に戻って、大召喚術師のコスチュームを着てみた。
姿見に映った俺の姿は、俺的にいえば100点満点で70点なのだが、俺の場合平均点が50点なので、かなりイケてる感じがした。
しばらく姿見の前で体を捻ったりしておかしなところがないか確かめた後、普段着に着替えて居間の方に下りていった。
昼食中、明日のハリトの城への訪問のことを考えながら食べていたら、顔に出ていたらしい。
「ゼンちゃん、何かいいことがあったようじゃな」
「おっ! アキナちゃんなら分かるだろ?」
「もちろんじゃ。それで、わらわにも見せてくれるんじゃろ?」
「後でな」
「期待しておくのじゃ」
「何かいいことがあったんですか?」と、今度は華ちゃん。
「明日マハリトの城に行く時のコスチュームを作ってみたんだ。
俺的には結構カッコいいコスチュームだと思う。俺以外にも華ちゃん以下一心同体のメンバー全員とエレギルのコスチュームもあるからな」
アキナちゃんとキリアは嬉しそうな顔をしていたが、華ちゃんはそうでもないようだった。エレギルは実感がないようだった。残りの子どもたち3人が羨ましそうな顔をしていたので、
「エヴァたちにも作ってやるから」
「「やったー!」」
「えーと、岩永さんがコスチュームを作ったんですか?」と、今度は後藤さん。
「わたしの造形センスだと何ができ上がるか分からないので、イメージだけをコアに伝えて創らせました」
俺のその説明では後藤さんには通じなかったのかもしれないが、華ちゃんがあからさまにホッとしていた。気に入らなければ着なければいいだけなのでそこまで考える必要はないんだがな。
夕食のあと華ちゃんたちも風呂から出てきたところで、
「サイズは適当なので、そこは調整するから試しに着てみてくれ」
そう言って華ちゃん以下の一心同体の3名とエレギル、それにエヴァたち3人に大召喚術師の弟子の衣装をそれぞれ紙袋に入れて渡した。
子どもたちが紙袋を持って2階に駆けていったところで、俺も着替えるために2階に上がっていった。
大召喚術師の衣装を着て、金色の靴を履き、ズボンのくるぶし辺りを金色の紐でキリリと結んででき上がりだ。わりと着やすかった。
頭に真っ赤な布製の帽子をかぶり、水晶玉風ガラス球を付けた杖を片手に俺は居間に入っていった。
子どもたちの他はるかさんと、後藤さんがいてしきりにカメラで子どもたちを撮影していた。
子どもたちは全員巫女服風召喚術師の弟子コスチュームを着てカメラで写されてニコニコしていたのだが、俺の姿を見るなり駆け寄ってきて、
「カッコいー!」「さすがはお父さん」「上着の模様が素敵!」「杖もいいなー」「ゼンちゃん、文ちゃんにすぐるとも劣らぬみごとな姿なのじゃ!」
ハチマキの説明を忘れていたので、みんな首からかけて垂らしていた。はるかさんたちもハチマキとは気づかなかったようだ。それはそれで見た目もよろしかったのだが、やはりハチマキは額に巻かないと力も出ないからな。
ということで、一番近くに立っていたキリアの鉢巻きを首から外して額にキリリと巻いてやった。
みんなそれを真似てキリリと鉢巻を額に巻いたのだが、人によっては蝶結びが縦になっていた。よくあるパターンだ。すぐにはるかさんと後藤さんで直してやっていた。
俺たちがそうやっていたら、期待の華ちゃんも着替えてやってきた。
「ほー。巫女服もまた似合ってるなー。さすがは華ちゃんだ」
「あのう、岩永さん。何で巫女服? しかも草履じゃなくって変な形の靴?」
「日本人の俺たちから見れば、巫女服は和を代表する見慣れたものだが、オストランやハリトの連中からすればエキゾチックそのもののはずだ。そこに、召喚術師的靴を履くことによりエキゾチックからエスニックに昇華されたわけだ」
「分かったような分からないような」
「でも華ちゃん、すごく似合ってる」と、はるかさん。
「わたしもそう思う。わたしもその巫女服欲しくなったわ」と、後藤さん。
「二人にも用意しましょう」
リサも欲しそうな顔をしていたので、俺は適当な大きさで召喚術師見習いコスチュームを3セット作って3人に渡しておいた。適当な大きさだが俺の目はそれなりに正確だしそもそも靴以外和服なので、大きすぎや小さすぎはまずないはずだ。
はるかさんたちもさっそく着てみると言って2階に上がっていき、5分ほどで戻ってきた。
俺以外全員巫女服+召喚術師の靴+召喚術師見習いの鉢巻をしている。なかなか壮観だ。
俺が先頭に立って巫女服姿の美人、美少女軍団を率いて銀座辺りを練り歩いたら大変なことになりそうだ。日本国中で召喚術師の靴と召喚術師見習いの鉢巻がブームになる予感がする。
華ちゃんもみんなが自分と同じ格好をしていることで少し安心したようだ。最初はどうのと言っていたがまんざらでもなかったようで、カメラを構えるはるかさんの前で笑顔でポーズをとっている。
コスプレはみんなを明るく幸せにする合言葉だったようだ。




