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第424話 定例会議、カミングアウト2


 翌日。


 俺は定例会議のため華ちゃんを連れて、防衛省に跳んだ。


 防衛省からは、第1から第3ダンジョンで建設の始まった125万kWの発電所の建設は順調で、3月中には稼働の見込みとの説明を受けた。合計375万kWの電力追加で首都圏の電力供給に若干余裕が出てくるという話だったが、ソーラーパネル推進派も風力発電推進派も防衛省で固められたダンジョン協会の動きに対してなんら掣肘せいちゅうの手段を有していない。と、川村局長が笑顔で話していた。


 その話の最後に、ぽつりと、


「岩永さんから供給されるヒールポーションを握っているわれわれに逆らえる政治勢力も政府組織もありませんから」


 と、漏らしたが、当然だろうな。国防費については渋いようだがダンジョン関連予算だけは財務省もめくら判を押しているんじゃないかと俺でも思うもの。


 さらに言えば、そのヒールポーションと日本の経済を左右する電力を俺が握っているということも理解しての発言だろう。


 華ちゃんも俺の方を見ている。ころや良し。と、考えていいのかな?




 俺は前回のカミングアウトの時と同じように、


「あのう、いままで隠していたんですが」


 そして前回同様会議室にいた全員が俺の顔を見たと思ったら、俺の横に座る華ちゃんだけは違っていた。


「実は、わたしたち、以前第1ダンジョンに潜った時、そのまま最下層まで行ってしまいまして、そこでわたしはダンジョン・コアにタッチダウンしてダンジョンマスターに成っちゃったんです。

 それで、日本のダンジョン全部そのコアが創ったものだったもので、いちおう日本にあるダンジョン32個全てのダンジョンマスターになってます」


 防衛省側の4人は両目を見開いて俺を見つめていた。田中事務官と山本一尉は前回よりも驚いていたようだが、川村局長と野辺次長はそれほどでもないような。


「ダンジョンマスターというのは、ダンジョンのことが思いのままにできる存在という理解でよろしいでしょうか?」と、俺の話をある程度冷静に受け止めたような野辺次長。さすがだ。


「はい。大抵のことはできちゃいます。

 それで、今回こんなことを打ち明けたのは、そろそろオストランと日本を本格的につなごうと思うんです」


「はい」


「それで、わたしはダンジョンマスターですからダンジョンの出入り口を好きなところに作れるんですよ。日本にもオストランにも。極端な例ですが、下の駐車場に作ったダンジョンの入り口からダンジョンに入り、1メートル歩けばオストラン側の出口に出るといったことも簡単にできます」


「えっ! そんなことが」


「ダンジョンマスターですから。他にもできることはいろいろありますが、とりあえずオストランと日本を繋げたいんですよね。

 で、日本だとある程度交通の便のいいところに出入り口、いわゆるゲートを作った方がいいと思うんですが、勝手に作ってしまえば大迷惑でしょうから、日本の方でご希望があればそこにそれなりのゲートをお作りします。

 オストラン側の出口は、都の隣りに確保した500メートル四方の区画の中を予定しています。そのうちそこに日本町を作ろうと思っています」


「はあ」


「もし日本側にこれといった希望がないようなら、親父の土地にでもゲートを作ろうかなとか思っています」


「お父さまの土地というのは?」


「山陰の田舎の町になります。たしか第28ダンジョンの近くと思います」


「はい。第28ピラミッド=ダンジョンです」と田中事務官。田中事務官は親父の土地を国が買い取る時、親父のところに説明にいった。と、いつか言ってたものな。


「ゲートの設置場所は早急に検討させていただきます。大きさはどの程度のものが?」


「まだ試したことはないのでアレですが、いくらでも大きくできると思います。それと、ピラミッドは作らなくて大丈夫です。アレはタダの目印ですから。

 外から山複にある程度トンネルを掘ってもらって、その突き当りにダンジョンへの出入り口を作る形がいいのかなー。そうすれば車で通過するとして違和感ないし」


「なるほど。

 ダンジョンへの出入り口は後からでも拡張可能なんでしょうか?」


「それは簡単です。以前にも一度拡張しましたし」


「あれもそうだったんですね」


「まあ、そういうことです」


「ということはあのZマークも?」


 あったなー。そういうの。


「いえ、アレはコアが気を利かせてやったんじゃないかな?」


「はあ。あのZはゼンジロウのZということだったんですね?」


「そうみたいです。ダンジョンマスターになった時、みんなでダンジョンの名まえを考えていた時の一案だったんですが、コアがその話を聞いていたようです」


「分かりました。

 今後、わが国としますと、ダンジョンについての要望があればオストラン王国の国王であり、Zダンジョンの実質オーナーである岩永さんにお願いすればいいといいという理解でよろしいでしょうか? もちろん、そういった要望については対価をお支払いします」


「何から何まで要望をおききすることはできないと思いますが、可能なことなら対応できると思います」


「ちなみに、ダンジョンマスターには何か目的とか義務とかといったものがあるのでしょうか?」


「義務はないんですが、不思議なことにダンジョンを発展させたいという気持ちがふつふつと湧いて出てくるんです」


「ふつふつと?」と、普段発言のない山本一尉が俺の心境を聞いてきた。


「はい、ふつふつと」


 華ちゃんの押し殺したような笑い声が聞こえたような。


「それで、具体的にダンジョンを発展させるとは?」今度は川村局長。


「直接的にはダンジョンに入る人の数を増やすことになります」


「なるほど。ということはわれわれD関連局と同じということですな」と、川村局長が嬉しそうに言った。確かに俺とD関連局は同じ方向を向いていると言っていいだろう。よく考えると不思議なことだがダンジョンマスターの俺からすると願ったりかなったりというところだ。


「そういえば、ダンジョンの浅い階層に現れたダンジョンアニマル。あれも岩永さんが?」と、野辺次長。


「素人でも斃せるようなモンスターもどきが浅い階にいれば冒険者人口が増えるだろうと思って」


「階段間の本道にモンスターが侵入しなくなったのも?」


「ダンジョン内で携帯を使いたいがケーブルや基地局がモンスターに破壊されるのでそういった工事はできないと聞いたもので」


「何から何までありがとうございます」


 ダンジョンマスターだとカミングアウトしたので、今まで黙っていたがダンジョンへの爆発物の持ち込みはできなくしたことを話しておくことにした。


「それとダンジョンへのテロ未遂の話を聞いたあと、火薬ないし爆薬をダンジョンの中に持ち込むと、見た目は似ていても異なるものに変化するようにしました。その際ダンジョン協会の護衛員と自衛隊員が持つ火薬と爆薬は除外しています」


「なんと。これで爆発物によるテロや銃器によるテロの心配をしなくていいわけですね?」


「100パーセント確実と言いきれるかどうかはわかりませんが、大丈夫とは思います」


「そこまでのことが、ダンジョンマスターとなった岩永さんには可能なのですね」


「まあ」


「これもありがとうございました」


 礼を言われたところで、


「お互いさまですので」


 そう言って軽く頭を下げて、ポーションとゴーレムを下の特設テントに卸して、華ちゃんを連れて屋敷に戻った。


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