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第414話 果物島探検3、破船


 アキナちゃんは謎の発言を残し連絡用の小部屋に入っていった。


 俺はブリッジに上がって船外用スピーカーがどうなったか見たら、船内放送用のマイクのスイッチ横に新しくスイッチが増えていた。このスイッチを押しながら声を出せば船外スピーカーから声が外に向けて流れるのだろう。


『本日は晴天なり』


 ちゃんと俺の声がそこら中に響き渡った。好きになれる声ではないが、こればかりは仕方ない。


 そのあと俺はスポーツウェアを買うことを思い出して、マンション近くの総合スーパーに跳んだ。


 適当にスポーツTシャツとトレーニングパンツを見繕って買っておいた。あと、ジム用のトレーニングシューズも買っておいた。トレーニングシューズとランニングシューズで何がどう違うのか分からなかったがトレーニングシューズと銘打って並んでいたので買っただけだ。




 翌日。


 アキナちゃんの希望通り島の探検を再開することにした。改修の終了したロイヤルアルバトロス号は造船所から出して島の沖合に浮かべ、丘から見た湾に回り込んで、港の跡と思われる廃墟を調べるつもりだ。


 朝食中、ロイヤルアルバトロス号を海に浮かべるため、いったん収納するのでしばらくロイヤルアルバトロス号の中に入らないよう告げておいた。


 フィットネスジムで汗を流すにしても、窓から海の景色を見ている方がよほど気持ちいいものな。連絡用の小部屋の黒い板が灰色になっていたら入れないとも告げておいた。



 朝食後、すぐに装備に着替えた俺は、一心同体の残りの3名の用意が終わる前に造船所に跳んでロイヤルアルバトロス号を収納した。つぎに果物島の砂浜に跳び、そこから沖合にロイヤルアルバトロス号を浮かべた。


 その後ロイヤルアルバトロス号に乗り込み、ブリッジの後ろの強化されたテラスから、メタルゴーレムオルカはそのまま海の上に排出して、フィギュアゴーレムドラゴンはテラスのデッキに1個ずつ放り投げてフィギュアからメタルゴーレムドラゴンに戻してやった。2匹は前回同様ロイヤルアルバトロス号の上空を旋回し始めた。これで安心だ。



 集合場所はロイヤルアルバトロス号のキャビンの居間にしているので、すぐに3人が防具に身を包んでやってきた。


「予定通り島沿いに回り込んで、その先の湾にロイヤルアルバトロス号を移動させるから」


 そう言って俺はブリッジに上がり、舵輪に向かって、


「RA号、前方の陸地を右に回り込んでその先の湾の中に入っていってくれ」


「了解」


 おっ! ちゃんと声で答えてくれた。ここは『アイアイサー』と、答えてもらいたかったが了解でもいいか。


 すぐにロイヤルアルバトロス号は舵を切りながら前進を始め、左手に果物島の白い砂浜を見ながら島を回り込んでいった。


 10分ほどでロイヤルアルバトロス号は湾の中に入り、岸から50メートルほどの位置に碇泊した。岸にだいぶ近くまで寄せることができたということは、海底が深いということなので、やはりこの湾はかつて港だった可能性がある。


 キャビンに下りた俺は、上陸するためみんなと船首に行こうと思ったのだが、途中のキャビンの居間には誰もいなかった。


「あれ?」


 そうこうしていたら、アキナちゃんを先頭に3人が帰ってきた。


「ゼンちゃん、海の底に難破船があったのじゃ。魚もたくさんおったのじゃ。

 難破船の中にはお宝が一杯じゃと思うのじゃ。何とかならんかの」


 どうも3人は船底の展望窓から海の中を眺めていたらしい。なかなか面白そうじゃないか。


「展望窓から見えるんなら、収納できると思う。試しにやってみよう」


「さすがはゼンちゃん」「さすがお父さん!」「岩永さん、何でもありですものね」



 俺は褒められて伸びる男というのはとうの昔に卒業しているはずだが、褒められれば嬉しいものである。ちょっとくらいがんばってやろうとか思うくらいには嬉しいのだ。


 さっそく船底まで下りていき展望窓を覗いたら、透明度が高く海の底が良く見える。それなりに大きな魚も泳いでいる。


 海底を見てみると確かに木造船が沈んで半分砂に埋もれていた。だいぶ朽ちているようだが俺にはそんなことは関係ないので、ざっくりと、大き目に沈船を囲むように砂と海水ごと沈船を収納してやった。収納した後には新しくできた海底の穴の中にたくさん貝が落ちていった。


「できた」


「さすがはゼンちゃん」「さすがお父さん!」「岩永さん、何でもありですものね」


 全く同じ言葉を3人から聞いたあと、


「沈船を掬っては見たものの、これからどうする?」


おかに上がって、中身を確認するのじゃ」


「じゃあ、上陸だ。適当な場所に跳んでいくからアッパーデッキに上って船首に行こう」


 俺たちはぞろぞろとアッパーデッキに上がり船首に集まったところで海岸沿いの廃墟から少し離れた場所に転移した。



 そこは元は広場だったのかもしれないが今は雑草が生えた草原くさはらだった。


「華ちゃん、魔法で草を払ってくれるか?」


「はい。

 ウィンドカッター」


 一度の魔法であらかたの草が払われた。草原の先には木が生えていたが、木は倒れていないのでちゃんと範囲もコントロールしていたようだ。ますます冴えてるな。


 草を刈った地面からは半分土に埋まった石畳のようなものが顔を出した。石畳の石はあらかた割れて元の形は留めていない。


「華ちゃん、サンキュウ。

 アイテムボックスから船だけ出せそうもないから砂と海水と一緒に出すことになるな」


「ゼンちゃん、海水をまず海に捨ててはどうじゃ?」


「その手があったな。捨てなくても海水は素材ボックスに移動できる。

 砂もあらかた移動できそうだ。……。

 おっ。うまくいった。

 それじゃあ、船だけとりだそう」


  沈船は朽ちているから、取り出したら崩れると思うけど、仕方ないよな。


 広場の真ん中に沈船を取り出した。予想通り沈船の板は重みで崩れてしまった。


 長さは30メートルほど。結構大きい。


「ガレー船って感じかな。オールなんかは見えないけど流れていったんだろうな」


「上から朽ちた木片を取り外していかないと中を確かめられませんね」


「少しずつ収納して解体するか」


 考古学者などが見れば目をむくようなトンデモ作業だが、あいにくわれわれはトレジャーハンターなのだ。遺跡やこういった大昔の破船などの歴史的な価値など興味ないのだ。


「そうですね」


「何が出てくるのか、ワクワクなのじゃ」「楽しみだなー」


 ということで、俺が先に立って沈船あらため破船の脇に立ち、船側から半分朽ちた板を外すつもりで収納していった。


 内部に水はないし砂もあらかたアイテムボックスの中で素材ボックスに移動させているのできれいなものだ。


 船の内部は2層に分かれていて、上の層にオール用の孔が空けられていたようだ。どう見てもこいつはガレー船だな。2層といっても船底は崩れてしまって実質1層になっている。水夫たちがオールを漕ぐような場所にお宝はなさそうなので、船長なり士官の居室がありそうな船の先端部を探ることにした。船の先端部といったのは、どっちが船首か船尾か区別できなかったからだ。


 一方の先端部の板をアイテムボックスに収納しながら解体していったら、結局何も残らなかった。


「外れじゃな」「お父さん、反対側にきっとすごいものが隠されています」「……」


 キリアの言葉が実現することを祈りつつ反対側の先端部の板を収納しながら外していった。確かに船室のような感じなのだが、何もない。結局こっち側もハズレだった。


「スカじゃな」「こんなこともあります」「……」


「せっかくだから残った部分も解体してみるか」


 ……。


 10分ほどかけて破船の中央部分をアイテムボックスに収納しつつ解体していったらきれいさっぱり何も残らなかった。


「……」




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[一言] アキナちゃんの予感が外れただと…(困惑)
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