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第410話 医療立国1


 ローゼットさんを連れてマンションに顔を出した。部屋の中を紹介しても仕方ないので、マンションの扉を開けて外に出てみることにした。


 扉を開けてみると日本の空はあいにく曇りだった。ローゼットさんの格好は日本の地方都市で出歩いてもおかしなものではなかったが、少し寒そうな感じがする。


 ローゼットさんのコートも以前購入した時無意識にコピーしていたので、どうせならと思い色違いでコピーを作ってローゼットさんに渡して着てもらった。


「ありがとうございます」


 エレベーターで下まで下りてマンションの玄関から通りに出た。


「ここは東京ですか?」


「東京の近郊の街になります。境目はあるようでないような、ないようであるような。

 普通に暮らしていれば気にすることはあまりありません」


「はあ」


「冬の寒空の下を歩いていても仕方ないのでどこかの店に入りましょう」


 ドト〇ルにしようかマ〇クにしようか考えたが商店街の先に普通の喫茶店があったことを思い出してそこに歩いて行くことにした。商店街の先には大きな総合病院も建っている。その関係か薬局が商店街にやたらと並んでいる。


 店に入って、二人席に座りローゼットさん用にはカフェオレを注文し俺もそれにしておいた。


「陛下、この店の前のあの大きな建物は?」


「外科や内科、皮膚科や産婦人科とか病院にもいろいろあるんだけど、そういった物を全部集めて一カ所に集めた総合病院。だから大きいんだ」


「わたしたちの世界ではポーションで治療していますが、日本ではそうではないんですね」


「わたしのヒールポーションは卸しているけど、ある意味(おおやけ)じゃないし、こういった医療に携わっている人も莫大な人数いるから、ヒールポーションを供給できるようになったとしても全面的にポーションってわけにはいかないんだよ。ケガ人や病人から見ればあまりいいことじゃないかもしれないけどね」


「その点はわが国は有利ですね。お金さえ出せば高級なポーションが手に入りすぐに回復しますから」


「そうか、いいことを思いついた」


「何でしょうか?」


「日本からケガ人や病人を受け入れるんだよ。

 受け入れたケガ人や病人をヒールポーションで治してやる。ヒールポーションは国外に出さずオストラン王国内限定とする。

 そうすればたくさんの人が訪れてかねをオストランに落としていくことになる。タダの観光業よりもよほど儲かる。事業を国営化すればウハウハだ。もちろんオストラン国民も対象だ」


「錬金術師ギルドが反対しませんか?」


「反対するようなら、錬金術師ギルドを解体してもいいし」


「いくら国王でもそれは」


「わたしが大量の高級ヒールポーションを作って廉価で売りだせばどうなると思います? わたしにとってそこらで売っている高級ポーションなど10万、20万本くらい簡単に作れるんですよ」


「錬金術師は飢え死にですか?」


「あくまで国の方針に従わない場合です。

 わたし自身、自分の錬金術レベルを偽ってレベル3とか言っていますが、実は最高レベルのレベル10なんです」


「へっ!? 錬金術レベルって最高が3だったのでは?」


「錬金術師はレベル3までしか長年いなかったんでしょう。

 そういうことなんで、ニューワールドで最高の錬金術師であるわたしが錬金術師ギルド長だかギルドマスターでもいいくらいなんです」


「なんと! 陛下が大錬金術師であり、エリクシールで石にされていたアキナさまをお助けになった。と、いうお話はブラウさまから聞いていました。そういうことだったんですね」


「そういうことなんで錬金術師ギルドは心配ないでしょう。それに長い目で見れば錬金術師たちにとっても安定してポーションを国が買い取るわけだから悪い話じゃないでしょう」


「陛下のおっしゃる通りです」


 テーブルにカフェオレが届けられたので、俺は砂糖をたくさん入れてかき混ぜた。ローゼットさんも少し砂糖を入れてかき混ぜていた。


 カフェオレを一口飲んだローゼットさんが、


「独特の味ですがおいしいです」


「宮殿に電気が行き渡れば、水さえあれば電気ポットが使えるから好きな時にお茶を簡単に飲めるようになりますよ。お湯さえ注げばカフェオレができる粉を売ってたはずだから後で買いに行ってみましょう」


 俺もそこで一口カフェオレを飲んだが甘すぎた。普通のコーヒーのつもりで砂糖を入れたのだがカフェオレだと甘さが引きたつようだ。こういうこともある。普通のコーヒーも甘めにしているしな。


 今まで、防衛省に卸しているヒールポーションは、あくまで内々に消費されているわけだが、国内の公立病院で俺のヒールポーションを知らない者はもういないかもしれない。そういう意味でアレはアレで宣伝効果抜群だったよな。


 これからもちゃんと卸していくつもりだが、客が減ることはまずないだろう。日本の医者が職にあぶれることもないだろう。もし()()()から何らかの圧力がかかるようなら、ちょっと大掛かりになるが錬金術師ギルドと同じ対応することもできる。そこまでバカではないだろう。


 いずれにせよ、日本はこれから先ダンジョンから得られる安価なエネルギーを使って製造業で世界をリードしていくことになるのだろう。わがオストラン王国はその後をついていけば自ずと近代化も図れるわけだ。


 カフェオレを飲み終わったところで店を出て、少し歩いたところでいつもの総合スーパーに跳んだ。


「デパートはちょっと高級品を置いているんですが、ここはデパートと違って庶民向けの安価な商品を置いてるんです」


 カフェオレスティックやインスタントコーヒーを買おうと思って入っただけなので、カートではなく買い物かごを持って店の中をローゼットさんを連れて歩いていった。


 目当ての売り場の前にチョコレートを売っていたので何種類か買っておいた。


 そういったお菓子売り場の先のコーヒーやお茶を売っている売り場で、カフェオレ、インスタントコーヒー、お茶用粉ミルクなどをかごに入れてレジに並んだ。時間が時間なので結構人が並んでいた。


 やっと精算が終わり、商品の入ったかごを持ったままローゼットさんとトイレ方向に歩いていきそこで商品を収納して、出口でカゴを返して俺たちはダンジョンの連絡用小部屋に跳んだ。


「せっかくなんで、この前完成した船をお見せしましょう」



 RA号と書かれたプレートの下の黒い板を潜り抜けてRA号の小部屋に入りそこからキャビンに。


「ようこそ。ロイヤルアルバトロス号に」


 とは言ってもロイヤルアルバトロス号は現在造船所内の水を張ったドックに浮いている状態なので窓の外は造船所の壁が見えるだけだ。


「これが船の中?」


「ドックに入っているんで外の景色は造船所の壁だけですけどね」


「陛下はどこを目指していらっしゃるんですか?」


 目指している? は何を意味しているのかは漠然としていたがとりあえずダンジョン探索のことと捉えて答えた。


「実は、以前ダレン南ダンジョンをアキナ神殿から譲渡されたんですが、それでダンジョン・コアを見つけようと潜っていったところ大空洞に出たんです」


「大空洞?」


「どれくらい広いのか皆目見当もつかないほど広い空洞で、その空洞の中に海が広がってたんです。その海を越えるため船を建造したんですが、せっかくだから快適な船の方がいいと思ってこうなりました」


「なるほど。陛下は冒険者ですものね」


「最近はあんまりダンジョンに潜っていないんですけどね。

 それはそうと、わたしに連絡事項があるようなら、宮殿から屋敷に来てもらって構いませんから。屋敷の者やアスカたちにも言っておきますから」


「はい。よろしくお願いします」



 そういったところで宮殿でまだ仕事があるというローゼットさんを宮殿に戻した。帰る前にローゼットさんに、配線工事期間中アスカが宮殿内で作業することになるので警備兵や官僚たちにアスカの作業の邪魔をさせないよう周知してくれと頼んでおいた。それと、エヴァが連絡に宮殿に行くこともあるかもしれないのでそのことも言っておいた。


 ローゼットさんを連れて執務室に現れた俺は、スーパーで買ったコーヒー関連商品を大量にコピーして段ボール3箱ほどに入れて執務机の上に置き、宮殿の給湯室のようなところに持っていって適当に使ってくれと言っておいた。宮殿用とは別にオストラン神殿用にもう1箱用意してそれも渡しておいた。






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