第402話 RA号2、小改修
出発点に向けてRA号は速度を上げていき全速力の38ノットになった。
RA号は放っておいても勝手に目的地近くで停船するようなので、俺はブリッジにいたアスカ2号を連れて再度キャビンの居間に下りた。
キャビンの居間に下りていくと、華ちゃんたちが戻ってきていた。
「屋敷につながっている船って本当にすごいですね」
「便利だよな。
部屋の仕切りを取り払うとかの小改修のために造船所に戻すけど、完成したらずーと海に浮かべていてもいいよな。たまに造船所に戻して船底とか整備すれば」
「そうですね。屋敷につながっているってことはLANケーブルを引けるってことですものね」
「うん。屋敷よりこっちの方が居心地はいいだろうな。
各自の部屋とか見てもらって足りないものとか、要望はあるかな?」
「わらわは、ここの居間にホームシアターとして大画面モニターを置けばいいと思うのじゃ」
「それはなかなかいい案だな。屋敷の居間のモニターはあまり大きくないからいいんじゃないか。アキナちゃん、アスカ3号に言って適当に注文してくれ」
「了解なのじゃ。
それと、コミックと円盤を置いた船内図書館を作りたいのじゃ」
「それも、いい案だな。
横揺れはかなり抑える作りにはなっているけど、それでも揺れて本とか円盤が棚から落ちないようにガラス扉の付いたキャビネットを買っておけばいいだろう。あと欲しいコミックや円盤はアスカ3号に頼んで注文だな」
「了解なのじゃ」
「無理ならいいんですけど、フィットネスジムみたいなのがあればいいかなーって」と、はるかさん。
「あんまり大規模なものは無理だけど、ベルトの上で走る機械とか、ウェイトトレーニング用のスポーツマシンとか入れるくらいならできると思いますよ。空いている部屋を二つつなげれば、それくらいは入るでしょう。それもアスカ3号にお願いします」
「よかった」
屋敷が手狭になってきたのでコアルームの隣りにどんどん部屋を創っていけばいいかと思っていたけど、こっちの方が良さそうだ。密室よりも景色が見えた方がいいものな。
そうこうしているうちに、RA号は停船した。
「停船したようだから、みんなは直接屋敷に帰ってくれ。俺はロイヤルアルバトロス号を造船所に持っていくから」
ぞろぞろとみんながゆらぎを通って帰っていった。
「マスター、設計上は問題ないはずですが、ロイヤルアルバトロス号を造船所の架台に置く時、念のためバラスト内の水を抜いておいてください」
「了解。アイテムボックスの中に収納してから抜いておくよ。アスカ2号は先に造船所に行っててくれ」
「はい」
アスカ2号もゆらぎを通って退船したので、俺は居間からデッキに出て前方に見える岸に跳んだ。そこからRA号を収納し、忘れないうちにバラストタンクから清水と海水を抜いておいた。
RA号を収納した俺は造船所に転移しようとした。そこでふと思ったのだが、いまRA号につながっている連絡部屋の黒い板の先はどうなっているんだろうか? RA号はアイテムボックスの中に入っているわけで、黒い板を抜けたら俺のアイテムボックスの中だ。いいのか? というかさすがに抜け出られないよな。でも確かめてみないと事故が起こる可能性もある。
俺はそれを確かめるべく通路の繋がる連絡室に跳んだ。
黒い板は3面に並んでいるのだが大きさがそれぞれ微妙に違うのでどこがどこにつながっているのか今のところ判別できるが、床の上に彫り込むかプレートを下げておいたほうがいいよな。
さて、新しくロイヤルアルバトロス号につながる出入口は俺の目の前のこの黒い板なのだが、明らかに他の2枚と違って色は暗めの灰色だし艶もない。だからといってただの板になっている保証はないので確かめる必要がある。
俺も生身で触るのはちょっと怖かったので、アイテムボックスの中から以前工事で使った角材を取りだしてその板を押してみた。そしたら角材はコツンといって板に当たった。
これなら大丈夫。俺も指で押してみたが、これならただのプラスチックの板だ。
安心した俺は、造船所につながる通路の扉を開けて、造船所に歩いていった。
架台の上にロイヤルアルバトロス号を排出しようとしたのだが、架台の並んだ床は造船所の床面より50センチほど掘り下げられていた。底のところどころに排水溝の口のようなものも見える。
「アスカ2号。架台のある位置が下に沈んでいるが?」
「海水の付いた船底は水洗した方がいいと思い先ほどコアに依頼して下げました。底には排水口が設けられています」
素直にすごいな。
アスカ2号が見守る中、俺は慎重に架台の上にロイヤルアルバトロス号を排出した。
直ぐにゴーレムたちが高圧洗浄水のような感じでホースから水をかけて船底を洗い始めた。これも知らぬ間に用意してあったようだ。
「アスカ2号。子どもたち用の部屋と、図書館、フィットネスジムのための改装と、ゆらぎの周りを壁で囲んで扉を一つ付けておいてくれ」
「はい」
これでよし。
俺は歩いて連絡用の小部屋に戻ったら、先ほど暗めの灰色で艶のなかった板が、真っ黒で艶のある板に戻っていた。試しにその先に進んだらRA号の居間に出た。俺はそこから屋敷の居間に跳んで戻った。




