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第374話 年末温泉旅行4、風呂上がり


 脱衣場で頭を簡単に乾かして浴衣に着替えた俺と親父は上に半纏を羽織って男風呂から外に出た。


 すぐ先の小部屋のマッサージチェアに先に親父を座らせ、コントローラーを操作してお任せモードでマッサージを始めた。俺も隣のマッサージチェアに座ってお任せマッサージしながら、女子たちが女風呂から出てくるのを待っていた。


 そうやって寛いでいたら、バタバタ人がやってくる音がして、見れば女将だ。どうかしたのかと思っていたら、女将は俺たちのところにやってきた。


 女将がそのままで、と言ってはいたが、もみもみされながら人の話を聞くのはさすがに失礼なので、マッサージチェアの電源を切って起き上がり、女将の話を聞いた。親父もマッサージチェアの電源を切ろうとしていたがスイッチが分からないなしく慌てていたので、俺が切ってやった。


「岩永さま、おくつろぎのところ申し訳ありません。

 先ほど岩永さまが助けられたお二人からお話をうかがいました。

 サウナで事故が起こるところを今回も助けていただいたそうで、ありがとうございます。

 岩永さまが助けられたお二人は、当館を長年ごひいきにされていらっしゃる大切なお客さまで前回も岩永さまに助けていただいた方たちです。前回は岩永さまが名まえは出さないようにとおっしゃられたのでお二方には岩永さまのことは申しておりませんでしたが、今回はお二人が岩永さまのお名まえをご存じでしたので、前回お二人を助けたのも岩永さまでしたとお話ししています。

 お二人ともそうとう驚かれていました」


 俺がいる時に限ってサウナで二人そろって気絶するとは、ある意味高難易度なテクニックだ。俺も十分ビックリしたよ。


「二人とも無事のようだったから良かったです」


「それで、お二人が岩永さまのお部屋に5時ごろお礼に伺うと申しておりましたのでよろしくお願いします」


 そう言って女将は頭を下げて帰っていった。


 ここまで女将が気にする二人というのはやっぱり相当な大物なのだろう。


「善次郎。われ、さっきの二人を前に助けたことがあったのか?」


「前回この旅館に泊まった時、おっさん二人、さっきみたいにサウナで伸びていたのを助けたんだが、まさか今回の二人と同一人物だったとは思わなかった」


「儂も他人の顔を覚えーのは苦手じゃから、われも苦手のようじゃな」


「全然顔を覚えていなかった」


「そげなものだ」



 女将が帰っていってしばらくして、女子たちが女湯から出てきた。


「岩永さん、お爺さん、お待たせ」「善次郎さん、お爺さん、お待たせしました」「ゼンちゃん、爺待たせたのじゃ」


「「お父さん、お爺さん、お待たせしました」」「善次郎さん、お爺さんお待たせしました」


「じゃあ、牛乳だ!」


「「はーい!」」



 今回は親父も含めて全員で牛乳瓶を持った。蓋を取ったところで、俺と親父と子どもたち5人は、横一列に並んで胸を張って、ごっくんスタイルで牛乳を飲んだ。


 ゴクゴクゴクゴク。プッファー!


 華ちゃん以上の3人は俺たちからちょっと距離を取って普通に牛乳を飲んだ。


 牛乳を飲み終えて、部屋に帰ろうとしたら、アキナちゃんが目ざとくマッサージチェアを見つけていち早く座り込んでコントローラーを操作して寛いでしまった。


 エヴァたち4人はジャンケンして、3人が残った3台のマッサージチェアに座った。ジャンケンで負けたのは、キリアだった。キリアの反射神経とスピードがあれば、その気になればジャンケンで負けることはないはずなので、わざと負けてやったのだと思う。


 俺たちは、4人のマッサージが終わるのを男女風呂それぞれの入り口わきの長椅子に座って待っていたら、入浴客がそれなりにやってきた。美女、美少女の浴衣姿をチラ見しながら女性客も男性客も風呂の暖簾をくぐっていった。


「わ・ら・わ・は・め・が・み・な・の・じゃ」


 アキナちゃんが振動発声法に目覚めたようだ。


 それを聞いたエヴァたち3人も当然のように、始めてしまった。


「わ・た・し・は・い・わ・な・が・エ・ヴァ」


「わ・た・し・は・い・わ・な・が・オ・リ・ヴィ・ア」


「わ・た・し・は・い・わ・な・が・イ・オ・ナ」


 結局マッサージチェアに座っていないキリアまで、


「わ・た・し・は・い・わ・な・が・キ・リ・ア」


 マッサージチェアが止まったところで、みんな揃って部屋に帰って、思い思いの場所で寛いだ。


 俺は座椅子に座り、同じよう座卓を囲んで座椅子に座っていた華ちゃんたちに、風呂場での話をしておいた。


「そういうわけだから、5時ごろおじさんが訪ねてくると思う」


「よくよくサウナが好きなおじさんというか、我慢比べか何かしていたんでしょうか?」


「そうかもしれないな。ダブルノックアウトだから、二人とも相当意地っ張りなのかもな」


「きっとそうなんでしょう。お爺さんも二人を運んだんでしょ?」


「うん。善次郎と二人でサウナから出えてやった。

 体の調子が若えころと同じくらいええけん、大したことはなかったよ」


「俺はそれなりに大変だったけど、大したものだな」


「本当は、それなりに大変だった。ちょっこしだけええ格好をしてしまった。アハハハ」


「アハハ」「ハハハハ」


 俺たちが親父と一緒になって笑っていたら、アキナちゃんがやってきて親父の後ろに立ち、


「さっきの椅子は気持ちよかったのじゃ。わらわが爺の肩をもんでやるのじゃ」


 そう言って親父の肩をもみ始めた。


 女神さまに肩をもませた男という意味では人類初なのではないだろうか。


 親父が目を細めて気持ちよさそうにしている。ちぇっ、いいなー。とか思っていたら、エヴァが俺のところにやってきて、


「お父さんの肩はわたしがもみます」


 そう言って俺の肩をもみ始めた。きっもちいーー!


 さっきのマッサージチェアなどなど比べ物にならないほど気持ちがいい。


 そしたら、残っていたキリアたちが、それぞれはるかさん、リサ、華ちゃんの肩をもみ始めた。


 みんないい子たちだ。いやー、この子たちを俺の子にして本当に良かった。


 俺は子どものころよく親父に肩をもんでくれと言われてもんでやっていたのだが、肩もみに限らずマッサージは見た目以上に疲れるものなので、3分ほどで、


「エヴァ、もういいよ。ありがとう」


 そう言ってマッサージを終わらせた。


 他のみんなも適当なところで肩もみを止めさせてお礼を言っていた。



「じゃあ、ちょっとテレビでもつけてみるか?」


 そう言って、テレビを点けたら、山口某が違う番組にでていた。


「この人売れてるみたいですね」


「だな」


 しばらく、山口某のまとまらない話を聞いていたら、番組が終わって、コマーシャルが始まった。テレビ台の上に番組表があったので、見ればちゃんと時代劇の再放送をしていた。


「ほー いいじゃないか、こういうのでいいんだよ、こういうので」


 家族そろって安心して見ていられるからな。日曜の昼に流れていたので中学時代必ず見ていた。お決まりのお風呂シーンにワクワクしたものだ。


 あのころ俺は、ちりめん問屋はちりめんじゃこを売る店だと思っていたものな。




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― 新着の感想 ―
>あのころ俺は、ちりめん問屋はちりめんじゃこを売る店だと思っていたものな。 自分も同じくw ちなみに逆なんだよね 雑魚(じゃこ)を広げて干してる様子が絹織物のちりめんみたいに見えるからってのを大人にな…
[気になる点] おんなじー、佃煮屋さんにしては貫禄ありすぎやーとか、買い付けの為の漫遊?とか思ってたー
[一言] 同じくww 問屋じゃなく網元から直接買えばいいのにとねww
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